中間選挙はトランプ不人気で共和党大敗…政治への宗教的影響力は日米同じ
アメリカの中間選挙で民主党が上下両院で勝利し、多数派を奪還した。絶対に負けを認めないと言われるトランプ大統領が民主党に対して「おめでとう」と祝意を示したのは意外だったが、ケチのつけようがないほど共和党が大敗したということだ。
最大の敗因は、トランプ関税やイラン戦争などによって引き起こされた物価高だが、投票率が50%程度まで上がって、無党派層が民主党候補に投票したことが大きかった。通常、中間選挙は大統領選に比べて投票率が低く、40%に達しないことも多い。
トランプ政権に痛手、米中間選挙で民主党が上下両院を制す 日本経済への影響は
今回はトランプ大統領の政策に対する不満が投票の増加につながった。無党派層が選挙の趨勢(すうせい)を左右するのは、日本もアメリカも同じである。
無党派層とは真逆に、多少のことで支持が揺るがない人たちは岩盤支持層と呼ばれる。トランプ大統領の場合、「キリスト教福音派」が有名で、アメリカ成人人口の約2割を占めるプロテスタントの一派だ。
人工妊娠中絶の反対、LGBTQ+など性的マイノリティーの権利拡大への反対、伝統的な家族観の維持、イスラエルへの強い連帯などを掲げている。そして、驚くべきことに、福音派の多くの人たちはダーウィンの進化論を否定し、神による天地創造を信じている。
トランプ大統領の岩盤支持としては「MAGA(アメリカを再び偉大に)」派も有名だが、実はもう1つ別の「MAGA=Make America Godly Again(アメリカを再び神の国に)」派もあり、3割の国民が信奉者か共感者だと言われる。福音派もこのMAGA派と被っており、バンス副大統領はカトリック信者だがここに属している。
アメリカの宗教と政治に詳しい立教大学文学部の加藤喜之教授によると、このMAGA派の中で「NAR(新使徒運動)」という勢力が拡大しているとのこと。
他の教会などとも連携して考えを広めるネットワーク型の宗教運動らしい。NARの熱心な支持者は300万人程度おり、考えに賛同する人は数千万人規模になる可能性があるそうだ。NARはトランプ支持者の議会襲撃事件(2021年1月)にも関与しているといわれる。
福音派の指導者や牧師らは「物価高や国際紛争の代償があっても、政権の目指す保守的価値観のために支持を維持すべきだ」と信徒へ積極的に呼びかけてきた。しかし、彼らの目論見は、投票率の上昇と想像以上のトランプ不人気によって阻まれた。
宗教的影響大きい米国 日本も「皇室典範」の議論は非科学的
かように政治に対して宗教の影響力が大きいアメリカは、政教分離の原則が憲法で定められている日本から見ればかなり異質な感じがする。では、日本はどうなのかと言えば、さすがにダーウィンの進化論を否定する人はほとんどいないと思うが、皇室典範の議論になると話は変わってくる。
女性天皇や女系天皇を頑なに否定する人たちは、男系男子による継承を主張する。その考え方の根拠となっているのは、初代とされる神武天皇から第126代の今上天皇に至るまで、父方をたどるとすべて神武天皇(または皇統)につながる「男系」で継承されてきたとされる伝統(いわゆる万世一系)だ。
そして、神武天皇の即位(紀元前660年とされる)から実在が確実視される代までの期間は「古事記」や「日本書紀」の神話・伝承に属しており、神武天皇の存在は科学的に証明されたものではない。つまり、万世一系を主張する人たちは、アメリカの福音派と思考回路が似ていて、非科学的だ。
10月24日に施行された「改正皇室典範」は、高市政権の岩盤支持層である神社本庁や日本会議に配慮されたものであることが、毎日新聞で報道されている。
日本にもアメリカにも、宗教や神話をベースに自らの“思い”を政治的に実現させようとする人たちが多数いて、彼らは科学的主張に決して耳を傾けようとしない。日米ともに世論の分断はますます進むのかもしれない。
文/横山渉 内外タイムス




