商業的には大成功だが… 忖度・政治・差別が飛び交ったサッカーワールドカップ
史上初の3カ国共催となったサッカーワールドカップは、スペインの16年ぶり優勝で幕を閉じた。FWフェラン・トーレスが延長戦で決めたゴールによって、スペインが栄冠を手にした。
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FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、今大会の収益が想定を上回る150億ドルに達したと明かした。チケットの公式転売(リセール)にかかる手数料などが貢献したという。出場国が32カ国から48カ国に増えたことで試合数が増加しているため、前大会比で収益が増えることは想定できたが、FIFAは予想を上回る収益を得た。
今大会では、初出場のカーボベルデが決勝ラウンドに進出したり、オーストラリアが20年ぶりの「初戦白星」を手にしたりと、下克上に関する視点だけでも多くの見所があった。日本人選手初となる上田綺世の1試合2得点、フランス代表のキリアン・エムバペによる2大会連続の得点王など、スター選手たちの見所も多かった。
だが、作為的な見どころに関しては否定的な意見が多かったことも否めない。スペインとアルゼンチンが優勝を争った決勝戦にて、ワールドカップ初の試みとしてハーフタイムショーの時間が設けられ、BTSやマドンナといったポップス界のスターが集まり、スペインに敗退したポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドも登場した。
出演者を見ると大層盛り上がったようにも思えるのだが、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の優勝決定戦「スーパーボウル」のハーフタイムショーほどの盛り上がりはなかった。様々なアーティストが次々パフォーマンスを披露する姿は、2022年に米ラッパーのエミネム、ドクター・ドレーらが出演したNFLのハーフタイムショーと重なるが、それと比較すると明らかに歓声の量と回数が小さく、そして少ない。
また、イベント自体は約11分だったが、ロイター通信は舞台設営と撤収で27分かかったと報道。国際サッカー評議会のルールでは選手に対して「15分を超えないハーフタイムの休憩」を認めているため、今回のハーフタイムショーそのものに対する疑問も、開催前から寄せられていた。
節々でにじみ出た「政治と差別」
スペインが優勝を果たした後、アメリカのドナルド・トランプ大統領は選手がトロフィーを掲げて喜びを表現する「トロフィーリフト」の現場に滞在し続けた。一国の首脳とはいえ、今大会とは直接関係ない人物、ましてやスペイン代表と何も関係のない人物がステージに滞在し続ける姿に、疑問を持つ人も少なくなかったようだ。
ワールドカップに暗雲が立ち込めたのは、トランプ氏がFIFA平和賞の受賞者に決まった頃からだった。2025年12月に受賞したトランプ氏は、同月にシリアを爆撃し、翌月にはベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束。両国ともワールドカップには出場していないが、今大会に出場したイラン代表、ソマリア人審判らの入国を拒否したり、渡航に制限をかけたりと、アメリカへの訪問をめぐって不自由な行動を強いられる人も少なくなかった。
一方、1日に行われたアメリカ対ボスニア・ヘルツェゴビナの試合でレッドカードを受けたアメリカ代表のフォラリン・バログンに対し、「見直し」を要求するという介入行為も問題視された。
やり玉に挙がったのはトランプ氏の言動だけでない。FIFAは6月11日から7月1日までの間に600万件のSNSへの投稿を調査し、8.9万件が誹謗(ひぼう)中傷に該当する結果になったと発表。日本時間6月15日に行われた日本対オランダでは、オランダ代表のデンゼル・ダムフリーズが久保建英へタックルをしたことに対し、日本語での誹謗中傷コメントが投稿されるなど、日本が誹謗中傷の当事者になることもあった。
準優勝のアルゼンチンも物議を醸す行動があった。対戦相手のイングランドに勝利した後、かつてイギリスと領有権をめぐって争ったフォークランド諸島の名前を出し、「我々のもの」とする横断幕を展開。また、決勝の試合後にはアルゼンチン代表の複数人がスペインの選手に暴力行為を働いたとされ、どちらもFIFAが調査を行うことになった。
これまでとは比較にならない異次元ともいえる収益をたたき出した一方で、試合とは無関係な部分も注目されることが多かった今大会。4年後に控える2030年の大会までにやらなければいけないことは、収益確保ではないかもしれない。






