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ヘルシー料理がはやる中国の健康事情(前編)サラダが国民食になった3つの理由

中華料理は美味しいが、高カロリーで高塩分。そう思っている人も多いのではないだろうか。

実は最近の中国では、この流れが変わってきている。こちらで暮らしていると日々感じるのが「ヘルシーな中華料理が増えた」ことだ。いまSNSや出前で勢力を拡大しているのが、低脂質で塩分控えめなヘルシー中華(中式健康菜)である。

なぜ中国で健康志向が広がっているのか。今回はその流行の背景を解説する。

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流行の理由①食にまつわる需要の変遷

この流行の最も分かりやすい側面は、社会の発展によって食事へ求める本質が変化していることだ。1940年代から70年代にかけては、とにかく空腹を満たすことが唯一の目標だった。食料生産が不十分な時代であり、飢きんという言葉も身近であった。当時、多くの人々にとってご飯をお腹いっぱい食べることが最大の幸せだったのだ。

それが1978年の改革開放を機に一気に変化する。肉や魚、卵のような主菜が並び、より美味しく、より豪華にという価値観が広がった。外食産業も爆発的に成長し、油をたっぷり使った濃い味付けが豊かさの証とされた。

そして2010年代以降徐々に、中国の人々の意識は再び大きな変化を迎えた。モノがあふれる時代を経て、安全や栄養、食材本来の味が重要とされるようになったのである。

流行の理由②高齢化と生活習慣病

健康食ブームの背景として、高齢化時代の到来は欠かせない。2024年に60歳以上の人口は22%に到達し、本格的な高齢化社会を見据える段階に突入した。巨大な高齢者層が、健康製品・サービスの主要消費者となってきているのだ。

背景には生活習慣病のまん延もある。2023年までに、中国の20歳以上の糖尿病患者数は2億3300万人に達し、糖尿病を抱える人口の比率は13.7%に達した。2005年の時点から1.63倍となっていることを考えると、爆発的な増加といえる。

また、高血圧とされる人の割合も総人口の27.5%、3億人近くに達しており、現在の中国では、実に全死亡原因の80%以上が慢性病に起因していると言われている。

そして中国には「未富先老(豊かになる前の老い)」という独自の事情がある。

日本のような先進国は人口ボーナス期に富が全体に行き渡り、比較的豊かな社会を実現することができた。しかし中国はこのような先進国に比べ、所得水準が十分に上がりきる前に高齢化を迎えたという事情がある。

このため、日本に比べると医療・介護の水準は低く、費用負担も相対的に高い。そのため負担を軽減すべく、中高年層が食生活の改善によって健康管理をせざるをえない、という事情もあるのだ。

これらの事情を背景として、自分自身で健康を管理しようという意識が芽生え始めている。健康的な食事、運動、睡眠、ストレス管理を生活に必要なスキルとして身につける習慣が、徐々に広まってきているのである。

流行の理由③長引く不況と生活防衛

現在の健康食ブームは、長引く不況という側面も無視できないだろう。不確かな時代を生き抜く際のサバイバル手段という意味での健康食である。不況になれば、当然ながら財布のひもは固くなる。高級なサプリやエステ、高級ジムの会費は真っ先に削られる対象だ。そして、高いサービスを利用できなくなった人々は、自分の手間と時間を使い始める。

・外食を控え、自炊を増やす

・サプリの代わりに、旬の安い野菜を料理する

・ジムの代わりに、近所の公園を走る

不況による家計の圧迫は、余計なものを削ぎ落とした、素朴で本質的な健康習慣へと人々を回帰させている。

こうした背景を受け、今の中国のスーパーには多くのサラダが並んでいる。以前なら火を通した料理しか受け付けない人が多い中国だったが、今やサラダは国民食となっている。そして、これは単なる一時的な流行ではなく、時代に伴う人々の意識の不可逆的な変化によるものだ。

次回は、日本とは少し異なる中国のヘルシー事情と、この社会的背景を利用して業績を拡大している日本企業の姿を紹介する。

文/下川英馬 内外タイムス

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