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風俗店は女性を守る「ファイアウォール」なのか 売春防止法見直しで考える“店の4割”の意味

売春防止法の見直しを機に、セックスワークのあり方にも関心が向けられている。買う側の罰則を強化するという意味合いが強いが、そうすると客離れが起き、店が立ち行かなくなり、産業が地下化するという意見もある。そんななか、女性と客の間に立ち、トラブル対応から生活相談まで担う店員は、女性を守る「ファイアウォール」である一方、その役割は店の利益とどう結び付いているのか。現役デリヘル店長と女性たちの証言から実態を追った。(内外タイムス・畑中雄也)

売春防止法に「買う側」への罰則を盛り込む動きも「法改正」に賛否

風俗店でトラブルを起こすと怖い人が出てくるという都市伝説

ホテルの一室で、半裸の男が女性の前に土下座し、泣きながら「警察には通報しないでほしい」と懇願していた。テーブルの上には、スマートフォンの充電器に似せた小型カメラが置かれていた。カメラには女性がサービスする様子が映っており、盗撮を確認できた。

連絡を受けて駆け付けたのは、女性が働くデリヘル店の店長だった。男の言葉を聞きながら、「この手の人間が反省するのと、太陽が西から昇ったのは見たことがない」と内心、鼻で笑ったという。そのまま警察に通報し男を引き渡した。

女性も店側も警察から事情を聞かれ、その日の仕事は続けられなくなった。後日、女性は男から数十万円の示談金を受け取ったが、店側への支払いはなかった。

店長によると、トラブルは世間でイメージされるほど多くはないものの、なくなることもないという。「風俗店でトラブルを起こすと怖い人が出てくる、という都市伝説のような話があるじゃないですか。良くも悪くも、あのイメージが抑止力になっているのかもしれません」と苦笑いした。

売り上げの取り分は、基本的に女性が6割、店が4割。「何にもしないで4割も持っていくなんてひどい!」と女性からなじられたこともあるという。

店長は「開業資金を出した『金主』への利益の分配や、車のガソリン代、家賃などを払った上で、キャストのメンタルケアから何から何まで請け負っている。むちゃくちゃな給率ではないと思う」と反論する。

「自分の彼女にだってここまでやさしくしませんよ」

交際相手との関係に悩み、仕事を休みがちになった女性には、一晩中付き合って話を聞いた。体調を崩したと連絡があれば、胃腸にやさしい食べ物やスポーツドリンク、アイスクリームを差し入れる。「自分の彼女にだって、ここまで優しくしませんよ」と店長は笑う。

もっとも、すべての女性に同じように接するわけではない。手厚くケアするのは、売り上げ上位の女性に限られる。別の店で働く売り上げの低い女性も、「売れっ子はチヤホヤされるけど、私のような売れない人間は、ほぼ声も掛けられない」と話していた。女性を支えるケアには、売れっ子に働き続けてもらうための営業という側面もある。そこには保護と利益の両方が存在する。だから、店という「ファイアウォール」は確かに存在する。ただ、その「性能」は女性の売り上げによって変わるだけだ。

個人で売春をしていた別の女性は、当初「店とは違い、10割全部自分に入る」と話していた。しかし、客に暴力を振るわれ、金を奪われることが続くと安全を求めて店に戻った。

収入のすべてを手にする働き方は確かに魅力的だった。「店の取り分は安全のコストだったんだなって、今は思います」と振り返る。トラブルの際に間へ入る人がいる働き方は、ストレスが少ないという。

デリヘルの営業と、売春防止法が定義する売春は、法律上は別のものだ。それでも、個人で売春していた女性が安全を求めて店に戻ったように、一人の女性がその境界をまたぐことはある。法律が行為を区分しても、盗撮や暴力にさらされる危険は途切れない。

売春防止法の見直しは、売春をどう規制するかだけでなく、セックスワークの現場で誰が女性の安全を支えているのかを考える契機にもなる。店の有無や売り上げに左右されず、女性が助けを求められる仕組みをどうつくるか。この問いを、見直しの議論の外に置いたままにはできないだろう。

文/畑中雄也 内外タイムス

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