#21 西原正「日米合意による指揮統一」

日米合意による指揮統一 西原正

 日米間の指揮の統一に関して、2023年春の日米によるNext Alliance会議(NAC)が従来の日米同盟の協議より一歩進んだ会合となった。今年の3月30日の日米防衛首脳会談では、中谷元・防衛相が東アジア地域を東シナ海、南シナ海、朝鮮半島、日本列島など各地域別に防衛対策を考えるべきではなく、地域全体を一つの「戦域」としてとらえるべきではないかと論じた。また今年の4月18日の日米首脳会談でも同様の議論があった。中谷大臣はこの構想を米国側に伝達したと報じた(朝日新聞、2025年4月15日朝刊)。これまで日本は防衛戦略などを考える際、日本列島のみを考えていたので、この構想は防衛の拡充を意味すると考えられた。

 また3月24日に統合作戦司令部(JJOC、司令官南雲憲一郎空将部下約240人)が新たに組織され、これによって、司令部による地域防衛を充実させることになったが、この構想が日本担当の戦域を拡大することになり、可能性があるにしても困難さが残る。第一に、防衛地域が広大になること、第二に韓国や台湾などが極めて政治的にも歴史的にも複雑な国であることを考えると、日本が関わることはほとんど無理であると言える。日本は第二次大戦では両国を占領していたことに言及するだけで困難さが想像できる。

 しかも韓国は北朝鮮に接し軍事的に緊張関係にあること、台湾も中国と同じような関係にあることを考えれば、日本は軍事関係の議論を避けるのが賢明である。

 自衛隊が極東地域全般の防衛に係わるとなると、当然韓国や台湾との協力が必要になるが、韓国も台湾も複雑な分断国家であり、それらの国との関係に入ることは政治的に極めて困難であり、危険でもある。したがって日本はどの程度関わることが出来るのかという問題に直面する。さらにトランプ政権が示しているように、現状では、民主主義国か非民主主義国かを問わないで、自国の外交を進めることになりそうだ。そして民主主義の信奉を重視した外交から距離をおいたものになりそうである。

 とは言え、これまでと同じような政権が続くとは限らない。米国はいまや米国の強制ともいえる政策に従って自国の政策を左右しなければならなくなっている。多くの国はトランプ大統領の威力に押されているが、トランプ方式の威力がいつまで続くかは疑問である。

 また自衛隊は人員不足と言われることが多いが、採用合格率を見ると合格者の5倍くらいの人が合格者として発表されている。これは離職率が高いことが原因であることが指摘されるが、勤務中の危険な環境や疲労度が高いことなども離職率を上げている。しかし強靭な日米隊員を維持するには、訓練の厳しさを維持しておくことが重要であることはいうまでもない。

 日米間の指揮統一が進むことを期待したい。

にしはら・まさし 1937年生まれ。大阪府出身。1962年京都大学法学部卒業。1964年米国ミシガン大学大学院政治学科に留学、1972年12月政治学PhD取得。2000年防衛大学校長、2006年退職。2006年4月一般財団法人平和・安全保障研究所理事長、2021年6月同研究所副会長。2008年瑞宝重光章。2013年産経新聞正論大賞。

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