高市政権の“地域未来戦略”は高く評価すべき 輸出額で日本を抜いたイタリアに学べ
高市政権の経済政策というと財政出動と消費税減税ばかりが注目を浴びるが、それらより高く評価できる政策が既に講じられているのをご存知だろうか。“地域未来戦略”という地方活性化策である。
そもそも日本経済の最大の問題は、”失われた30年”の間に経済の生産性が低下し、その結果として潜在成長率が大きく低下してしまったことにある。従って、日本経済の復活に向け、重点17分野の産業に政府主導で重点的に投資して成長産業を創出し、経済全体の生産性を向上させようという高市早苗首相の方針は基本的に正しいと言える。
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ただ、逆に言えばそれだけでは不十分である。官の投資で成長産業を作り出すのには失敗のリスクが大きいのもさることながら、大企業の生産性は海外と比較して遜色ない一方で、地方の中小企業(特にサービス業)の生産性が非常に低いという現実を踏まえると、地方経済の生産性の引き上げが不可欠なのである。
“地域未来戦略”はまさにこの部分を後押ししようとしており、内容的にも非常に良く出来ていると評価できる。地方経済の活性化に向けて国・都道府県・市町村という三段階にわたって計画が作られることになる。
まず国がブロック(関東、関西など)ごとに、重点17分野のどの産業、およびその他の産業で活性化するかを示し、それを受け、各都道府県が具体的にそれらの産業をどう地元に根付かせて成長させるかを示す。この二つの段階は、これまでの政府の地方活性化策によくあるパターンであり、個人的にはあまり高く評価していない。
ただ、重要なのはその次である。三段階目として市町村が計画を作るのだが、そこでは重点17分野にとらわれず、“地場産業の強化”に向けた計画を自由に策定できるのである。ちなみに、これは全市町村の義務ではなく、やる気のある市町村が策定することとなっており、それに応じて政府の財政支援もある。
つまり、地方の地場産業の担い手は中小企業であることを考えると、ここで市町村が地元の強みとなり得る地場産業を正しく選び、その強化に向けた戦略的なプランを正しく策定できれば、地元の中小企業、そして地域経済の生産性の向上が期待できるのである。
なぜイタリアの地方経済は強いのか
もちろん言うは易しで、実際に市町村が正しい計画を策定できるか分からない。ただ、逆に言えば、地方自治体が正しい対応をすれば地域経済、そして地元の中小企業の生産性を大きく上げられるのである。それは海外の実例が証明しているので、参考までに紹介しておこう。
読者の皆さんは、昨年下半期の世界の国の輸出額ランキングで、50年ぶりに日本がイタリアに抜かれたことをご存じだろうか。為替レートが大幅な円安となった影響が大きいのはもちろんだが、それだけで片付けてはダメだ。
イタリアには日本と違って輸出に強い大企業が非常に少ない。それでも輸出額で日本を抜いたのは、イタリアでは地域ごとに強い産業が存在するからである(食料品、服飾、医薬品、電子部品、家具など多種多様)。
それらの産業は地元の中小企業によって構成されているが、それらが正しい形でクラスターを形成して競争力を高め、地元の自治体や経済団体などと共に独自に輸出振興に取り組んできた。その結果として、イタリア全体では地域ごとに強い産業の輸出額の合わせ技一本で、日本の輸出を追い抜いたのである。
日本でも政府が主導して地方の中小企業のクラスター化に取り組んできたが、これまでイタリアのようにうまくいった例は多くない。その理由は、社会・行政・産業の水平構造と垂直構造の違いではないかと個人的には考えている。
詳しく説明すると長くなるので簡単に言うと、イタリアはローマ時代の都市国家以来の伝統で地方は反中央で、行政も産業も水平構造で地方は独立心と団結心に富んでいるのに対し、日本では行政も産業も明治以来ずっと垂直構造が続いているため、地方ほど上から指示と予算が落ちてくるのを待つのが当たり前になり、自分で考えて行動するのが苦手になってしまったのである。
日本の地方が正しい活性化を実現するチャンス
ただ、イタリアの地方に出来て日本の地方に出来ないはずがない。
正直言って政府のこれまでの“地方創生”の取り組みは、地方経済の生産性の向上をメーンのターゲットにしたものではなかった。高市政権でそれが放棄され、“地域未来戦略”という正しい政策になったのは、地方にとってもやり方を転換する大きなチャンスである。
多くの市町村がやる気になり、正しいアプローチで地元の本当にポテンシャルある地場産業の強化に取り組むようになることを期待したい。
文/岸博幸 内外タイムス






