“トランスジェンダー暴露”で提訴された女性市議に賠償命令 「アウティング」が女性の権利を守ることなのか
芥川賞作家の李琴峰氏は、SNSでトランスジェンダーであることを暴露されたのはプライバシー侵害に当たるとして、村松裕美甲府市議に550万円の損害賠償を求めていた。この訴訟で、東京地裁は10月29日、村松市議に110万円の賠償を命じた。
訴状によると、李氏は法律上の性別を女性に変更後、2013年に来日。女性として生活し、性別変更したことは周囲には知られないよう注意してきた。
しかし、2024年に村松市議がFacebookで李氏について「身体が男性」などと投稿していることに気づいた。抗議すると削除されたが、村松市議は別の人物のSNSに載った李氏の性別変更前の写真を投稿した。
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提訴時の報道では、李氏と村松市議に面識はなかったとされ、個人的なトラブルがあったわけではないようだ。それにもかかわらず、村松市議が「アウティング」を行ったのはなぜか。村松市議本人も会見を行っておらず、今回の報道を見ただけでは不明だ。
アウティングとは、性のあり方を本人の同意なく第三者に暴露する行為をいう。2020年に東京高裁は、アウティング被害について「人格権ないしプライバシー権を著しく侵害する、許されない行為」だと判断している。今回、アウティング行為が問題であるだけでなく、賠償命令まで認められたことは重要な判断になる。
10月31日の「選挙ドットコム」ブログで、村松市議は裁判の意義についてこう書いている。
「今回の裁判は、レズビアンを公表し性的な作品を多々書いていて、性的マイノリティ側として活動していた著名人の、性別を知る権利と、性別を明かさない権利の衝突でした」
そのうえで、自らの行動を政治的使命感によるものだとして、次のように主張している。
「私は差別や誹謗(ひぼう)中傷はしていません。ただただ、女性を守りたい。女性の権利は、迫害され続けています。女性の権利のために戦うのは政治家として当然だと思っています」
「公職の立場で、市民のプライバシー暴露は許されない」
トランスジェンダー女性(性自認が女性)をめぐっては、女子トイレや更衣室など女性スペースを利用することに対する懸念や批判が社会に多くあるのは事実。
村松市議は有名人のトランスジェンダーを暴露することで、「性自認」に関する議論を喚起しようとしたのかもしれない。だとしても、目的が正しければ何をやっても許されるわけではない。
性的マイノリティーに関する情報を発信する一般社団法人fairの松岡宗嗣代表理事はYahoo!ニュースにこうコメントする。
「アウティングをはじめ、プライバシー侵害は一度広められてしまうと、もう元には戻せません。それほど深刻な被害であることが知られてほしいと思います。ましてや公職の立場にある人が、市民のプライバシーを暴露するということは到底許されるものではありません」
SNSで自分の主張を発信することと、議員として公的な議論の場で問題提起し、説明責任を果たすことは別である。言論の自由を掲げるのであれば、自分の発信が他者の権利や社会に及ぼす影響についても、責任を持つ必要がある。
文/横山渉 内外タイムス






