サトウキビ 長雨でトラッシュ腐食実証に遅れ

 サトウキビをハーベスターで収穫した際に葉や根など原料にならない部分(トラッシュ)が大量に製糖工場に搬入されることが、市のキビ生産の課題の一つとなっている。宮古島市(座喜味一幸市長)は今年度、トラッシュの腐植を促進し早期に農地へ還元することで、地力増進や循環型農業につなげるための実証実験を行っているが、長雨の影響で攪拌作業が進まずに事業が遅れていることが分かった。農地への搬入の目途は立っていないという。
 機械刈りの進展によりトラッシュが急増し、工場の敷地を圧迫するなどの問題が起きている。2020年度に宮古地区の製糖工場に搬入された原料のうち、約13%がトラッシュだった。手刈りでは人の手で処理されるため、トラッシュ率は1%ほどという。
 キビの繊維は固いため、腐食が進んで肥料として活用できるようになるまで数年を必要とする。市は腐植の進んだトラッシュをほ場に還元する事業を行っているが、搬出される量より持ち込まれる量の方が多いのが現状。また、有機物が畑から出ていくことで地力の低下を懸念する声もある。
 市は今年度、平良松原でトラッシュにバガスや糖蜜を混ぜ、重機で攪拌することで腐食を早める実験を行っている。トラッシュの利用促進と地力増進につなげる狙いで、久松地区のキビ畑にトラック約200台分を還元する予定。
 当初は今月末にもほ場への搬出を開始する予定だったが、長雨の影響で作業が行えず、腐食が十分に進んでいない。現在のところ利用開始時期に目途は立っていないという。沖縄地方は5月、降水量は平年比約3倍で観測史上最多、日照時間は同比約5割で同じく最少を記録した。
 市は同事業を複数年継続し効果を検証する方針だが、問題の根本的解決につながるかは未知数。宮古島は県のキビ生産量の約4割を占める一大産地だが、その分トラッシュも大量に出ることが解決の一つの壁になっているという。

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