旭川女子高生殺害の判決に不満 裁判官マップが生んだ「新たな中傷の場」
女子高校生を橋から転落させて殺害したなどの罪で、旭川地裁は6月22日、無職の内田梨瑚被告に対して求刑通り懲役27年の判決を言い渡した。
殺人のほか、監禁、不同意わいせつ致死の罪に問われた内田被告の公判中には、法廷に男が乱入。裁判の内容に不満を持った自称48歳の男が、建造物侵入の容疑で現行犯逮捕されている。
元祖「破産者マップ」管理人に独占インタビュー 収益ゼロでも殺害予告を受けても「作ってよかった」と言い切る理由
この意見は男だけが持ち合わせているものではない。SNSをはじめインターネット上のあらゆる場で観測できる。だが、それに輪をかけて裁判官への中傷行為が増えているサイトがある。今年の2月に開設された「裁判官マップ」という情報サイトだ。
現役弁護士の田中一哉氏が、生成AIを活用して「あっさりできてしまった」と、X(旧Twitter)につづったこのサイトは、裁判官の実名と関わった裁判における判例をまとめ、その裁判官に対して匿名で口コミを投稿できるというものだ。
かつてGoogleマップの口コミ削除に関する訴訟で、「口コミは閲覧者が直ちに信用するものでない」と判決で指摘され、敗訴した田中弁護士。時事通信の取材では、この裁判がきっかけでサイト作成に至ったと語っている。サイト誕生直後から、1日数万PVを獲得するという、個人サイトにしては人気の「大型ルーキーサイト」になったが、このサイトが再度注目されたのが、冒頭で触れた殺人事件である。
判決が出た直後、裁判官マップでは裁判官に対する「口コミ」が殺到。24時間ごとに計測されるアクセスランキングでは、2位の裁判官と比較して40倍以上のアクセス数を記録することもあった。
主な意見として、世間の感覚とずれている、遺族の感情を考慮すべきだ、求刑通りの判決を出すならAIで十分だといったものが目立つ。また、判決後に遺族が報道陣へ発表した「娘への罪が、こんなに軽いものなのか」とのコメントを引用して「遺族の声を聞け」とする意見も少なくなかった。
「国民感情を理由に減刑」の例も
世論・意見が裁判に反映されるケースは滅多に存在しない。「世間で死刑にすべきとの声が多いので死刑」という意見がまかり通ってしまったら、小学校の授業で一度は耳にする三権分立の根幹が崩れ去ってしまうからだ。
ただ、例外的に世間の声が判決に反映されるケースも存在する。近年の事件で代表的なのが、2019年に発生した池袋暴走事故だ。東京地裁は禁錮5年の実刑判決を言い渡したが、検察の求刑を下回る量刑を出した理由として、過度な社会的制裁を挙げている。SNSなどでの誹謗(ひぼう)中傷が、加害者の量刑を下げた代表的な例となった。
今回の殺人事件において、これらの世論を鑑みた判決を出したのかは明かされていない。ただ、裁判官マップに掲載されたAIによる解説では、今回の判決そのものが有期刑の中では重い部類だと記載。ネット上で渦巻く意見も含めた上で出した判決であれば、非常に重い量刑を言い渡したと判断できる。
判決を下した裁判官に対する中傷めいた批判の投稿は、本稿執筆時点でも続いている。批判の矛先は懲役27年の求刑を出した検察側、裁判官の判決を支持するコメント、北海道民らへも向けられており、収拾がつかない状態だ。
裁判官マップの概要紹介では「誹謗中傷は絶対に行わないでください」と記載。禁止事項にも人格を否定するような表現などを例として挙げた上で、場合によっては法的措置の対象になると警告を発している。
文/池田聖人 内外タイムス編集部






