• 全国
  • 【竹中平蔵の「悪名は無名に勝る」】「積極財政」か「インフレ適応型財政」か
  • HOME
  • 全国
  • 【竹中平蔵の「悪名は無名に勝る」】「積極財政」か「インフレ適応型財政」か

【竹中平蔵の「悪名は無名に勝る」】「積極財政」か「インフレ適応型財政」か

8月31日、来年度予算の概算要求が締め切られた。共同通信は、次のように報道している。

「2027年度予算の概算要求は、一般会計の総額が143兆円前後に膨らむ見通しとなった。4年続けて過去最大を更新した。高市政権の看板政策『責任ある積極財政』実現に向け、新設した青天井の投資枠に10兆円を超える要求が集まり、全体を押し上げた。金利上昇で借金である国債の元利払いも最大。防衛費など現時点で額を示さない『事項要求』も多く、最終的な予算はさらに膨らむとみられる」。

これでいよいよ高市型の積極財政が始まる、という雰囲気だ。他紙も「積極財政元年」(朝日新聞)、「過去最大の規模」(日本経済新聞)など、財政拡大の姿を描いている。

一方で、マーケットがどのように反応するか、金利上昇が生じないか、といった点にも注目が集まる。財政懸念から、9月1日には新発10年物国債の利回りが上昇(債券価格は下落)し、一時3.0%の大台を突破した。30年ぶりの高水準だ。

しかし、私はこれで本当に積極財政になるのか、まだ疑問が残っているように思う。概算要求で143兆円というのは、一見すると26年度の122兆円に比べると明らかに大きい。

だが高市政権の下で昨年末に18兆円の補正予算を組んでおり、それを加えるとおおむね140兆円の水準だ。成長投資のための特別枠が10兆円を超えること、事項要求などで金額がさらに膨らむこともありえよう。

しかし一方で、税収は過少見積もりと考えられており、実際には数兆円規模の歳入増があると考えてよい。つまり、歳出(市場への支出額)は確かに大幅に伸びるが、他方で歳入(市場から吸収する金額)も大きく増えることを意味している。

インフレで名目GDPと税収増に適応した財政政策に

結局のところ、積極財政と言えるかどうかは収支尻としての新規国債発行額がどのくらいになるか、という点で決まってくる。国債が増発されれば明らかに積極財政、そうでなければ必ずしも積極財政ではなく、インフレで名目GDPと税収が増えることに適応した財政政策、いわば「インフレ対応型財政」ということになる。当然ながら国債発行が大幅に増えれば、財政健全化が危ぶまれ金利上昇・国債価格低下などの混乱が起こる懸念が高まる。

では具体的に、新規国債発行額はどれくらいになるのか。それを見極める必要がある。国債に関しては、従来の国債に加えて近年はGX経済移行債、子ども特例公債などの発行が増えている。

こうしたものを含めると、近年の国債発行額はおおむね30兆円台後半で推移している。来年度は、おそらく40兆円近傍になると考えられているようだが、40兆円を大幅に超えたなら「積極財政」と言ってよいだろう。40兆円近傍なら、歳出規模は大きく見えても必ずしも積極財政ではなく、むしろインフレ対応型財政と考えるべきだ。

ただ、いずれにしても歳出額はある程度大きくなるのは間違いない。そこで問題は、それが賢い支出(ワイズ・スペンディング)になるかどうかだ。周知のように、成長17分野に対する支援は行われようが、その具体的な姿は年末の予算編成までに決められることになっている。その過程では、当然のことながら予算編成をつかさどる財務省の影響力が強く発揮されるだろう。

その意味で高市内閣の下では、積極財政という言葉でアンチ財務省的な姿勢を示しているようでありながら、実は財務省の裁量が幅を利かすという構図も否定できない。概算要求のさらに先のプロセスに、一層の注視が必要だ。

関連記事一覧