抽選に外れて笑いが生まれる ローソンが巻き起こした「懐かしいバズり」
X(旧Twitter)では、企業アカウントやインフルエンサーが「リポストキャンペーン」「フォロー&リポストキャンペーン」などと称した企画を展開することがある。家電やゲーム機、Amazonギフトカードなどの景品を用意し、対象ポストをXの利用者にリポストさせたり、アカウントのフォローをさせたりして、会社側が知名度の向上などを狙う施策だ。
フォロワーが少なかったのでキャンペーンに気付かれなかった、Xの設定ミスが原因で景品の発送でトラブルになったなど、手軽だからと言って必ずしも成功するSNSの施策というわけではないのだが、一連のキャンペーンで最も人気を誇り、成功を収めているアカウントの一つがローソンである。
同社の公式アカウントでは定期的にリポストキャンペーンを展開、これまでからあげクンやオリジナルブランドなどの無料券の配布を行ってきた。ひとたび抽選対象のポストを投稿すれば、20万リポストや30万リポストは当たり前。インフルエンサーらが喉から手が出るほど欲しがる「バズり」を、いとも簡単に手にしている。
このリポストキャンペーンが実際の購買力などに影響を与えているかは不明なので、商業的な意味での成功を収めているかまでは微妙なのだが、5月頃から参加者の層に変化が起き始めた。きっかけは、受験生を名乗るアカウントが参加した抽選時のポストとみられる。
同アカウントは「俺の受験が成功すると思ったらあたりにして」と投稿。これに対してローソンは「はずれ」の結果を返した。この結果を飲み込んだ上で「例えお前が否定しても俺は成し遂げてみせる」と返事。Xでは珍しく返信アカウントがバズるという現象が発生した。
大喜利大会で「ハピろー!」
抽選結果を返してきたローソンへの返事は、「ありがとうございます」「また参加します」などの一般的なリポストが多かった。ところが、この頃から大喜利のような応募ポストと返答が急増。ローソンの告知を行う一般的なPR用アカウントが、面白コンテンツを生み出す一つのコミュニティーへと変貌を遂げている。
「これ当たったら告白をする」という運試しの応募、当選者に送られる「あたり!」の画像を使った応募などを本当に当選させたり、「あたりの反対ってなんだっけ」という応募ポストに「はずれ」と返したりと、ローソン側のシステムを逆手に取った投稿が続出。2006年に放送されたギャグアニメ「鷹の爪」の公式アカウントも「これが当たらなかったら一週間おがくず生活なんです」などと書いた上で応募したが、機械的に「はずれ」の返信を受け取っている。
イラストを描ける人々からの応募も相次ぎ、デフォルメイラストで描かれた初音ミクが、ローソンの前で餃子を欲している絵などが登場。はずれの応募結果を受け取った後に、セブンイレブン、ミニストップなどへ入店するキャラクターのイラストもあった。人気FPSゲーム「Fortnite」でローソンの店舗を再現したスクリーンショットの投稿、生成AIで作った「礼儀正しくローソンで会計を行う恐竜」の画像なども投稿され、技術力を見せ合う場にもなっている。
このムーブメントは、決してローソン主導で巻き起こしたものではない。素性の分からないSNS上の人物が集まり、一緒に面白い世界を作り上げようとしている。歌手の広瀬香美がTwitterのオリジナルソングを発表した時のような、Twitterの黎明期(れいめいき)によく見かけた「古き良きバズり」と言える現象だろう。
1975年に国内1号店が誕生したローソンは、2022年に「ローソンでハピろー!」というキャッチコピーを発表。50周年を迎えるプロジェクト名としても使われていたが、52年目を迎えた今年も「ハピろー!」を使い続けている。ローソンで社長を務める竹増貞信氏は、チームの一体感が生まれるポーズや掛け声になっていると週刊誌のAERA(朝日新聞出版)で語っていたが、思わぬ形で「ハピろー!」の輪が広がりを見せている。
文/池田聖人 内外タイムス編集部


