元祖「破産者マップ」管理人に独占インタビュー 収益ゼロでも殺害予告を受けても「作ってよかった」と言い切る理由
「破産者マップ」をご存じだろうか。官報に公告されている破産者や再生債務者情報を地図上に表示したサービスで、2019年3月に公開されると同時にアクセスが殺到。賛否両論がうずまき、わずか1~2週間で閉鎖された。
その破産者マップが最近になって復活し、話題を呼んでいる。現在の運営者は別人だが、「元祖」の管理人だったA氏に内外タイムスが独占インタビュー。立ち上げた目的や破産者からの殺害予告、数百件に及んだ裁判などについて、赤裸々に語った。
国民が裁判官をジャッジ 口コミ付き5段階評価の「裁判官マップ」がSNSで話題に
破産者を地図上に表示し、アクセス殺到
――破産者マップとは、そもそもどのようなサービスなのでしょうか?
A 官報に公告されている破産者及び再生債務者を地図上に表したサービスです。当時1時間に数百万アクセスありまして、とてもインターネット上を騒がせました。
――情報を見やすく可視化する、そんなイメージですか?
A そうですね。1947年5月3日以降、破産者、再生債務者が官報に掲載されてきたんですね。その後、電子化されてコンピューター上で検索できるサービスがあって、当時はコンピューター上で検索できるようになっていました。
――検索できるサービスがあるのに、なぜ可視化するサービスを思いついたんですか?
A 文字列だけでは非常にわかりにくいので、地図上にそれを配置しました。自分の近所や勤務先でどういう人が破産、もしくは再生しているかというのがひと目で分かります。知らせるという官報の目的にかなうのではないかということで、地図上に文字情報を載せて見やすくしたということです。
――なるほど。サービスの目的は収益ですか?
A 収益は破産者マップの場合はゼロですね、全く収益になっていません。
――そうすると、どこに目的があるんでしょうか?
A 学術目的ですね。情報はあるだけでは非常に分かりにくいものですから、それを可視化すれば人の理解が深まるんだろうかとか。80年間文字データとしてあったわけですけども、それまで全く話題になるわけではないのに、地図上に置き換えた瞬間に人々の興味関心を引くわけですね。ただ表現の方法を変えただけで、サーバーがパンクするんじゃないかというくらい、とてつもないアクセスが集まりました。
――興味を引いたことによってどのような反響がありましたか?
A 2つの反応がありました。1つは感謝の言葉ですね。アパートを貸しているけど滞納者がいて、破産手続きをしていることは知らなかったので早めに手続きを行うことができたとか、家を借りたいと言われたけど破産を申請していることが分かったから断ろうと思うとかですね。
一方で、今まで隠してたのに近所の人にバレた、会社の人にバレたみたいな話もありました。
――過激な反応もあったんですか?
A 殺害予告もありました。当方を撮ったり、実際その場所を訪れて動画を上げたり、誹謗(ひぼう)中傷から殺害予告まで、ありとあらゆるものがありました。
――身の危険を感じることもあったと?
A そうですね。警察にも相談しましたけれども、自分で何とかしてくださいというのが答えでしたね。
――何カ月くらい続いたんですか?
A 結局その後5年くらいはありましたね。
数百件の裁判で被告になったのは1件のみ
――サービスは終了したのに嫌がらせは続き、裁判にもなったとお伺いしましたが?
A わずか1週間、2週間のサービスの後、誹謗中傷や殺害予告があって。当時、私は日本国内にいませんでしたので、裁判を起こすのにも日本国内に一回戻ってから対応をしなきゃいけませんので大変でした。
――裁判はどれくらい行われたんでしょうか?
A 数百件ですね。もう数が多すぎて、よくわからないくらい起こしました。
――誹謗中傷に対してAさんが起こす裁判と、可視化して見やすくしたことに対してAさんに起こしてくる裁判と、両パターンあると思いますが?
A 僕が被告になったのは1件だけです。
――被告になった方が多いと思われがちですが、実際は原告になったのが数百件ということですか?
A はい、1件以外は僕が原告です。
――それはびっくりする方がたくさんいるような気もします。それだけの数の裁判を起こすと時間もコストも大変かと思います。
A 脅迫は警察が調べたりするんですけども、誹謗中傷は警察がしてくれることは少ないですから、自分で対応しなきゃいけない。その時に弁護士事務所に行くと、発信者開示、IPアドレスの開示だけでまず50万とか、少なくとも1件あたり150万円はかかってしまうんですよね。数百件となると億単位のお金がかかってしまうので自分でやることにしたわけです。
――裁判を自分でやるとなるとすごく大変かと思うんですが、実際できるものですか?
A 結論から言うとできます。ただ1件目、2件目は大変です。慣れていませんので、法律の世界の独特の用語が出てくるんですね。郵便切手のことを「郵券」て言うんですけど、郵券とは何ぞやというところから始まるわけですね。そういう初歩的なところから勉強していって、訴状の書き方もそうですし、誰を被告とするか、債務者を誰にするかなどです。
――どれくらいの割合で勝ったり負けたりしたんですか?
