3カ月で売却された「ナポリの窯」 太洋物産が期待する“取締役・堀江貴文”の役割
食料品の専門商社である太洋物産は、宅配ピザチェーン「ナポリの窯」を運営するいちごホールディングスを、9月30日付で売却したと発表した。7月に買収したばかりの会社だ。
太洋物産は、当初の事業計画の想定を上回る費用の発生や固定費等の負担が生じていることなどを、早期撤退の理由に挙げている。譲渡したのは、アプリ開発などを手掛けるAI DINING。同社はいちごホールディングスの元代表取締役CEO・木野将徳氏が代表を務めている会社で、譲渡価額は6億5000万円だった。
太洋物産は同じタイミングで、実業家で社外取締役の堀江貴文氏が業務執行取締役になったことも発表。堀江氏には新たな事業領域の開拓や商材の発掘に加え、責任と権限を持って組織を率いる役割を期待していると説明した。
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「ナポリの窯」の早期売却と堀江氏の業務執行への参加。一見すると別々の動きだが、関係者と取引の経緯を整理すると、太洋物産の経営転換を考える手掛かりが見えてくる。
まず、重要な人物がいちごホールディングスの元CEOである木野氏だ。木野氏は2013年にエックスモバイルを創業した実業家である。著名人のネームブランドを生かした通信事業を展開しており、2023年には堀江氏による格安SIM「HORIE MOBILE (ホリエモバイル)」をリリースした。
エックスモバイルは2025年にいちごホールディングスの第三者割当増資を引き受け、同社を子会社化していた。宅配ピザの店舗・配送ネットワークを携帯事業に活用し、加入者向けの優待などを提供する狙いがあった。
実は、木野氏はいちごホールディングスを売却する前から、太洋物産の株式を買い進めていた。2026年4月に11万3400株を取得、その後も継続的に買い増していた。
7月1日を報告義務発生日とする大量保有報告書の訂正後の記載では、企業価値・株主価値の向上を目的として、資本政策の変更、資本効率の向上、事業構造の見直し、ガバナンスの強化などを提案する方針を示していた。
つまり、木野氏はいちごホールディングスを売却する前から、株主という立場で太洋物産の経営への提案意向を示していたのだ。
人脈活用で「チャンス」増える
太洋物産は7月にいちごホールディングスを約6億円で取得したが、これは現金の異動を伴わない株式交換である。7月1日時点の大量保有報告書によると、木野氏本人が17.98%、エックスモバイルが14.42%、合計で32.41%の太洋物産の株を保有した。木野氏は筆頭株主であり、大きな影響力を持つようになったのだ。
太洋物産は、木野氏が代表を務めるAI DININGに6億5000万円でいちごホールディングスを売却したが、この取引は株式交換ではなく現金の異動を伴うものだった。
太洋物産は2026年6月末時点の現金及び預金が3億1700万円。6億円以上の現金が入ってくる意味合いは大きい。増資に似た経済効果を得ただけでなく、いちごホールディングスの収益改善に必要な「追加投資」という負担を避けることもできたわけだ。
太洋物産は9月30日にもう一つ、大きな発表も行っている。それが持株会社体制への移行を検討するというものだ。持株会社化すると、一般的にM&Aや資本業務提携などを進めやすくなり、非連続な成長を遂げやすくなる。
木野氏は事業構造や資本政策への提案を掲げ、堀江氏の参画を経営陣に提案していた。太洋物産は、木野氏や堀江氏のネットワークを活用することで、外食やIT、DXなど様々な事業を取り込むチャンスが増えるのだ。
木野氏や堀江氏は、案件を持ち込む機会が増えるというメリットがある。また、堀江氏は飲食店の「WAGYUMAFIA」を成功させた実績があるが、太洋物産が扱う食材を活用して新ビジネスを始められる可能性もある。
今回の売却で、太洋物産はピザ事業を手放した。一方で、木野氏側の株主としての影響力と、堀江氏の経営への関与は残る。人脈や知名度は案件を呼び込む力になり得るが、それだけで企業価値が高まるわけではない。
今後問われるのは、誰から何をいくらで取得し、どれだけの利益とキャッシュフローを生み出せるかだ。その判断と実行力を見極めていきたい。
文/不破聡 内外タイムス






