EMRIP第19会期が開催された国連欧州本部の会場 =7月、スイス・ジュネーブ

#13 国連EMRIP19総括 沖縄で知られなかった 国連の攻防 問われる勧告の公正性 特派員が総括

 【ジュネーブ】7月中旬にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた国連人権理事会「先住民族の権利に関する専門家メカニズム(EMRIP)第19会期」では、県内ではほとんど報じられない国連勧告の公正性や情報収集のあり方を問う激しい論戦の舞台となった。会期中、現地では「沖縄県民は先住民族か」を巡り、日本政府や沖縄の地方議員と、琉球民族を自称する非政府組織(NGO)などが真っ向から対立した。

 EMRIP19は7月13日から17日まで、スイス・ジュネーブのパレ・デ・ナシオン(万国宮)内にある総会議場を中心に開催。一部のサイドイベントやワークショップは同施設内の会議室などで分散して行われた。本紙では、沖縄県民のアイデンティティや安全保障を揺るがしかねない同問題と、ジュネーブの国連本部で繰り広げられる活動の模様をシリーズで報告している。今回は第19会期における最終稿、第13弾となる。

 これまで国連では、沖縄を先住民族とみなす勧告が繰り返されてきた経緯がある。今回の会議で日本政府は「沖縄県民は他の日本国民と等しく権利を保障されており、先住民族とは認識していない」と明確に反対意見を表明。また石垣市や糸満市、豊見城市などの地方議員らも登壇し、沖縄を先住民族とする国連勧告の撤回を求める決議が地元議会で採択されている実態を挙げ、「民主的に選ばれた地方議会の意思を無視すべきではない」と強く訴えた。
 そのなかで「勧告を出す前に現地で十分な事実確認を行うべきだ」という主張があり、EMRIPの専門家からも、「先住民族宣言は画一的に適用されるものではなく、各国や地域の事情を踏まえる必要がある」と述べ、国際的な枠組みを一律に当てはめる考え方を否定。沖縄問題にも重要な示唆を与えたことから特に注目された発言となった。
 一方で、琉球民族独立総合研究学会(ACSILs)などは、基地問題やPFAS問題、住民投票、自己決定権を「先住民族の権利」の問題として位置付け、国連文書への反映を要求。会場では、日本政府の説明を「歴史認識や統計が誤っている」と批判する発言もあり、双方の主張は最後まで平行線をたどった。

【現地記者が総括】問われる審査の公平性と国連の信頼
 今回の会期取材を通じて浮かび上がったのは、沖縄問題だけではない。国連の情報収集や審査の在り方そのものへの疑問だった。
 現地では、地方議会の決議や政府見解を十分に反映しないまま議論が進められているとの批判が相次ぎ、「一部NGOの主張だけが国際社会へ発信される構図では、公平性が保てない」との懸念も示された。サイドイベントでも、「地域の民主的プロセスを経た代表者の声を重視すべきだ」との問題提起が行われている。
 さらに象徴的だったのは、取材現場での圧迫運動だ。EMRIPを正式に取材していた本紙特派員が発言者への撮影許可を求めた際、一部関係者から激しく拒絶された。その上で「記者ではない」と、事実と異なる通報を受けて国連のメディア承認が一時無効とされる事態が発生した。その後の国連事務局などによる調査の結果、取材活動に問題は認められず、適正性が認められて入館証は復活した。異なる立場の報道、意に沿わない報道を排除しようとする動きがあったとすれば、人権を掲げる国連の場、国連の理念として看過できない出来事だった。
 EMRIP第19会期を通じて見えたのは、「沖縄は先住民族か」という単純な二項対立ではない。誰が沖縄を代表するのか、国連はどの情報を基に勧告を行うのか――という国際機関の信頼性に関わる問題である。
 国連は今後、加盟国との連携強化を提案しているが、それならばなおさら、国際機関としての信頼を維持するために勧告の前提となる事実確認を徹底し、現地調査を行い、その上で多様な立場から直接聞き取りを実施すべきではないだろうか。民主的に選ばれた地方議会、政府、賛否双方の市民団体など、幅広い当事者の声を公平に反映することが信頼を維持する唯一の道だといえる。
 沖縄を巡る論争は、いま国連自身の説明責任と公正性を強く問うている。 (ジュネーブ特派員 吉岡綾子)

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