芸術・文化活動、運動並みに「老化の遅さ」と関連 UCLが英国成人3556人を分析
美術館に行く、歌う、踊る、絵を描く、写真を撮るといった芸術・文化活動は、運動と同じように生物学的な老化の遅さと関係している可能性がある。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)などの研究グループは、英国の成人3556人を対象に、余暇活動とDNAメチル化に基づく老化指標との関係を分析した。研究成果は2026年5月11日付で老年学誌「Innovation in Aging」に掲載された(<https://doi.org/10.1093/geroni/igag038>)。芸術や文化への参加は、健康的な老化を支える生活習慣になりうるのか。
研究では、英国の大規模縦断調査「UK Household Longitudinal Study」のデータを用いた。2010〜12年に採取された血液サンプルからDNAメチル化を測定し、7種類の老化指標で生物学的老化を評価した。DNAメチル化は、遺伝子の働き方を調節する化学的な変化の一つで、体の老化の進み具合を推定する手がかりとして使われる。
芸術・文化活動には、歌、ダンス、絵画、写真、手芸などの参加型活動、美術展や芸術イベントへの参加、歴史的建造物や公園の訪問、博物館や図書館、資料館の利用などが含まれた。研究チームは、活動の頻度だけでなく、どれだけ多様な活動をしているかも調べた。運動についても、頻度、種類の多さ、本人が感じる活動量を分析した。
月1回以上の文化活動で老化指標が低い傾向
分析の結果、芸術・文化活動と運動はいずれも、7種類の老化指標のうち、病気や死亡リスクに近い生物学的年齢をみる指標や、老化が進む速さをみる指標で、老化の遅さと関連していた。一方、暦年齢に近いタイプの老化指標では、明確な関連はみられなかった。
芸術・文化活動では、年に1〜2回以下の人と比べ、月1回参加する人は、病気や死亡リスクに近い老化指標でみた生物学的年齢が0.8歳低く、週1回参加する人では1.02歳低かった。老化の進む速さをみる指標でも、月1回や週1回の参加は、より遅い老化ペースと関連していた。活動の種類が多い人でも、同様に老化指標が低い傾向があった。
運動でも似た結果が得られた。週1回運動する人は、同じ老化指標でみた生物学的年齢が0.59歳低く、運動の種類が多い人や、本人が「非常に活動的」と答えた人でも老化指標が低かった。研究チームは、芸術・文化活動と運動の関連の大きさはおおむね同程度だったとしている。こうした傾向は、40歳以上の中高年層でより強くみられた。
頻度だけでなく「多様さ」も関係か
なぜ芸術や文化が老化と関係するのか。研究チームは、社会的交流、認知的刺激、創造性、多感覚の刺激、ストレス軽減などが関わる可能性を挙げている。芸術・文化活動には、ストレス反応や炎症、心血管系の健康に影響する経路があると考えられており、運動とは異なる入り口から健康老化に関わる可能性がある。
特に注目されるのは、活動の頻度だけでなく多様さも老化の遅さと関連していた点だ。複数の活動に触れることで、認知、感情、身体、社会的つながりの刺激が広がり、ストレスへの対処や健康行動にも影響している可能性がある。
ただし、この研究は観察研究であり、芸術・文化活動が老化を遅らせたとまでは断定できない。活動量は自己申告で、未測定の要因が影響している可能性も残る。分析対象は血液サンプルと遺伝子解析に同意した白人欧州系の参加者で、体の他の組織や別の集団にそのまま当てはまるとは限らない。
それでも、芸術・文化活動が生物学的老化と関連することを大規模データで示した初の研究として意義は大きい。健康づくりというと運動や食事に注目が集まりがちだが、文化活動もまた、年齢を重ねる体を支える生活習慣の一つとして見直される可能性がありそうだ。


