政府は認知戦に勝て 日本大学特任教授 勝股秀通

政府は現在、インテリジェンス(情報収集と分析)に関する司令塔として、内閣に首相を議長とする「国家情報会議」を創設する法案を提出、すでに法案は衆院を通過し、まもなく参議院で本格審議が始まる。可決成立後、早ければ今夏にも同会議を支える約700人規模の「国家情報局」が誕生するという。
国家や企業の情報を窃取するスパイ行為だけでなく、外国勢力によるSNSなどへの偽情報の発信が頻発しているだけに、情報をめぐる体制の強化は喫緊の課題だ。政府は法律の目的や立法効果について国民の理解を得るため、法案審議と並行して、中国政府が現在、国際社会に仕掛けている「沖縄の帰属問題」や「沖縄県民は先住民族」という悪質な認知戦を打ち破り、正当な日本の主張を発信する情報戦に挑む必要がある。
台湾有事をめぐる高市早苗首相の発言に対し、習近平国家主席の主導の下、中国は共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」が「琉球諸島の帰属は歴史的、法的な議論が常に存在している」との社説を掲載、国営英字紙の「チャイナ・デイリー」も、琉球王国が歴史的に中国の属国だったことを示す重要な証拠が、中国・遼寧省の博物館で公開されたとの記事を掲載している。さらに今年に入って、香港の親中政治団体がスイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で、「沖縄県民は先住民族」といった趣旨のスピーチを行うなど、中国が仕掛ける沖縄をめぐる認知戦は、看過できないレベルに達している。
この事態に地元の石垣市と豊見城市、糸満市の各市議会は、中国に厳重抗議する決議と意見書を可決しているが、煮え切らないのが政府の態度だ。木原稔官房長官は「中国の報道にコメントする必要はないと思います。なぜなら、沖縄がわが国領土であることは何ら疑いもないからであります」と、極めて丁寧にコメントしているが、これ以上中国と事を荒立てたくないとの思いがあるのだろう。だが、中国の執拗な認知戦を甘く見てはいけない。
沖縄をめぐる偽情報だけでなく、SNSでは高市首相批判が蔓延し、中国の国連大使や王毅外相は「日本は戦争への反省がない。新型軍国主義が復活」などと喧伝、国際社会に誤った対日印象を擦り込もうと画策している。日本国内の分断を目論み、悪意を持って日本を貶めようとしている中国に対し、政府は明確な抗議もせず、静観している場合ではない。
中国発とみられる悪質な情報発信を国内外に向けて公表し、抗議の姿勢を示すメッセージを発出し続ける。それこそがインテリジェンス強化の第一歩であるはずだ。


