#5 川上高司「戦後政治の総決算と『尖閣諸島』」

戦後政治の総決算と「尖閣諸島」 川上高司 中央大学講師
「戦後政治の総決算」は中曽根総理の標語であった。
中曽根は1985年の施政方針演説で、「『戦後政治の総決算』を標榜し、世界の平和と繁栄に積極的に貢献する国際国家日本の実現」を目指した。その言葉通り、中曽根は対米的にはロン・ヤス関係を結び、日米同盟を強化し、対ソ抑止力を強化した。これが、第一回目の「戦後政治の総決算」であるならば、安倍総理のときに、集団的自衛権の行使を(限定的にではあるが)クリアーし、アメリカと「Shoulder to Shoulder(肩を並べて)」で戦う同盟関係にもっていき第二回目の戦後政治の総決を行った。そして、岸田政権では防衛費のGDPの2%超えを達成し、敵基地攻撃を可能にし、このことは米国との対等の関係に一歩近づき第三回目の戦後政治の総決算が行われた。
ここで初めて、日本は「普通の国」へとかなり近づいたが、憲法改正なしでは自衛隊は米国や同盟国にフルカウント[研平1.1](戦闘作戦OPLANへの参加)はされない。自民党の総裁選が9月27日に行われる。次の総理の使命は憲法改正であり、それを成し遂げてこそ戦後政治の総決算は結実する。
ここで、戦後政治の総決算を目指した歴代総理の目的は何かが問われる。リベラル的に言えば、「対米従属主義からの脱却」であるし、保守的に論議をすれば「自分の国は自分で守る」防衛体制の確立である。つまり、日本は日本独自の国益をきちんと定義し(持ち)、独自の戦略的外交・防衛政策を展開することになる。ということは、米国の国益と日本の国益は是々非々の部分があるわけであり、お互いの国益が重なりあうところでは協力しあい、重なりあわないところでは日本は独自の外交・防衛政策を展開することになる。
この論議は、幕末から明治維新の時期の「国体」論議に通じるものがある。江戸末期の時の将軍徳川家定は、米国(ペリー)やロシア(プチャーチン)の艦隊による巨砲外交に対し、「万一彼より兵端相開き候らわば一同奮発、豪髪も御国体を汚さる様、上下を挙げて心力を尽くし、忠勤を相励むべしとの上意に候」と「国体」を死守せよとの訓令を垂れたのである。
次の総理は、日本は明治維新の時の「国体」論議を今一度思い返し、正していくべく必要がある。それが、中曽根元総理の「戦後日本の総決算」の真の目的であろうし、次の総理はそれが優先課題となる。そして、「国体」の基礎は領土にあり尖閣諸島はその「要」であることは言うまでもない。
かわかみ・たかし 1955年、熊本生。元拓殖大学教授。現在、中央大学法学部講師、一般社団法人 日本外交政策学会理事長等を兼務。大阪大学国際公共政策博士、ジョージタウン大学留学、米フレッチャースクル研究所研究員、ランド研究所客員研究員を経て、中曽根世界平和研究所研究員、海部俊樹元総理の政策秘書、防衛省防衛研究所主任研究員、北陸大学教授から拓殖大学海外事情研究所所長を経て現職。その間、外務省の国際問題研究所客員研究員、神奈川県庁参与、参議院外交防衛委員会客員調査員、TBS News Bird特別キャスターを兼務。



