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ターミネーターの世界は現実になるのか AIの進化と人型ロボット

ここのところ、AIという言葉を聞かない日はない。特に最近、AIの進化が人類滅亡につながると、複数のAI開発会社のトップまでが言及しだした。

一方で、中国での人型ロボットの動画などが各種メディアで紹介され、人間を超えた、などと報道されている。また、ウクライナの戦場ではドローンという無人兵器が戦い方の基本を変えている。さらに、プーチン大統領は、核兵器の使用について、脅しのような発言をたびたび行い、実際に核ミサイル使用の準備に移行しているかのような動きも見せている。

これらの「AI」「人型ロボット」「核兵器」などの言葉を目にし、耳にすると、どうしても映画「ターミネーター」の世界が現実になるのではないか、「審判の日」が近づいているのではないかと考える人が少なからずいる。

果たして、人類社会は自滅への道を歩んでいるのか。

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映画の世界と現実

ターミネーターシリーズで、特に印象深いのは、1984年に公開された「ターミネーター」、1991年公開の「ターミネーター2」、2003年公開の「ターミネーター3」だ。当時はまだAIという言葉は使われていなかった。

自律思考する全自動化コンピューターという表現で「スカイネット」が登場する。人間を自らに反対する存在として認識し、排除しようとし、抵抗勢力のリーダーの根源を断つために、未来から刺客ロボットを送るというものだ。

スカイネットが自我に目覚め、核兵器のボタンが押され、核戦争の開始、すなわち「審判の日」が来ることになる。正に、現在の多くの人が危惧しているのはこのことだろう。

映画で設定された「審判の日」は、当初1997年8月29日だった。現実には何も起こっていない。その後、未来から次々と送られてきた刺客ロボットと、それに対する人間側の抵抗によって、「審判の日」は変更されることになる。

もちろん多くの人は映画・フィクションであることは理解しているが、最近における、AIの飛躍的な進歩と、日々報じられるAIによる、他のコンピューターシステムへの侵入などから、漠然とであるが、現実的な恐怖心を持つに至っているのが現状ではないだろうか。

ソフトキルとハードキル

軍事の世界では、かなり以前から「ソフトキル」「ハードキル」という概念が認識されていた。

ソフトキルは電子機器などによって相手兵器を無力化することであり、主に電磁波によって行われる電子戦( ECM:Electronic Counter Measures)といわれるものが主体だった。

例えば、電波妨害によりレーダー画像を見えなくする、妨害電波で通信機器を無力化するなどだ。その後、軍事の世界にもコンピューターシステムが組み込まれることになってきた結果、いわゆるサイバー攻撃によるコンピューターシステムに対する攻撃もソフトキルの概念の大きな部分を占めることになる。

ただし、ソフトキルは一時的な効果である場合がほとんどであり、電子機器での対抗策(ECCM:Electronic Counter Counter Measures)や、コンピュータ上の防護策を行うことにより防御できる可能性が高い。

これに対して、ハードキルは、物理的・機械的に破壊することにより機能停止を図るものだ。

人員の殺傷は正にハードキルであり、人間の場合、生命を奪うと回復できないため、戦力の減殺に直接的に影響を与える。また、負傷した者は、戦力にとっては、救護、搬送、回復支援など、かえって負担となってしまう。

物理的、機械的に破壊された人間以外の装備、システム等も機能回復するために、物的な交換などを強制されることになり、復旧までの間、機能停止となる。

現代戦においても、ハードキルによってのみ戦闘の完遂が達せられることに変わりはない。

デジタルとアナログ

デジタル、アナログは人間が考え出した概念だ。自然現象などを表現するために、1、2、3と指折り数える事が語源の“デジタル”と、連続・比例などを語源とする“アナログ”という表現法を作り出した。

デジタル化によりコンピューター技術は飛躍的に進歩した。コンピューターは0と1という数字を使い、電気信号のONとOFFに置換することにより計算速度を早めることができる。また、ノイズや劣化にも強い性質も得ることができたのだ。

当初真空管を使用していたが、集積回路(IC)の飛躍的な発達により、高速演算により、膨大なデータを瞬時に処理することができるようになった。さらにAIは学習し自律思考する機能も持っている。画面、映像などであれば、デジタル空間で完結することになる。

しかし、物理的、機械的にシステムを動かそうとすると、自然界はアナログなため、A/D(Analog to Digital Conversion)変換をし、デジタル信号をコンピューター処理し、D/A(Digital to Analog Conversion)変換したものを機器に伝達して作動させる必要がある。

ここで、アナログとデジタルを考えるとき、理解しておくべきことがある。例えば1ミリはデジタルの世界では存在するが、アナログの世界では1ミリというものは存在しない。必ず何万分の1か何十万分の1かの誤差がある。実際には無視できることだが、計算速度が10の何10乗にもなると、デジタルとアナログの間の計算上の誤差として顕在化する可能性があるということだ。

「スカイネット+ターミネーター」から現代の「AIシステム+最新人型ロボット」への進化

ターミネーター公開当時の、世の中のコンピューターの能力は、種々の基準を勘案して、現代のコンピューターと比較すると、おおよそ6桁以上の能力差があると考えられる。スカイネットが、当時の一般的コンピューターより、2~3桁進んでいたとしても、現代の我々が知らない最新のものに比べれば、5桁すなわち10万倍以上の能力差があると考えていいだろう。現代のAIはソフトウェア空間では圧倒的な進化を遂げている。

一方、ターミネーターと最新式人型ロボットではどうだろう。映画ターミネーターでシュワちゃんこと、アーノルド・シュワルツェネッガーが扮するT-800、T-850型ロボットは、限りなくなく人間に近い形状で、強力かつ強じんだ。銃弾などにはびくともしない。さらに、小型原子炉的な動力源を持っているとされているため、長時間の作動が可能だ。

現在の最新鋭ロボットの技術水準は、人間の100メートル走世界記録を超えた、ハーフマラソンの世界記録を超えたとされているものの、人間の支援なしには動作しない。また、動力源は電池であり、稼働時間にはかなりの制限がある。ましてや、ターミネーター2に出てくる、液体金属で構成されるT-1000型などは、空想上のもので、全く実現可能性はない。

結論的に、ソフトウェア・頭脳の部分は格段の進歩を遂げているが、ハードウェア・ロボットに関しては、ターミネーター当時の想定を実現するに至っていない。現代技術の延長線上にない架空の技術ということになる。

AIというソフトウェア空間の産物は、一般の人間のごく身近に存在し、簡単に利用できる。

女子高校生でも頻繁に使用するジェミニ(Gemini)、チャッピー(ChatGPT)などについて、利用する者は、その能力の高さは十分に理解している。

人間は未知なるものに接すると「この能力が戦争に使われたらとんでもないことになるのではないか」と戸惑い、警戒心を持つ。AIについては、今まさにこの段階にあるのではないか。

過去において、人類が習得した技術を平和目的に活用し、豊かな暮らしと繁栄に役立ててきたように、AIに対しても、恐れず正確に理解しながら発展的に活用することを考えたいものだ。

文/島本順光 内外タイムス

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