日本人の死因1位「がん」はどこまで治せるか 免疫療法とAI創薬で広がる治療の可能性
7月23日、作家の東野圭吾さんが大腸がんのため亡くなった。そして、俳優の中村ゆりさんが直腸がんのため9月1日に亡くなったことを所属事務所が発表した。
「直腸がん」を含む「大腸がん」は早期発見が重要だが、年間15万4000人以上が発症し(2023年)、日本人がもっともかかりやすいがんだ。2位は肺がん、3位は胃がんとなっている。そして、大腸がんの診断数は、48年間で約8.5倍に増えている。決定的な医学的根拠が解明されたわけではないが、食生活の欧米化や野菜を食べる量が減っていると指摘されている。
日本の「男女平等」レベルは世界で117位、先進国とは思えないほどの低さ
早期は自覚症状がなく、進行すると血便・下血・貧血・便秘・腸閉塞を起こしやすくなり、40歳を過ぎると罹患(りかん)率が増える。生涯で罹患するリスクは、男性が10人に1人、女性は13人に1人だ。5年生存率はステージ1だと92.3%なのだが、大腸がん検診受診率は41.5%(40歳以上、2022年)とまだまだ低い。
がんは、かつては不治の病といわれ、日本では40年以上も死因の1位になっているが、早期発見すればかなり高い確率で治ることがわかる。そして、今は免疫力をいかした治療やAIを活用した新薬開発など、新たながん治療の可能性も広がっている。
がんに対する治療法は、これまで主に3つだった。がんを直接取り除く手術、ピンポイントで攻撃する放射線治療、薬を使った抗がん剤治療。そして今、新たな治療法として注目されているのが、免疫の力を利用してがんを攻撃する「免疫療法」だ。人間の体に備わる免疫力を高めたり、がん細胞が免疫にかけるブレーキを外したりして、がんを攻撃する治療法である。
ただ、免疫療法は誰にでも同じように効果がでるわけではない。まだまだ研究中といえるだろう。治療法や薬ごとにがんの種類も限られているものの、保険診療(公的医療保険)で受けることができるものもある。
3大治療に加わる“新たな選択肢”
AIもがんを克服するための新たな一手として期待されている。NHKスペシャル「シリーズ 病への挑戦 第1集 がんはどこまで治せるか」によれば、ドイツでは、AIを使ってオーダーメードの薬を作り出す研究が始まっているという。
これは「個別化がんワクチン」と呼ばれ、免疫ががんを攻撃する際に頼りにする、がん細胞特有の特殊なタンパク質のかけら、いわば「目印」をAIが患者ごとに解析し、薬を作るというものだ。日本でこの薬を開発しているのは大手IT企業。創薬には患者の背景にある膨大な情報を解析して、かつ免疫の特徴なども計算する必要があり、その部分をAIが担うというわけだ。
AI活用で新薬開発にかかる時間が大幅に短縮される可能性も出てきた。中国・上海にあるバイオベンチャー企業の研究所では、AIが導き出した薬の候補をロボットが絶え間なく検証している。この会社ではAIが設計したがん治療薬の候補がすでに4種類、患者を対象とした治験へと進んでいる。動物実験にいたるまで15年ほどかかっていた新薬の開発が最短9カ月まで短縮できるという。
がんを克服する未来が確実に近づいているのはわかるが、今はとにかく、毎年がん検診を受けたほうがよい。
文/横山渉 内外タイムス






