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窃盗罪で逮捕された被告人は知り合いだった…法廷の柵を隔てて12年ぶりの再会【裁判傍聴記】

職業柄、いろんな人と会う機会が多い。この歳まで唯一交わってこなかった人、それが咎人(とがにん)だった。

人生で初めて法廷の扉を開いた瞬間まで、幸いなことに身近に咎人がいなかった。それ故にこの歳になって裁判傍聴に熱中しているのだと自分では理解している。

生まれ育った街の裁判所に毎日通っていると顔を覆いたくなるような場面に出くわすことがある。

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闇金、キャバクラ店長から鬼のような催促

令和8年4月17日、過失運転致傷罪の公判を傍聴し終えた私は次の窃盗罪の公判に備え、法廷の最前列に座っていた。

刑務官に連れられ入廷してきた被告人と目が合い、思わず顔を覆いたくなった。その男を私は知っていたからだ。

被告人は高校を中退、職を転々とし二度の離婚歴がある。10代後半からパチンコが好きだったが平成26年頃から狂ったようにスロットを打つようになり一度自己破産している。

平成30年、被告人(当時42歳)は長年、店長として勤めていた飲食店が閉店となりキャバクラのボーイへと転身する。

令和3年頃にはFX、バイナリーオプションに手を出し、借金は1千万円を超えた。昼は一人親方として建設業を始め、夜はキャバクラのボーイを続け、生活の立て直しを図るもギャンブル、バイナリーオプションが止められず被告人の借金はどんどん膨らんでいった。

闇金、キャバクラの従業員、店長からも借金し被告人は追い詰められる。

令和7年9月、職場に不満もあり借金も返せないと開き直り、店を飛んだ。闇金、キャバクラの店長から鬼のような催促があり、自宅に居られなくなった被告人は車上生活を始める。そんな時、被告人は建設業の仕事で過去知り合ったYから「案件」と称した仕事に誘われる。

「高齢女性がデイサービスに行っている間にキャッシュカードを盗めそうだから現金の引き出し役をやってくれないか?80代の高齢者はカードを盗んで引き出しても気づきにくいからリスクが低い。取り分は山分けしよう」

被告人は犯罪と認識しながらも喉から手が出るほど金が欲しかった。そして誘いに乗り、同年10月5日から9日までの5日間日間に盗まれた高齢女性の銀行キャッシュカードを使用しATMで40回に分け1千万円を引き出した。

氏名不詳者、Yと三等分し、被告人は335万円を得た。被告人は得た金を闇金の返済、バイナリーオプション、ギャンブルに注ぎ込み、1か月後には再び一文無しになっていた。

引き出しを不審に思った銀行が被害者に連絡し事件が発覚。被害届を受理した県警は防犯カメラ映像から被告人にたどり着き、被告人はあっけなく逮捕された。

被害者のお金でやったギャンブルは楽しかったですか?

被告人質問では月20万~30万円をギャンブルに注ぎ込んでいた旨を供述。過去、前妻は被告人のギャンブル依存を懸念し、強制的に病院に通わせていたという。ギャンブルで費やした総額は2800万円だと述べた。

弁護人「自分のやっていることが恥ずかしいとは思いませんか?」

被告人「はい」

弁護人「被害者のお金でやったギャンブルは楽しかったですか?」

被告人「楽しいと思う感覚はありません」

検察官「あなた被害者にお金返せるんですか?」

被告人「現段階では返せる見込みはありません」

被告人は残った借金を法的な手段で解決し、お金のことで疎遠になっていた兄たちに今後の支援も含めて連絡を取る旨を供述した。社会復帰したら病院に通い、被害者への弁済の目途を立てたいとも述べた。

検察は拘禁刑5年を求刑し、裁判所は拘禁刑3年6月、未決勾留日数中50日を算入した実刑判決を言い渡した。

よく顔を合わせていた飲食店の店長時代

被告人が狂ったようにスロットを打ち出した当時、私はカフェの店長をしていた。近所に飲食店があり、そこのスタッフたちがカフェに来たり、私もその飲食店にモーニングや昼食を食べに行ったりと交流があった。

被告人は当時、その飲食店の店長だったのである。あいさつを交わして軽く話す程度ではあったがよく顔を合わせていた。

その後、私は県外へ転勤し、その飲食店は閉店し被告人とは今日まで会うことはなかった。

近所で似たような境遇で店長をしていた私たちは法廷の柵を隔て、片や傍聴人、片や被告人として12年ぶりに再会した。

おそらく彼も傍聴席の私に気づいていただろう。1時間の公判で初めて彼の人生を知った。私も色々あったが、この12年年、彼も色々あったのだろう。

彼は明らかに重度のギャンブル依存症であり、出所後もおそらく被害弁償などできないだろう。同情はしたが、私は彼への失望と軽蔑の眼差しを隠し切ることができなかった。

公判が終わり、私は早々に法廷を後にした。その帰り道、12年前に被告人が店長をしていた飲食店のスタッフから、生活に困窮していると相談を受け、15万円を貸して返済されていないことを思い出した。

文/田辺朋之 内外タイムス

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