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「いただき女子マニュアル」をもとに“裏引き”で月1000万円貢ぐ…ホスト狂い26歳女の末路【裁判傍聴記】

2026年秋、東京地裁に出廷した26歳のA被告は、紺色のスーツ姿で、黒髪をおだんごにまとめていた。センターに折り目のきれいに入ったマスク。大人しそうな、華奢(きゃしゃ)な体つき。保釈中。

質問に答える声は、柔らかく、たどたどしかった。

「裏引きやP活をメーンにするほうが、体に負担が少ないし、効率もいいよ」

通っていたホストクラブの担当ホストに、そう勧められた、とA被告は語った。2022年6月には、そのホストから「りりちゃん」の「いただき女子マニュアル」も渡されたという。

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A被告は、複数の相手にうそをついて金をだまし取ったほか、他人のカードを使って現金を引き出したり、自分の口座に送金したりしたとして、詐欺・窃盗・電子計算機使用詐欺の罪で起訴されている。

公判の冒頭では、国が公開している悪質ホスト対策のウェブページと、ホストクラブにのめり込む「ホス狂い」を扱ったクリニックのウェブページが証拠に加えられた。被害者のうち2人と示談が成立し、もう2人とはまだ交渉中。求刑は、次回公判で行われる見込み。

付き合っていると錯覚「結婚しようね」

被告人質問で、A被告は、弁護人から自身の子ども時代について問われた。

「家では父と母が大声でけんかをしていました」

父からは「やせろ」「みにくい」と言われていた。A被告には、自分のことを家族に話す習慣がなかったという。

9歳で両親が離婚。教育熱心な母親の期待を裏切りたくなくて、自分の気持ちを打ちあけることは、中学、高校、大学に入ってもなかった。話せるようになったのは、逮捕されてからだという。

大学2年のころ、摂食障害になった。コロナで人と会わなくなったこともあり、ひきこもりに近い状態になる。過食嘔吐(おうと)に陥った。食費は多いときで月50万円。お金がなくなり、20歳ごろから風俗店で働き始めた。

2020年、マッチングアプリで知り合ったホストが働く店に行った。A被告にとって、初めてのホストクラブだった。

40万円を持って行ったが、支払いは70万円になった。

ホストクラブで金をいくら使うかは、担当ホストが決めていたという。

マッチングアプリで連絡を取り合ううちに、A被告はそのホストと付き合っていると思うようになった。交際を始めた記念日もある。2021年には「結婚しようね」というLINEのやりとりもあった。

A被告が体調を崩し、風俗店で働けなくなり、ホストクラブにも行かなくなった時期があった。そのころ、ホストからこう聞かれたという。

「働けるようになったら、月いくらぐらい使えるようになるかな?」

ホストはこう続けた。

「600万ぐらいはさすがにきついよね。体にも負担がかかるし」

そこでホストは、裏引きとP活を勧めてきたという。

A被告は「裏引き」も「P活」も知らず、SNSで調べた。裏引きは、風俗店を通さず、客と直接会って金をもらうこと。P活(パパ活)は、相手と食事や性行為などをして金をもらうことだと知った。

LINEの返事もホストと一緒に考案

「裏引きは無理」

A被告がためらうと、ホストの態度は変わったという。バカにされ、「他の女のところに行く」と突き放された。「俺を本気で勝たせたいと思ってる?」と言われた。店の最後にホストが歌う「ラストソング」のことでも、こう言われた、と。

「3か月連続でラストソングを歌いたかった気持ちを、わかってくれなかったんだな」

A被告が売掛金を返すためにホストクラブへ持って行った金を、その日のホストの売上に回すよう求められることもあったという。ホストの客の中には、裏引きをして、ホストクラブで月に700万円使う客もいる、とも聞かされた。

A被告は、ホストが自分を金としか見ていないと思っていた。

それでも、好きな人を喜ばせたい、推しを輝かせたい、という気持ちがあった。ホストが離れていくのが嫌だった。「自分がこわれそうだ」と思いながら、裏引きをしなければ、と考えていた。

A被告がホストから「いただき女子マニュアル」を渡されたのは、その頃だった。金をもらう相手には、家族が死んだ、学費がないなどと言うよう助言され、「その人の唯一無二になるんだ」とも言われた。相手へのLINEの返事も、ホストと一緒に考えた。A被告はそう述べた。

裏引きを始めてから、A被告がホストクラブで使う金額は毎月100万〜200万円になった。1000万円ほど使った月もあった。

弁護人の質問のあと、検察官がA被告に質問した。

――(金銭感覚が)おかしかったと思う?

