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ヤマトリノが保釈金250万円で保釈 お金は戻るのか、保釈中の制限と「海外逃亡」の代償

「250万円を払えば出られるのか」「有罪になったら、お金は戻らないのか」。

麻薬取締法違反で起訴されたインフルエンサーの「ヤマトリノ」こと田澤梨乃被告が20日、保釈保証金(以下「保釈金」という)250万円を納付して保釈されたと報じられた。東京地裁は16日の保釈請求を受け、20日に保釈を認めたという。

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保釈は、有罪・無罪を決める判断ではない。有罪が確定するまでは無罪と推定されるという原則を踏まえ、保釈金と保釈中のルールを整理したい。

没取される事情がなければ有罪でも返還

保釈は、起訴後に勾留されている被告人について、保釈金の納付などを条件に身体の拘束を解く制度だ。まず裁判所が保釈を認める必要があり、お金さえ用意すれば誰でも出られるわけではない。

金額も裁判所が決める。刑事訴訟法93条は、犯罪の性質や情状、証拠の証明力、被告人の性格や資産を考慮し、出頭を確保するのに相当な金額とするよう定めている。

資産が多い人には、少額を失っても逃亡を思いとどまる効果が乏しい場合がある。そのため高額になることはあり得るが、財産に一定割合を掛ける仕組みではない。250万円という金額だけで、事件の重さや本人の資産を読み取ることもできない。

保釈金は、罰金や被害者への賠償金とは別だ。没取される事情がなければ、有罪でも返還される。実刑になったという理由だけで、国に取られるものでもない。

返還の時期は一律ではない。無罪や刑の全部の執行猶予の判決などによって勾留状が効力を失った場合や、実刑判決により保釈が失効して刑事施設に収容された場合などに、没取されなかった保釈金が還付される。「判決が出たら、その場で必ず全額戻る」とは限らないのである。

保釈金を用意できない人には立替制度も

保釈を認められても、まとまったお金を用意できないことがある。選択肢の一つが、日本保釈支援協会の立替制度だ。

同協会では、家族や友人などが申込人となり、審査を経て保釈金の立替を受ける。被告人本人は申込人になれず、審査によっては一部の自己資金を求められる。利用には手数料なども必要で、希望すれば必ず全額を立て替えてもらえる制度ではない。

注意したいのは、保釈金が戻ることと、利用費用が戻ることは別だという点である。返還された立替分は協会への返済に充てられ、手数料などの負担は残る。保釈金が没取された場合には、申込人が立替金相当額を負担することになる。

家族が申し込む場合も、単に名前を貸す感覚で利用すべきではない。利用期間や延長時の費用、没取時の責任まで確認する必要がある。なお、田澤被告がこの制度を利用したかは、確認できていない。

仕事やSNS、交際相手との連絡は自由なのか

保釈されても、逮捕前と全く同じ生活に戻れるとは限らない。裁判所は、住居を指定し、転居や一定の旅行・外泊に許可を求めたり、事件関係者との接触を禁止したりする条件を付けることがある。

今回も、薬物の所持・使用が問題となっている事件の性質を踏まえれば、住居や事件関係者との連絡について、一定の制限が付されている可能性は高いと考えられる。ただし、これは一般的な実務からの見立てであり、確認した報道では具体的な条件は明らかにされていない。

接触禁止は、直接会う場合だけの問題ではない。条件によっては、電話やLINE、SNSのメッセージ、第三者を介した伝言も対象となる。交際相手であっても、接触禁止の対象に指定されていれば、自由に連絡できるとは限らない。

仕事やSNSの再開も、個別の条件を確認する必要がある。SNSを使った関係者との連絡などが制限されている可能性はあるが、利用全般が禁止されているとまでは断定できない。公開投稿でも、供述への働きかけや口裏合わせにつながれば、証拠隠滅との関係が問題になる。

筆者の弁護実務の経験では、保釈条件が十分に守られていない例も少なくない。条件を設定することと、実際の順守を確認することには隔たりがある。

もっとも、違反すれば必ず直ちに保釈取消し・保釈金の全額没取となるわけではない。違反の内容や事情によって判断され、取消しに伴って全部または一部を没取する場合がある。本人の判断で条件を軽く扱わず、行動する前に弁護人へ確認し、必要な許可や条件変更を求めることが重要だ。

ゴーン事件――「保釈金を諦めれば逃げられる」ではない

金銭による逃亡防止の限界を示したのが、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の事件だ。2019年12月、海外渡航禁止などの条件に反して日本を出国し、レバノンへ逃亡。保釈は取り消され、計15億円の保釈金が没取された。

しかし、没取は逃亡の「料金」ではない。お金を失っても、起訴された事件の刑事責任が清算されるわけではない。

さらに、当時と現在では制度も異なる。2023年11月15日には、公判期日への不出頭などを処罰する規定が施行された。

現在、保釈中の被告人が召喚を受け、正当な理由なく公判期日に出頭しなければ、2年以下の拘禁刑の対象となる。また、裁判所の許可なく指定期間を超えて制限住居を離れてはならないという条件を付され、許可も正当な理由もなく期限までに戻らない場合などにも、同様の罰則がある。

あらゆる条件違反が直ちに犯罪になるわけではないが、要件を満たせば、元の事件とは別に処罰され得る。なお、新しい罰則を、施行前のゴーン被告の行為にさかのぼって適用することはできない。

保釈は、裁判への出頭などを確保しながら、被告人が社会生活を送り、防御の準備をするための制度だ。保釈金は刑罰の代金でも、条件を無視するための代金でもない。その意味を理解することが、保釈報道を冷静に読む第一歩になる。

文/松本理平 内外タイムス

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