#4 織田邦男「ウクライナF16の戦力化を支援せよ」

ウクライナF16の戦力化を支援せよ 麗澤大学特別教授 元空将 織田邦男
ウクライナ戦争が始まって、既に2年半が経つ。戦況は一進一退で出口が見えない。この戦争はロシアによる侵略戦争であり、ロシアの勝利は、力による国境線の変更を禁じた戦後の国際秩序の崩壊を意味する。日本も他人事ではない。これを許せば、中国の力による尖閣奪取や沖縄侵攻だってあり得る。
現在、ロシアの占領地はウクライナ全土の約18%に及ぶ。18%といえば、日本では四国、九州、沖縄に相当する。もし、日本が四国、九州、沖縄を占領された状態で停戦を持ちかけられたら、これを飲むだろうか。現状での停戦も許してはならない。
ウクライナの苦戦は、航空優勢がとれないことにある。その鍵となる、ウクライナ待望の米国製戦闘機F16の第一陣が8月4日、ウクライナに到着した。
F16が入れば「奇跡を起こす」「ゲームチェンジャーになる」と劇的な戦況好転を期待する向きがあるが、そう簡単ではない。
航空戦力は戦闘機、地上レーダー、基地防空、後方支援などの諸力の「掛け算」であり、どれが欠けても戦力としてはゼロになる。戦闘機は、地上にあっては「ジュラルミンの塊」に過ぎない。ロシアはF16を地上で破壊することを、狙っている。
F16が出撃すれば、その基地はロシアのミサイル攻撃に間違いなく晒される。そのためには、攻撃基地を絞らせないよう、多くのF16作戦基地を整備するか、あるいは母基地を設けて、地対空ミサイルなどを重層配備して要塞化し、鉄壁の防空体制をとるしかない。
実際には、整備に必要な予備部品や点検器材、整備員などの数は限られ、作戦基地を多く設けることは難しい。母基地を設けるにも、地対空ミサイルなどの数が足りない。だが、地対空ミサイルはNATOなどからの支援によってできないことはない。
F16投入は「両刃の刃」である。F16が能力を発揮できれば、地上作戦も劇的に好転し、「ゲームチェンジャー」になり得る。他方、F16がロシアの攻撃によって地上で破壊され、この映像が全世界に流れようものなら、一気に欧米諸国の支援疲れが再燃し、戦局全般に致命的な悪影響を及ぼすだろう。
自由主義諸国はF16の機能発揮ができるよう、あらゆる支援を提供していくべきだ。日本も、傍観している場合ではない。早急に防衛装備移転原則を改定し、輸出が認められる5類型に「防空」を加え、地対空ミサイルの供与を実施していくべきだろう。
何としてでもロシアを勝たせてはならないのだ。
おりた・くにお 昭和27年愛媛県生まれ。昭和49年防衛大学校卒業(18期)、航空自衛隊に入隊、F4戦闘機操縦者として第6航空団(小松)に勤務。第301飛行隊長(新田原)、第6航空団司令、航空幕僚監部防衛部長を経て航空支援集団司令官を最後に退官。米国空軍大学留学、スタンフォード大学客員研究員。退官後東洋学園大学客員教授を経て、令和4年から現職、元空将。令和4年、瑞宝中綬章を受章。令和4年より産経新聞「正論」執筆メンバー。第38回正論大賞を受賞。



