#15 西原正「日米東南アジアの対中けん制」

日米東南アジアの対中けん制 西原 正 平和・安全保障研究所副会長
 石破首相が訪問したマレーシアとインドネシアは、インド太平洋地域の代表的な開発途上国であり、共通の関心事として、中国の拡張主義に抵抗している。去る1月10日に石破首相が訪問した最初の国マレーシアは今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であり、日本としても重視する必要があった。しかしマレーシアがグローバル・サウス(新興・途上国)としてのつながりをもつ中で進める対中接近に、日本としては歯止めをかけたい考えも強い。 

 翌日の1月11日に行われた石破首相とインドネシアのブラボウオ・スビアント大統領との会談では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持することの重要性を相互に確認した。そして石破首相は、海洋安全保障における連帯を目指して日本の高速警備艇を無償供与することを表明したのである。

 日本フィリピン関係の強化も重要である。日比関係の強化は海上での日米比関係の強化につながる。他方で、横須賀港を拠点とする米国の第七艦隊は人工知能(AI)を組み込んだ新たな戦力を導入する計画を進めているようだ。さらに重要なのは、第七艦隊のフレッド・ケイチャー司令官が高性能のAI無人機や無人艇などを数千規模で展開する構想を今年8月までに実施する計画を述べたことであった。こうして同司令官は装備の近代化を図る重要性も強調した。

 他方、米国のバーンズ駐中国大使は米中関係に関して「体制上のライバル関係は10年間続くだろう」と述べ、軍事、先端技術、貿易、投資などで続く厳しい競争関係を指摘した。習近平国家主席が「東昇西降」に見る如く東洋の興隆と西洋の衰退を主張していることに関しては、バーンズ大使は「大使になる前も今も信じていない」と述べて、あっさりと否定した。バーンズ大使はまた中国の無責任な行動を阻止するために、米国が行動すべきだと主張した。

 また中国が南シナ海の島々に対して領有権を主張し、軍事的圧力を強化するのに対して、日米豪比は「われわれの最大の強味は同盟関係とパートナーシップだ」と強調した。西側にとってのアジアの重大関心は何といっても台湾の防衛にある。石破首相は訪問中のインドネシアで海洋安全保障での連携強化を進めるため高速警備艇を供与した。日本は同様の高速警備艇をフィリピンにも供与すべきであって、中国の高速艇に対する対抗として役立てることができる。

 さらに24年10月、11月に米カリフォルニア沖で米海軍のステルス戦闘機F35Bの離発着訓練を海自の護衛艦「かが」の甲板上で行ったことも日米同盟の幅を広げることになった。F35Bには当面の問題があるにしても、今後こうした日米同盟の次元を高める努力はインド太平洋地域の安全保障に間違いなく貢献するであろう。(終)

にしはら・まさし 1937年生まれ。大阪府出身。1962年京都大学法学部卒業。1964年米国ミシガン大学大学院政治学科に留学、1972年12月政治学PhD取得。2000年防衛大学校長、2006年退職。2006年4月一般財団法人平和・安全保障研究所理事長、2021年6月同研究所副会長。2008年瑞宝重光章。2013年産経新聞正論大賞。

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