#28 織田邦男「ウクライナ戦争の教訓に学べ」

ウクライナ戦争の教訓に学べ 麗澤大学特別教授 元空将 織田邦男

 戦争を起こすのは簡単だが、戦争を終わらせるのは何倍も難しい。ウクライナ戦争は開戦以来3年余り経つが、出口は見えない。

 8月17日、18日とトランプ米大統領はプーチン露大統領、ゼレンスキー宇大統領と相次いで会談した。だが和平どころか停戦合意も難しいようだ。

 日本は戦争を放棄しており、日本から他国に戦争を仕かけることはない。しかしながら、戦争を仕かけられることはありうる。平和を守るためには、日本に戦争を仕かけさせないようにする。これが「抑止」である。

 抑止を機能させるには、侵略を受けても、これを阻止する能力と意志を持っておくことである。だがこれだけでは足りない。相手に我々の能力と意志を理解させておくことが重要なのだ。

 ウクライナは軍事大国ロシアを相手に3年余り頑強に戦っている。この能力と意志を事前にプーチン氏に理解させていれば、プーチン氏は戦争を仕かけなかっただろう。プーチン氏は数週間でウクライナを攻略できると誤解していた。

 ゼレンスキー氏は、今は戦時リーダーとして獅子奮迅の働きをしている。だが頑強に抵抗する意思と能力をプーチン氏に事前に理解させ、戦争を抑止することに失敗した。露軍侵略の兆候があっても、戦争準備を怠り、プーチン氏を誤解させた責任は重い。国家総動員令をかけたのが開戦2日前だったことからも分かる。我々は同じ轍を踏んではならない。

 2023年6月、習近平中国国家主席は就任後初めて「琉球」に言及した。その後、沖縄の帰属は「未解決」とし、中国に領有権があるかのような論文が次々と人民日報に掲載された。我々は台湾攻略後の沖縄侵略の布石と警戒してみておかねばならない。

 日本は、防衛力強化を推進し、実戦的訓練を実施している姿を公開し、日本にちょっかいを出すととんでもないことになると理解させねばならない。これが抑止に繋がる。平和ボケした対応をして、プーチン氏に簡単に侵略できると誤解させたゼレンスキー氏の過ちを繰り返してはならない。

 沖縄や尖閣を盗ろうという邪な誘惑にかられる国の出現を阻止しなければならない。「汝、平和を欲するなら戦争を準備せよ」とローマ帝国時代の箴言がある。平和は宣言しても、願っても、千羽鶴を折ってもやってこない。平和は自らの努力で勝ち取るものである。戦争が起こってからでは遅い。ウクライナ戦争の貴重な教訓に学ばねばならない。

おりた・くにお 昭和27年愛媛県生まれ。昭和49年防衛大学校卒業(18期)、航空自衛隊に入隊、F4戦闘機操縦者として第6航空団(小松)に勤務。第301飛行隊長(新田原)、第6航空団司令、航空幕僚監部防衛部長を経て航空支援集団司令官を最後に退官。米国空軍大学留学、スタンフォード大学客員研究員。退官後東洋学園大学客員教授を経て、令和4年から現職、元空将。令和4年、瑞宝中綬章を受章。令和4年より産経新聞「正論」執筆メンバー。第38回正論大賞を受賞。

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