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スシローが京樽を「和食さと」運営に売却 浮き彫りになった“M&Aのジレンマ”

回転ずしチェーン「スシロー」を展開するFOOD&LIFE COMPANIES(以下スシロー)は、持ち帰りずしや回転ずし店を運営する京樽の全株を、9月1日付で「和食さと」を展開するSRSホールディングスに譲渡する。スシローは2021年4月に吉野家ホールディングスから取得していたが、5年半ほどで手放す。

スシローが保有していた京樽の売却金額は37億4500万円だが、M&Aに先立ってスシローは京樽の第三者割当増資を引き受けている。この資金調達で、京樽は債務超過を解消。スシローから京樽への貸付金返済に充て、財務基盤を安定させた上で売却される。

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京樽は2025年9月期に9600万円の純利益を出したものの、2024年9月期は3億1100万円、2023年9月期は5億6000万円の最終赤字だった。スシローは京樽を吉野家から買収した際、仕入れ統合や生産性向上、商品力強化などのシナジー効果を見込んでいた。

スシローが京樽を買収した狙いの一つに、都市部への出店に強い「海鮮三崎港(現・回転寿司みさき)」の存在があった。スシローは郊外の大型店が主力であり、首都圏や関東圏に店舗網を持つ京樽の子会社化で、エリアの分散を図れる。

スシローは自社の仕入力や商品開発力、店舗運営ノウハウを京樽に生かし、収益性の改善を期待していた。しかし、2025年9月期は「回転寿司みさき」が差し引き8店舗減るなど、出店でなく閉店による収益改善を進めていた。スシローが期待していた「京樽の店舗網を再拡大させるほどの収益力」には結びつかなかったようだ。

京樽より自社ブランドを優先か

一方、好調なのが大衆寿司居酒屋の「鮨 酒 肴 杉玉」だ。このブランドは2025年9月期が8店舗の純増だった。フランチャイズ展開もしており、日本のみならず海外にも出店している。

店舗としてのスシローも、郊外型よりも一回り小さいサイズの店舗を開発し、都市圏の駅近や駅前などへの出店を強化している。2025年5月に「阪神野田駅店」、同年9月に「中野坂上店」をオープンさせた。

すでに店舗オペレーションが確立され、既存顧客や既存商品が固まっている京樽の回転ずし店でシナジー効果を創出しようと奔走するより、スシローが自前で新業態を開発し、出店を進めた方が手っ取り早いという判断だったのではないか。

M&Aの世界では、「M&Aのジレンマ」という現象がつきものだ。買収した企業の独自性や既存顧客、取引先との関係を尊重すれば、統合によるシナジーを引き出しにくい。一方、親会社の仕組みを無理に導入すれば、ブランドの持ち味を損なうほか、現場の反発や人材流出を招く恐れがある。

自社ブランドの「杉玉」であれば、スシローの調達網や商品開発力、店舗運営ノウハウを前提として、業態を柔軟に設計できる。だが、既存ブランドの買収では、ブランドの持ち味を残しながら、スシローの強みを移植しなければならない。この違いも、両ブランドの成長力に差がついた一因と考えられる。

かつては、スシローと京樽のダブルブランド店舗を立ち上げ、出店強化を試みることもあった。だが、規模の拡大は限定的だった。

スシロー自体、勢いのある会社だということも影響していそうだ。2025年10月~2026年6月の売上収益は前年同期比で約25%、営業利益は50%近く伸びている。一定のシナジー効果が生じていても、自前で店舗展開を進める方が合理的だという判断があっても不思議ではない。

異なる強みを持つ企業が手を組んでも、想定したシナジーが必ずしも利益に表れるとは限らない。M&Aの難しさを浮き彫りにした出来事だった。

文/不破聡 内外タイムス

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