出前館が今期最終赤字を40億円から78億円へ大幅拡大 粗利も出ないビジネスモデルで限界露呈か
出前館が15日に2026年8月期の通期業績の下方修正を発表、40億円としていた純損失を78億円に修正した。赤字額は従来予想の2倍近くに膨らむことになる。
Wolt撤退、Uber Eatsと出前館が「2強」のフードデリバリーは価格競争の次の段階へ
下方修正のポイントは、営業損失を従来予想の40億円から79億円へと拡大させたことだ。固定資産の減損損失など一過性の要因によって純損失額が膨張したのであれば、翌期は業績の改善にも期待ができる。しかし、出前館は本業で稼ぐ力を表す営業利益が出ておらず、損失幅も純損失と同様に膨らんでいるのだ。
また、同日に発表した決算では、驚きの事実が明らかになった。2026年3月から5月は売上総利益がマイナスになっているのだ。売上総利益は売上高から原価を引いたもので、いわゆる粗利である。売上高が売上原価を下回っているのだ。
会計的には、サービスを売れば売るほど赤字が膨らむ状況である。
出前館はクーポンの利用額を販管費に計上していたが、2025年8月期から売上から減額する会計処理へと改めた。つまりこれによって売上が下がり、粗利がマイナスとなったわけだ。
出前館は2026年3月から一部対象店舗で送料が無料になるキャンペーンを実施している。大々的なキャンペーンにより、3月のオーダー数は前年同月の103%、4月は110%、5月も110%となった。採算度外視の集客施策に打って出たのだ。
しかし、15日に発表した下方修正においては、売上高も引き下げている。従来予想の441億円から392億円とし、49億円も少ない見通しとなった。つまり、出前館のキャンペーンは想定よりもオーダー数が伸びなかった可能性が高い。
ビッグキャンペーンでも集客に苦戦するほど、デリバリー市場が成長鈍化してしまったのではないか。
「Rocket Now」参入でレッドオーシャン化
出前館の2025年3月から2026年2月までのオーダー数は前年同期間比でおよそ1割の減少だった。そしてこの1年において四半期単体で営業利益が出たことは一度もない。足元の状況は厳しい。
出前館は2025年8月期下期以降を再成長フェーズと位置づけ、トップラインの拡大に力を入れてきた。2025年9月に250だった参加店舗数は2026年7月に2万3000を突破している。都市部での展開を基本としていたが、全国展開へとかじを切ったのだ。
しかし、シェア拡大を目指すのもデリバリー市場の伸びがあってこそのものだ。出前館が全国展開に乗り出したことを契機とし、送料無料キャンペーンに踏み切ったもののトップラインの成長は限定的だった。それが今の日本の市場を映しているように見えてならない。
フィンランドの「Wolt」が2026年3月に日本から完全撤退した。2022年に「DiDi Food」「foodpanda」が撤退し、「楽天ぐるなびデリバリー」がサービスの提供を打ち切った。
そして黒船とも言える韓国の「Rocket Now」が2025年に日本に参入した。配送料無料という常識外れのビジネスモデルだ。「Rocket Now」は店舗側への課金が主な収益源で、迅速にシェア獲得を目論んでいるようだ。
出前館が「Rocket Now」の戦略に対抗して大々的なキャンペーンを実施すれば、再び大赤字を出すことにもなりかねない。市場が想定よりも伸びておらず、既存のビジネスモデルを破壊する脅威が現れたと見ることができるのだ。
出前館は2021年にZホールディングス(現在のLINEヤフー)などから800億円を調達したこともあり、大赤字を出しても自己資本比率は70%近くある。手持ちの現金も214億円と手厚い。粗利を犠牲にするキャンペーンの実施など、強気の姿勢の背景にもなっているだろう。
しかし、現在の拡大路線が中長期的に続くのかという懸念がくすぶる。どこかのタイミングでビジネスモデルの転換が必要になるのではないか。少なくとも、粗利が出ないやり方は長く続かないだろう。
文/不破聡 内外タイムス






