• 全国
  • 亡姉の財産3億円超を隠匿し大胆脱税の69歳女性、検察官が「下心あったんでしょ」と公開説教【裁判傍聴記】
  • HOME
  • 全国
  • 亡姉の財産3億円超を隠匿し大胆脱税の69歳女性、検察官が「下心あったんでしょ」と公開説教【裁判傍聴記】

亡姉の財産3億円超を隠匿し大胆脱税の69歳女性、検察官が「下心あったんでしょ」と公開説教【裁判傍聴記】

あまりにも大胆な脱税行為というほかない。約1億5000万円もの相続税を免れたとされる相続税法違反事件。東京地裁に出廷したI被告(69)は多額脱税のイメージとはかけ離れた、とても質素で地味な雰囲気をまとった小柄な女性だった。

「私が子どもの頃、家が貧しくて食べるものがなく…息子や孫たちに多くのお金を残したいと考えました」。I被告は脱税を行った動機について、涙声でこう語った。

I被告は、実姉のただ一人の相続人だった。姉は2022年5月に死去。起訴状によると、その財産を相続するにあたり相続税の支払いを免れようと企て、正規の相続財産が約3億8000万円のところ約3億1100万円を隠して23年1月に相続税額が約550万円との虚偽の申告を行い、相続税約1億5000万円を免れたとされる。

I被告は姉の死により遺産や遺品を整理する中で、多数の財産を有していたことを知る。不動産4件については「既に税務署に把握されていると考えた」(検察側)ため、そのまま正確に申告した。一方、預貯金と有価証券、生命保険に関しては「私一人で」(I被告)脱税工作を行った。

1分間の血だらけの生配信は何を映したのか―ライバー・最上あいさん刺殺事件初公判で明らかになった3つの新情報【裁判傍聴記】

総財産のうち申告したのは約18%

姉の預金口座から自身名義の口座に複数回に分けて移したり、証券口座を解約して名義変更手続きしたりして、それらをエクセルで情報管理していた。不動産を除く姉の総財産のうち申告したのは約18%に過ぎず、「逋脱(ほだつ)率」(本来の税額に対し納付を免れた税額の割合)は96%にも上った。まさに「大半を除外した」(検察側)形だ。

検察側によると、I被告は米国留学の経験があり、外資系金融会社やIT企業勤務を経て、早期退職後は不動産賃貸業を営んでいる。I被告自身が経済的に困窮していたわけでは全くなく、夫と共有名義の不動産を複数保有するなど、むしろ資産家の部類に属するようだ。

姉の方は会社員として働くかたわら、不動産運用などで豊富な資産を形成していたようだ。結婚歴はなく、姉が病気で入院していた際は妹のI被告が毎日通って身の回りの世話をしていたという。

被告人質問では、涙ながらに「このようなことをしてしまい、本当に申し訳なく深く反省しています」と謝罪。「私自身は全くぜいたくをしないので、子どもたちに財産を残すことだけを考えました」と説明した。

「全体像は見えておりませんでした」

一方で、弁護人の被告人質問では次のようなやり取りもあった。

弁護人「犯罪行為とは思いませんでしたか」

I被告「そんなに重いとは知りませんでした」

弁護人「不動産の価値が高いので、(不動産を正しく申告すれば)財産のほとんどを申告していると思っていたのか」

I被告「はい」

弁護人「不動産以外に(預貯金などで)3億あるというのは」

I被告「(複数口座があった)預貯金は個別(の口座)には分かっていましたが、全体像は見えておりませんでした」

姉の財産を圧縮した上で、税理士に申告手続きを依頼。税理士から不動産以外の相続額が約7000万円、相続税額が約550万円であるとの報告を受けた際、I被告は「少ないと思った」と明かした。

こうした弁解を聞いて、検察官はありていに言えば“頭にきた”のだろう。語気を強めて「お姉さんが努力して築いた財産で、あなたが稼いだものではない。たまたま相続しただけですよね。身勝手だと思いませんか」と責め立てた。

I被告「はい、身勝手です」

検察官「犯罪行為だと分かっていましたよね」

I被告「はい…」

検察官「(姉の財産の)全体像も分かっていましたよね」

I被告「まとめたものはなかったので…不動産の方が(財産価値が)多いと思っていました」

検察官「3億も移しておいて『全体像を認識していない』なんてあり得ないですよ!」

姉の口座を解約して自身の口座に資金移動

検察官は、姉の証券口座を解約して自身の口座に資金移動させた具体例を列挙。姉の口座から自身の口座に連日のように資金移動させていた事実も示して「日々日々送金していますよね」と非難した。そして「下心があったんでしょ」とバッサリ。I被告は「はい、そうです」とうなだれるほかなかった。

多額の相続税を納めたくなかったことを素直に認め、妙な言い訳を繰り出さなければ、法廷の場で具体的な手口までオープンにされることはなかったのではないか。

24年7月に税務調査の連絡が入り、同年9月には修正申告。25年7月には重加算税や延滞税も納付した。重加算税などの支払いにあたっては、子どもたちからも資金を借りたという。子どもたちに財産を多く残そうとした「下心」が、かえって子どもたちから借金をする結果を招いてしまった形だ。

東京地裁はI被告に懲役1年6月、執行猶予3年、罰金3900万円(求刑・懲役1年6月、罰金4500万円)を言い渡した。修正申告を済ませていること、反省の弁を述べていることなど一定の情状酌量を認めつつ、「計画的な犯行で大胆、悪質だ。子どもや孫に財産を残そうという動機にも酌量の余地はない」と断罪していた。

文/篠田哉 内外タイムス

関連記事一覧