国家公務員「転勤行きたくない」50%超え キャリア官僚も「転勤が嫌なのでこっそり司法試験勉強」
人事院が、国家公務員を対象に初めて転勤に関する意識調査を実施し、結果を公表した。
昨年12月から今年1月にかけて一般職の常勤国家公務員を対象に行い、約11万人から得た回答では、転勤について「どこにでもぜひ行きたい」「条件が合えば行きたい」は計47.3%。一方で「絶対に行きたくない」「できれば行きたくない」は計52.6%で、半数以上が転勤に消極的であることが分かった。
近年、民間企業では転勤する社員への手当を増額したり、総合職でありながら転勤が限定的な「エリア総合職」採用を拡充したりと、転勤を避けたい社員の増加に対応。共働きをしている社員も仕事を続けやすくしつつ、転勤を受け入れる社員とそうでない社員との間の不公平感の解消にも努めている。
しかし中央省庁ではそうした取り組みは遅れ気味で、人事院の川本裕子総裁は記者会見で「(転勤が)経済的にマイナスにならない支援、その先には新たな金銭的なインセンティブ(報酬)の創設が考えられる」と、転勤をめぐるルールについて見直していく考えを示した。
通常国会閉会後の夏の異動が多く「子どもに年度途中の転校を強いる」
転勤を避けたいという人材が増えているのは、各省庁の幹部候補となるキャリア官僚も同様だ。近年、キャリア官僚の離職が課題となっているが、「激務のわりに給与が高くない」といった事情に加え、転勤の多さも相次ぐ離職の要因になっている。
入省後、転勤を2回経験した後に退職した30代の元官僚男性は「1度目の転勤先で出会った妻は、自分が東京に戻った後、東京の会社に転職した。それでもまた3年後に自分が転勤となった。子どもも生まれたのに、これ以上数年おきに転勤を繰り返すのは無理だと思い、外資系コンサル会社に転職した」と振り返る。
ほかにも、キャリア官僚の女性と結婚した現役の30代男性官僚は「お互いに転勤が多く、夫婦で近い県に異動させてほしいと思っても、限界がある。自分がどこでも働ける弁護士資格を取りたいと思って、業務の合間を縫ってこっそり司法試験の勉強をしている」と明かす。
通常国会閉会後の夏の異動が多いという、官僚ならではの転勤事情も負担に拍車をかける。60代の元官僚は「子どもに年度途中の転校を強いることになり、新しい学校になじめず泣いた子どもをなだめたこともあった。配偶者の仕事との調整も、年度替わりの転勤に比べしづらい」と打ち明ける。
「希望をかなえていたら人事が回らなくなる」
こうした事情から、転勤の負担を理由とした離職者や離職予備軍は増えているうえ、省庁に残っている官僚からも転勤をめぐる注文が多くなっているという。
とくに転勤が多い省の幹部は「『転勤してもいいが、家族が東京にいるので首都圏を希望』という人も増えた。昔は専業主婦の妻をもつ男性官僚ばかりだったので、そうした希望はめったになかったが、今はそれぞれの希望をかなえていたら人事が回らなくなる。かといって辞めずに続けてもらうためには、ある程度配慮しないといけない……」と頭を抱える。
近年、官僚離れが進む東大生の間では「国費で留学できることだけがメリット」とも言われるキャリア官僚の仕事。国費留学の後に転職すると、留学費用を返還しなければいけないルールもあるが、「転職先の外資系コンサル会社が払ってくれるので大丈夫」という認識も広がり、離職へのハードルは下がっている。
激務が続く労働環境や給与面だけでなく、転勤のあり方も見直さないと、優秀な人材がますます霞が関から離れていく危機は止まらなさそうだ。
文/中村まほ 内外タイムス