A 発信者情報開示については、最初の頃は半分くらいしか認められなかったですね。だけど徐々にどういうものを認められるのかというのが分かってきて、今ではほぼ100%開示を得られます。その後、損害賠償になりますけれども、損害賠償は人によって変わります。裁判の前に和解するケースもありますし、裁判になって途中で和解したいという話もありますし、判決までいくこともあります。金額は低いと数万円というのがあって、多いもので100万円を超えたりしますけれども、平均的には数十万円くらいが多いですかね。

――被告になった方の裁判はどうなったのですか?
A 足掛け3年くらいかかって、最後は認諾という形で、相手の請求金額の支払いを認めて終局しました。
――どのような内容で認諾になったのですか?
A 原告が3名いて、私に対して賠償請求してきました。金額は1人11万円、3名で33万円です。3年間で裁判官も3人くらい交代しまして、私も最初は弁護士がいたんですけれども、自分でやることにしまして、後半は自分一人でやってました。最後の認諾する日の弁論準備手続きで、裁判官と話すと「もう3年も経っているし、そろそろ判決を出したい」ということで、僕は迷わず認諾を選びました。
なぜ認諾を選んだかというと、7、8名くらいの弁護団が、プライバシー権侵害、名誉毀損について判例を作るのが彼らの目的だと察知したからなんです。裁判官からも、これは判例百選に載る話になるだろうと、プライバシーや名誉毀損と官報が絡んだ初めての判決になるから、上級庁を含めて非常に関心を持っているんだと言われました。それを聞いた時に、判例を作らせると公共データを扱う際の支障になりかねないので阻止しなければいけないと思い、判決が出るギリギリまで戦って最後に認諾して判決を作らせずに終わり、目的を達成しました。
――利益目的ではないということですが、振り返ってみて破産者マップを作ってよかったですか?
A よかったですね。というのは、データを見やすくすることで、人の意識とか行動が変わるんですね。いわゆる社会実験です。例えば役所とか国が持っている様々なデータがありますけれども、見方を変えるだけで出てくる価値が大きく変わるという検証ができましたので、非常に有意義だったと思っています。もう一つは非常に裁判制度を身近に感じられました。
国が見やすく提供していれば破産者マップは必要ない
――最近また新たに2世代目、3世代目のような破産者マップができています。Aさんは関係ないということですが、何か一言あればお願いします。
A 官報に掲載することをやめない限りは、ずっと続く問題なんですね。基本的には国が見やすく提供していれば破産者マップは必要ないんです。今から2年くらい前に法律の改正があって、それまでテキストベースで官報を調べられていたものが調べられなくなりました。結果的に画像で破産者を検索することになるんですね。これは非常に現実的ではないので、破産者マップが新しい価値を持つようになってしまっているのかなと思っています。ぜひ国に官報を調べやすく、見やすくしてほしいなと思います。
――破産者マップに影響されたのか、最近では裁判官マップというものが話題になっていますが、こちらについてもご意見があればお願いします。
A 私も拝見しました。裁判官は基本的には全国の決められた裁判所にいるものですから、マップにする意味があるのか疑問はありますけども、裁判官の氏名や経歴、コメントが載っていて有益なサイトだと思います。裁判官は三権分立の一つの権力機関ですから、どういう判決を出しているかというのは非常に重要ですし、公共利害に関係することですからね。それと僕は中傷されている裁判官もいっぱい見てますから、ぜひ裁判官が自ら情報開示請求を行って、損害賠償訴訟をやっていただきたいです。そうすれば、中傷される方の気持ちも分かって、裁判が公平になるのかなと思っています。

――話は変わりますが、世界をずっと旅されているということで、どのような仕事をされているのでしょうか?
A パソコンとインターネットがつながっていれば、基本どこでも仕事ができるので、世界を旅して移動しながら仕事をしていることが多いですね。データ分析がメーンで、報告書を納品したり、いろんなデータに関わる仕事をしています。
――得意なデータ分析を投資にも生かしているとお伺いましたが、そこはいかがですか?
A データ分析は、株式やいろんなコモディティーも対象となりますので、企業分析したり、株価分析したり、そういったところが旅の資金源にもなっていますね。
――最近は生成AI等で簡単に分析ができてしまいますが、どう見ていますか?
A ここ最近AIの発達で人の分析する能力をはるかに超える、しかも高速にできるという状況があって、非常に新しい時代になっていますね。僕は長期で投資するという考えで企業価値を測定して、短期よりは長期で勝負する方が人の良さが生きるのかなと思っています。
――生成AIで自動売買して勝っていけるものなんですかね?
A 勝っていける人もいると思います。ただ、皆さんが同じような生成AIを使ったら急に市場が沸騰して、しばらくすると一定のパフォーマンスが出なくなるわけです。あるタイミングで多分下がり始めると。そしたら一斉に下がって乱高下が激しくなるんじゃないかと僕は予想しています。人と同じことをしていると多分損すると思っていて、AIを使って人と違う発想とか、人と違うようなモデルを作れれば収益を得られるのではないかと思います。
――最後に今後の展望などをお願いします。
A いろんなサービスを作ってうまくいけば続けるし、うまくいかなかったらやめるじゃないですけども、常にトライアンドエラーしたいなと思っています。ですから、これからも新しいサービスを作り続けます。
――貴重なお話をありがとうございました。