「はい」

逮捕後にホストから来た冷酷な連絡

弁護人の質問は、A被告がついたうそに移った。

A被告は有名女子大学に通っていた。ところが、ある相手には、別の有名大学に通っているとうそをつき、130万円を受け取ったとされる。学費の滞納は本当だった時期もある。でも、受け取った金はホストに使った。相手は代理人の弁護士を通して、返すよう求めてきた。それでもA被告は、そのあとも同じ相手から金を受け取った。

相手の優しさや善意を裏切り、何度も何度も傷つけた。そのことを反省している、とA被告は語った。

別の相手には、母親が死んだとうそをつき、122万円を受け取ったとされる。

A被告によると、逮捕後にホストから連絡があった。取り調べで話したことを教えるよう求められ、協力しなければ示談金も出さない、実刑の可能性が高い、とも言われたという。ホストの弁護士からも接触があったと話した。

ホストが自分を守ろうとしているのを見て、A被告は嫌になったという。縁を切りたいと思い、連絡は取らなかった。いまは恋愛感情もない。ホストの男は、物事が自分の思い通りにならないと攻撃的になり、A被告を不安にさせる人だと感じている、と話した。

裁判が終わったら、ホストに民事裁判を起こす話になっているという。

なぜ、こうなったのか。

当時の自分は精神的に自立していなかった、とA被告は振り返った。ホストに執着して、善悪の区別がつかなくなり、越えてはいけない一線を越えてしまった、とも語った。

A被告が東京で自分のことばかり考えている間に、祖父が亡くなっていた。A被告は、裁判が終わったあとは、しっかり働き、看護師を目指すつもりだという。

これからは、経済的にも精神的にも自立したい。

裁判官は、現在病院に通っているかを尋ねた。A被告は、通っていない、家族と一緒にいるので不安はない、と答えた。A被告への質問は、1時間近くに及んだ。

母は「飲食店のバイト」だと思っていた

この日、A被告より先に証言台に立ったのは母親だった。娘と似た髪形で、マスクをしていた。弁護人が質問する。

――娘さんを育てている中で、心配になるようなことはありませんでしたか?

娘は内気で、自分の意見をはっきり言わないタイプだった、と母親は答えた。

娘の仕事は、飲食店のアルバイトだと思っていた。結婚の約束をした相手がいることも知っていた。ただ、相手はアパレルの仕事をしていると思っていた。

――(相手がホストだと)知っていた?

「知らなかった」

一人暮らしの娘とは、LINEや電話で連絡をとっていた。不安になったことはない。学費は、娘のアルバイト代と仕送り、奨学金でまかなえていると思っていた。

女手ひとつで子どもを育てるなか、娘が相談できる時間をつくれなかったという。母親はそうA被告の子ども時代を振り返った。逮捕後、保釈中のいまは、毎日顔を合わせ、話したいことを話せるようになったという。

示談金は、母親が用意したものもあれば、ホストが用意したものもあるという。娘には起訴された分のほかにも借金があり、それも返していくという。

A被告を東京で一人暮らしさせている間、家賃は娘が払っていたと答えた。奨学金と、飲食店のアルバイトと、自分からの仕送り数万円で、生活していると思っていた。A被告には弟もいて、母親の生活には節約が必要だった。

母親によると、娘の逮捕後にホストから電話があり、東京で一度会ったという。その内容は、法廷では明らかにはされなかった。

母親は、娘への思いで、弁護人からの質問に、時折、言葉を詰まらせた。

被害者には申し訳ない。娘は、やってはいけないことをやってしまった。母親はそう述べた。

文/栗林康弘 内外タイムス

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