楽天が攻撃型ドローンで防衛産業に参入 メーカー・商社ではなく「EC大手」が頭角を現したワケ
楽天グループが、ドイツを拠点にする自律型ドローン開発企業「ヘルシング」と提携し、AIを搭載した攻撃型ドローンの国内導入の支援をすることが、17日までに明らかになった。ただ、EC大手の楽天による防衛産業への参入は突然の動きではなく、これまで入念に準備を進めてきた。
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まず、日本の防衛産業には将来性がある。政府は2026年4月、防衛装備移転三原則および運用指針を一部改正し、輸出ルールを緩和した。これにより、従来は「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限定されていた国産完成品について、安全保障面で協力関係にある国への移転を幅広く認めた。
2023年度からは防衛費も引き上げている。2026年度には防衛力強化を補完する関連経費を含めて10.6兆円にまで増え、GDP比で約1.9%に達している。また、アメリカのピート・ヘグセス国防長官は、日本などの同盟国に対してGDP比で3.5%の防衛費にすべきと主張している。このことから、日本の防衛産業は有望な市場といえる。
現場の動きも慌ただしい。日本は防衛力強化のため、自律型ドローンの整備を急いでいる。陸上自衛隊は、ヘルシングの攻撃型ドローン「HX-2」の実証試験を9月末まで行い、その結果を踏まえて導入の可否を検討する。中国の軍事力増強が念頭にあるとみられる。
楽天の立ち位置は、ドローンの製造や通信システムの提供をするわけではなく、ヘルシングと日本政府や自衛隊をつなぐ商社のようなもの。つまり、防衛装備品の橋渡しをしようとしているのだ。
2025年5月には、楽天はウクライナ政府が設立した防衛テック支援組織「Brave1」と協力。日本の大規模な防衛・安全保障総合展示会「DSEI Japan」で、ウクライナのスタートアップ6社の出展を促した。
三菱重工業やNEC、富士通など、日本国内には防衛産業に強い大手メーカーが複数ある。既存の有力企業が並ぶなか、なぜ異業種の楽天がヘルシングのパートナーとして存在感を示すのか。背景には自律型ドローンを開発する海外企業が、小回りが利くスタートアップとの提携を望んでいることがありそうだ。
「日本攻略」を目指す海外企業
ロシアとウクライナの戦争により、自律型ドローンの有効性は鮮明になった。特徴的なのは、実戦データをもとにソフトウェアや機体を改良して再投入する、開発サイクルの速さだ。数年単位で仕様を固め、大規模な開発・調達を行う従来型の防衛装備とは性格が異なる。
楽天には大型防衛装備の開発・製造ノウハウはない。しかし、海外新興企業を発掘し、日本の政府機関や企業との接点を作り、実証実験につなげる役割では強みを発揮できそうだ。
また、楽天はドローン開発や普及に長い時間をかけて取り組んできた。2015年ごろから事業を本格化し、2016年にはドローンを活用した配送サービス「そら楽」を発表した。ドローンというフィルターを通すと、楽天は約10年かけて攻撃型ドローン市場への参入を果たした、ともいえる。
今回の防衛事業で中心的な役割を担っているとみられるのが、楽天で常務執行役員を務め、ドローン事業の立ち上げに携わってきた向井秀明氏だ。向井氏は現在、三木谷浩史会長兼社長に近い社長室の室長も務める。楽天の防衛産業参入は、トップ主導の新規事業という側面もありそうだ。
ドイツの企業と手を組んだ、というのも興味深い。日本政府は日米同盟を安全保障の中核に置きながらも、ヨーロッパに調達や共同開発のパイプを築こうとしている。アメリカへの過度な依存はリスクが大きいからだ。
アメリカには自律型無人機などを手がける防衛テック大手の「アンドゥリル」がある。同社は日本法人を設立するなど、自力で日本市場への足掛かりを築いている。一方、ヘルシングは楽天と組むことで、日本政府や自衛隊へのアクセスを確保しようとしている。米欧を代表する防衛テック企業が、異なる方法で日本市場を攻略しようとしているのだ。
楽天は防衛装備を作らない。世界で次々と生まれる新しい兵器や技術を、日本へ持ち込む入口は押さえられる。攻撃型ドローンへの参入は、楽天にとって新たな巨大市場を切り開く一歩になる可能性がある。
文/不破聡 内外タイムス






