上場企業をさらに手厚く保護 自民PTの「アクティビスト対策」は正しいか
自民党のプロジェクトチーム(自民PT)が、物言う株主(アクティビスト)らの活動を制限する提言案を17日に示した。臨時株主総会を行う条件を引き上げたり、株主提案を行える条件を総発行株数の1%にしたりと、上場企業に対する保護を手厚くする方針だ。
国内屈指のアクティビストである村上ファンドに限らず、オアシス・マネジメント、ダルトン、ブラックロックなど、海外の大手投資会社やファンドなどは、近年になって明らかに日本での活動を活発化させている。「大量保有報告書」を提出してまもなく、経営陣との面会を要求したり、臨時株主総会の提案を実施するケースもしばしば見かける。
「いよぎん株主阿鼻叫喚ホールディングス」に商号変更するよう異例の株主提案、単なる詭弁と片付けられない理由
確かに臨時株主総会の開催は、会社にとっても経営陣にとっても負担のかかる作業である。開催自体を拒否できないのは定時株主総会と一緒だが、臨時株主総会は要求されてから8週間以内に必ず開催しなければいけないからだ。
ましてや、開催を要求してきたのが新顔の株主であり、経営陣の刷新や方針の転換などを要求してきたのであれば、そのプレッシャーは想像を絶するものになる。
だが、上場企業になるという道を選択した以上、このような危険にさらされるのは承知の上でなければいけない。現状、東証への上場は会社の信頼度を高められる最高の手段であり、資金調達も容易になる。創業者ら一部大株主は上場日までにばく大な現金を獲得でき、10世代先まで食いっぱぐれない家族を築くことだって可能だ。
既に厚遇されている上場企業に対し、法律でさらに手厚い保護をかけるのは、健全なルール整備とは言い難い。ファンドに会社をかき回されることを回避するのであれば、対象の上場企業が率先して様々な買収防衛策を取れば良いだけである。極端な話、ある程度資金を調達できた、名前が売れたと判断できた時点で、MBOによる株式非公開化をすることもできる。
「物言う株主は悪」という古い考え
自民党内で行われた6月の会合では「物言う株主が短期的利益を求めることで、企業の長期的成長に影響を与える」とも指摘された。だが、アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)が指摘しなければ、新宿の高層ビルに「社長の娘のダンススタジオ」があるなんて分からなかっただろうし、オアシスがいなければKADOKAWA元従業員からの生の声を聞くこともできなかった。2020年に開催した東芝の株主総会が「企業倫理に反している」と指摘できたのも、ファンドからの提案があったからこそである。
どちらかと言うと、短期的利益を求めているのは個人株主、とりわけ「イナゴ」と揶揄(やゆ)される株主に多くみられる。ひとたびアクティビストらによる「大量保有報告書」が出てくると、早ければ情報発信が行われた直後に、短期的利益を求めて株の購入に一部の投資家が殺到する。
しかし、殺到が数十分で落ち着いて株価が急落すれば、特定企業に群がった新顔の株主たちはすぐに去る。そのまま高値を維持したとしても、数日で売り抜ける個人投資家は少なくない。もしもこのような売買を念頭に前述の指摘をしたのであれば、まずは個人株主の株式売買を規制しなければいけなくなってしまう。
確かにアクティビストがきっかけになった「怪しい取引」は実例がいくつもあるが、違法性が指摘されたケース、第三者が不利益をこうむったなどのケースは多くない。インサイダー取引のような明確な利益誘導があれば厳しく罰するべきだが、今回の提言がそのまま法律に盛り込まれれば、国際競争力の向上や海外マネーの呼び込みのような従来の施策に、自らブレーキをかけることになりかねない。
これまでは「上場企業同士の株式持ち合い」など、日本特有のなれ合い文化も問題になっていた。アクティビストを悪者にするのは簡単だが、健全な株式市場や企業活動をするのであれば何が必要なのか、もう少し詰めた議論が必要だ。
文/池田聖人 内外タイムス編集部






