• 全国
  • 女性初のG1制覇、今村聖奈騎手と父・康成氏Wインタビュー(第1回)“勝っちゃう”と思ったオークスのゴール前
  • HOME
  • 全国
  • 女性初のG1制覇、今村聖奈騎手と父・康成氏Wインタビュー(第1回)“勝っちゃう”と思ったオークスのゴール前

女性初のG1制覇、今村聖奈騎手と父・康成氏Wインタビュー(第1回)“勝っちゃう”と思ったオークスのゴール前

2026年、競馬界にニューヒロインが誕生した。今村聖奈騎手(22)がその人だ。

5月24日、東京競馬場で行われたG1オークスでジュウリョクピエロに騎乗し、見事な末脚で優勝。女性騎手としてクラシック初騎乗で初制覇を果たした。男性騎手を合わせても、クラシック初騎乗初勝利は1988年オークスをコスモドリームで制した熊沢重文氏以来38年ぶり2人目の快挙。キュートなルックスとハキハキとした受け答えで人気も急上昇中だ。

そんな今村騎手と父親の今村康成調教助手(47)を内外タイムスが父娘ダブルインタビュー。レース当日の様子や騎手を志したきっかけ、同期のきずな、今後の目標などを聞いた。

勝った瞬間は至って冷静

5月24日、曇り空の東京競馬場。8枠16番のジュウリョクピエロは単勝10.9倍の5番人気に支持されていた。4月12日の忘れな草賞で2連勝を飾り、初のG1にたどり着いた聖奈は当時をこう振り返る。

聖奈「継続騎乗がすごく難しい中で、継続騎乗させていただくことが決まってすごく嬉しいと思いましたし、2着とかじゃなくて勝つことだけでしか恩返しはできないなと思っていました」

好スタートを切ったジュウリョクピエロは道中は後方待機。3歳牝馬にとって府中の2400メートルは長い。4コーナーを迎えても後方でじっくり脚をためていた。

聖奈「彼女の最大の武器は脚の速さと速い脚を持続できることだと思っていたので、初めての左回りの東京コースで、どうしたら生かせるかといろいろ考えた結果、ああいった形になりました」

直線に入ると、馬群を割ってど真ん中からぐんぐん伸びた。驚異的な末脚を発揮して先を行くライバルを抜き去り、クビ差の1着でゴールイン。その瞬間、聖奈は右手を突き上げた。

聖奈「前の馬を捉える立場でしたので、勝てるかどうかというより、2着3着だったら悔しいなと思った時には、ぐんぐん馬が進んでいってくれたので“勝っちゃう”と思ったのを鮮明に覚えています。勝った瞬間は至って冷静と言いますか、勝っちゃったっていう感じでした」

その時、父・康成氏は東京競馬場のスタンドにいた。初めてG1の舞台に立つ娘の晴れ姿に胸が高鳴らないはずがない。

父「スタートしてから後方にいたのでそこまで思ってもいなかったんですけど、3コーナー4コーナーとすごく手応えが良さそうだったので、もしかしたらと思いながら見ていました」

直線で末脚をさく裂させたジュウリョクピエロの上で愛娘が右手を突き上げた瞬間、父親は両手を挙げて娘以上に喜んだ。

父「G1は勝とうと思って勝てるレースではないので、早いと言ったら早いのかもしれないですけど、この子が持っている運というものがあると思うので、そういったものをうまく引き寄せたのかなと思います」

変わらない自分と周囲の見る目の変化に戸惑いも

デビュー5年目の22歳。突如出現したシンデレラを周囲が放っておくはずもなかった。マスコミの取材攻勢に加え、友人、知人から祝福の連絡は500件に上ったという。

聖奈「馬が頑張ってくれたおかげでいろんな人に祝福してもらって、それくらい注目されているんだなと思いました。皆さん気持ちを表現してくれて、すごく嬉しかったです」

本人の意思とは関係なく、注目度は段違いに上がった。競馬は毎週開催されるため、次の騎乗馬やレースに向けて気持ちを切り替えなければならないが、内外タイムスを含め、オークスに関する取材は今も後を絶たない。

聖奈「ありがたいことなんですけど、ゆっくりする時間があまりなくて一瞬のように過ぎ去ります。毎週ほかのレースがある中で、何度もこのレースを振り返るということが今までなかったんで、実感といいますか、すごいことを馬がプレゼントしてくれたんだなと思います」

まだ22歳の女性にとって、周囲の見る目の突然の変化は戸惑いの種でもある。

聖奈「自分自身は変わってないですし、早く次の1勝をしたいなと思うんですけど、周りは見方が変わったといいますか、ギャップといいますか、自分が思っている自分と、周りが見てくれている自分との差が激しいなというのは正直、感じています」

ともすれば、突然の大フィーバーによって将来のある若者が萎縮してしまいかねないが、度胸満点のヒロインにそんな心配は無用だった。

聖奈「元々そこまでプレッシャーを感じるタイプではないですし、レースに行ったら走るのは馬なんで、そこに行くまでにどうアプローチしてあげるかがジョッキーとしての仕事だと思うので、そこまでプレッシャーは感じたことはないです」

取材していて気が付いた。ハキハキと物怖じする様子もなく話す聖奈騎手の横で、父・康成氏は言葉数が少なく、優しい笑みを湛えながら愛娘を見守っていた。物静かな父親の下で、ニューヒロインは一体どんな半生を歩んできたのだろうか。聖奈のスター性は、幼少期から育ってきた環境に大きく関係していた。

(第2回につづく)

《プロフィール》
今村聖奈(いまむら・せいな)2003年11月28日生まれ。2022年に寺島良厩舎からデビューし、17戦目で初勝利。7月のCBC賞をテイエムスパーダで重賞初騎乗初制覇するなど、ルーキーイヤーに51勝を挙げ、最多勝利新人騎手賞を受賞。2025年に女性騎手として史上3人目のJRA通算100勝を最速で達成した。

今村康成(いまむら・やすなり)1978年10月19日生まれ。1997年に騎手デビューし、翌1998年に136戦目で初勝利。2001年の中山大障害でユウフヨウホウに騎乗し、唯一の重賞となるJ・G1初勝利を挙げる。平地5勝、障害40勝の成績を残して2012年に引退し、現在は飯田祐史厩舎で調教助手を務めている。

関連記事一覧