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日本がトランプ氏に抱く最大の懸念とは 安全保障をめぐる対中譲歩の危険性

トランプ政権下の日米関係を考えるうえで、日本にとって大きな懸念の一つが、米国が中国との関係改善や経済的な利益を優先し、安全保障上の重要問題で中国に譲歩することである。特に焦点となるのが台湾問題である。

日本と米国は、中国による軍事力の増強や東シナ海・南シナ海での活動などを共通の安全保障上の課題として認識している。日米同盟は日本の外交・安全保障政策の基軸であり、米国のインド太平洋における軍事的プレゼンスは、日本周辺の抑止力を支える重要な要素となっている。

その一方、トランプ氏の外交政策には、同盟国との関係を維持するだけでなく、米国にとって具体的な利益を確保するという「アメリカ・ファースト」の考え方が強く表れている。貿易赤字の削減、米国への投資拡大、重要鉱物やエネルギーなどの安定確保といった経済的利益は、米中関係を考える際にも重要な要素となる。

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ここで問題になるのが、米中関係が一定程度安定すること自体は日本にとって必ずしも悪いことではないという点である。米中間の緊張が高まり続ければ、貿易やサプライチェーンが混乱し、台湾海峡などで軍事的緊張が高まる可能性もある。したがって、日本としても米中間の対話や緊張緩和には一定の意義がある。

しかし、日本が警戒するのは、米中関係の安定化のために、安全保障上の問題まで取引材料になることである。例えば、中国との経済交渉を進めるために台湾への武器供与や米国の台湾政策が調整されたり、台湾海峡の現状変更に対する米国の姿勢があいまいになったりすれば、日本にとっては重大な意味を持つ。なぜなら、台湾は日本から地理的に近く、台湾海峡の安定は日本の安全保障や経済活動とも無関係ではないからである。台湾有事が発生した場合、日本が直接攻撃を受けるかどうかだけでなく、南西諸島、在日米軍基地、海上交通、エネルギーや物流など、幅広い分野への影響が想定される。戦略国際問題研究所(CSIS)も、台湾海峡での紛争は日本を含む地域の安全保障や世界経済に大きな影響を及ぼし得ると指摘している。

さらに重要なのは、米国が中国に対してどの程度の抑止力を維持するかという問題である。米国が台湾や東アジアに対する関与を弱めれば、中国側が米国の関与に対する認識を変える可能性がある。その結果、中国が台湾周辺や東シナ海でより積極的な行動を取りやすくなるとの懸念につながる。

米の台湾、東アジアの安保政策が重要

もっとも、「トランプ政権が中国に譲歩する」と単純に決めつけることも適切ではない。トランプ政権にとって中国は経済面でも安全保障面でも競争相手であり、重要技術やサプライチェーン、経済安全保障をめぐる対立も続いている。実際、米国と日本の間でも中国を念頭に置いた経済安全保障や重要技術、重要鉱物などでの協力が進められている。

つまり、日本が警戒しているのは、米国と中国が対話することそのものではない。問題は、米中間の取引が日本や台湾など、米国の同盟国・パートナーの安全保障に影響を及ぼす形で行われることである。

トランプ政権下の日米関係を理解するうえでは、米国が中国に対して強硬なのか融和的なのかという単純な二択では捉えきれない。経済では中国との取引を模索しながら、安全保障では中国への抑止を維持するという、複雑な政策運営になる可能性があるからである。

日本にとって重要なのは、その二つの政策の間でどこに線が引かれるのかを見極めることである。米中関係が安定的に管理されることと、日米同盟の抑止力が維持されることは、本来両立し得る。しかし、もし米中間の経済的な合意を優先するあまり、台湾や東アジアの安全保障が交渉材料となれば、日本にとっては看過できない問題となる。これこそが、トランプ政権下の日米関係で日本が抱える対中譲歩への懸念なのである。

文/和田大樹 内外タイムス

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