交通の便、家賃相場、下町人情…“六本木超え”の路線価が話題の街「北千住」の魅力
「穴場」が、ついに日の目を見ようとしている。
国税庁は7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる令和8年分の路線価を公表した。東京23区では4年連続で全地点の価格が上昇。その中でも、とりわけ注目を集めたのが東京都足立区・北千住だ。
北千住駅西口の「西口駅前広場通り」の路線価は、1平方メートル当たり872万円。高級住宅地やブランド街のイメージが強い「六本木けやき坂通り」を上回り、大きな話題となった。
路線価、「北千住」が「六本木」超え…大都市の狭小住宅トレンドは“スペパ住宅”
「なぜ北千住なのか」――。そう思った人も少なくないだろう。
北千住といえば、テレビでもたびたび特集される飲み屋街や、「足立の花火」の会場として知られる街だ。しかし、その本当の魅力は、意外にも都内でさえあまり知られていない。
実は筆者は、北千住駅を最寄り駅として約8年間利用している。日々暮らしてきたからこそ感じる、この街の魅力をひも解いていきたい。
実は「穴場」ではなく、都内屈指の便利な街
冒頭で「穴場」と書いたのには理由がある。
北千住は、SUUMOが毎年発表している「穴場だと思う街(駅)ランキング」で、実に9年連続1位を獲得している街だからだ。
もっとも、「穴場」という言葉には少し違和感もある。
北千住駅の1日当たりの乗降客数は約140万人。都内では新宿駅(約300万人)、渋谷駅(約290万人)、池袋駅(約230万人)に次ぐ規模を誇り、東京駅(約120万人)をも上回る巨大ターミナル駅である。
路線も充実している。JR常磐線(上野東京ライン)、東京メトロ千代田線、東京メトロ日比谷線、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレスの5路線が乗り入れ、都内屈指の交通利便性を誇る。大手町、霞ケ関、銀座、上野、秋葉原、日比谷、六本木、表参道――。主要エリアの多くへ乗り換えなしでアクセスでき、勤務地を選ばないことも北千住の大きな強みだ。
そして、実際に利用していて感じる最大のメリットが「始発電車」の存在である。
筆者は通勤で東京メトロを利用しているが、ラッシュ時でも座って移動できる日が少なくない。日比谷線は北千住始発があり、千代田線も隣の綾瀬駅から始発列車が運行しているため、時間を少し調整するだけで満員電車を避けられる。毎日の通勤で20~40分座れるかどうか。この差は、数字以上に生活の質を左右する。
だからこそ北千住は、「住んで初めて便利さが分かる街」として、長年支持され続けてきたのである。
都心近接なのに家賃はリーズナブル
さらに、家賃相場の安さも北千住の大きな魅力だ。
足立区は、かつて工業地帯として発展した歴史があり、水害リスクなどの要因もあって、都心近接エリアとしては比較的家賃が抑えられている。加えて、北千住には東京電機大学や帝京科学大学などのキャンパスがあり、学生街としての一面も持つ。そのため、ワンルーム5万円台といった学生向け物件が豊富で、エリア全体の家賃相場も比較的リーズナブルだ。
バス路線も充実しているため、駅から少し離れるだけで選択肢はさらに広がるだろう。
(ちなみに筆者は、北千住駅からバスで約10分の1LDKに月額5万8000円で住んでいる)
物価高が続く今だからこそ、毎月必ず発生する家賃という固定費を抑えられるメリットは決して小さくない。
下町と都会が共存する街
街並みもまた、北千住ならではの魅力だ。
駅前にはマルイとルミネが並び、買い物には困らない。一方で一本路地へ入れば、昔ながらの商店街や個人商店、昭和の面影を残す飲み屋街が広がる。
近年は若い世代の流入も増え、おしゃれなカフェやベーカリー、雑貨店も次々とオープン。街は少しずつ洗練されながらも、下町らしい人情味は今なお色濃く残っている。
昼は学生や買い物客、家族連れでにぎわい、夜になると「ときわ通り」には仕事帰りの人々が集まり、酒場から楽しげな笑い声が聞こえてくる。同じ街とは思えないほど、時間帯によって表情を変えるのも北千住らしさだ。
交通の利便性、家賃の安さ、暮らしやすさ、そして下町ならではの温かさ。だからこそ、長年「穴場」と呼ばれ続けてきた街が、ようやくその価値を正当に評価され始めたのかもしれない。
六本木を上回る路線価が話題となったことで、北千住はこれまで以上に注目を集めるだろう。進学や就職を機に一人暮らしを始める人も、子育てを見据えて住まいを探している人も、一度この街を歩いてみてほしい。
数字だけでは分からない「住みやすさ」が、北千住には確かにある。






