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万引きしたコンビニ弁当を店内トイレで完食⋯大胆な窃盗犯の酒癖と家庭環境【裁判傍聴記】

定刻となり、被告人の男性が入廷してきた。

グリーンの刑務服のショートパンツにオーバーサイズのTシャツ。シャツの裾がまるでワンピースのように、歩調に合わせてなびいている。そこからのぞく、両腕・両足に彫られた和柄の刺青に視線が吸い寄せられる。

金髪に染められた頭頂部では、黒の地毛が大きくその面積を広げつつあった。

刺青は頭部にも彫られており、うなじの辺りからも刺青の一部がのぞいている。頬に残るニキビ跡が、どこかあどけない印象を映し出していた。

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同じ日に弁当6点を万引き

平成10年に大阪府で出生した被告人は、現在無職で愛知県名古屋市の知人宅で生活していた。

令和8年5月6日、知人宅で飲酒をしていた被告人は空腹感に誘われ、名古屋市昭和区のコンビニエンスストアへと向かった。店内で鶏そぼろ弁当等5点をバッグに隠すと、トイレへと入っていった。

彼はそのまま、温めもされていない弁当をトイレ内で食べると、その容器をトイレに放置して店を出た。

その後、店員が残されていた弁当容器を発見し、在庫と照らし合わせたところ、それが未会計の商品であることに気づき、事件が発覚した。

被告人は同店舗において、同日中に同じ手口で弁当等6点を万引きし、その際に店員の通報により駆けつけた警察官の手によって緊急逮捕された。

弁護士の質問に乾いた声で「はい」

証言台前の椅子に背筋を伸ばして座る被告人へ、弁護士が優しい声色で問いかける。

「前にも2回、万引きでの前科と前歴がありますよね?その時も、酔っ払ってやっちゃったのかな?」

「はい」

被告人の落ち着いた歯切れの良い声が法廷に響く。

「お酒をよく飲むみたいだけれど、まずいんじゃない?気をつけられる?」

「はい」

弁護士からの質問に対し、間髪入れずに被告人は答えていったが、その声はある質問を受けた瞬間に止まった。

「仕事は今後どうする予定なのかな?」

「そうですね⋯」

それ以上言葉が続かない様子の被告人に、弁護士が重ねる。

「ハローワークに行ったりとか、求人情報誌を見て仕事を探していくってことでいいかな?」

それは質問というよりも、適切な答えに導いている風にも聞こえた。

「はい」

被告人が乾いた声で答える。

頼れる人おらず更生保護施設に入る予定

現在、被告人の実家では義父が暮らしており、折り合いが良くないため実家には戻れないのだという。

母親はすでに他界しており、周囲には頼れる人や監督者も居ない。その事実は彼の今の生活にどれほどの影響を与えているのだろうか。

今後は更生保護施設に入り、生活を立て直していく予定だと彼は語った。

「万引きをしてしまったってことなんだけれど。なんでトイレで食べたの?」

その検察官からの質問に、被告人はいささかばかり歯切れが悪く答えた。

「お酒を飲んでいて、気が大きくなってしまいました。あと、バレないと思ったからです」

それを受けた検察官は、「ふうん」という吐息とも相づちともとれるうなり声を漏らした。

犯行に至った経緯について「酒に酔っていた」と語る被告人に対し、検察は厳しい言葉を突きつける。

「簡単に言うと、酒癖が悪いってこと?」

「はい」

弁護士の柔らかい口調とは対照的な検察官の厳しい言葉には、生徒指導教諭を思わせる熱がどことなく漂っているように感じた。

「保護会(更生保護施設)に入るってことだったけれど。どういうところか知ってる?」

「詳しくは、分からないです」

そう答える被告人に、検察官は問いかけた。

「厳しいところですよ。ルールを守れないと暮らしていけないと思います。それでも大丈夫ですか?」

「はい」

幾度となく繰り返されたその返事には、どんな感情が込められていたのか。被告人の背中越しにはうかがい知れない。

最終陳述で最後に言いたいことを問われると、彼は変わらぬ口調で静かに答えた。

「なにもありません」

検察側は監督者が居ないことや前科前歴を踏まえ、拘禁刑1年を求刑し、弁護側は執行猶予付きの寛大な判決を求めた。

裁判中、今後は犯行のきっかけとなった酒をやめ、再犯を防ぐと彼は誓った。また、万引きした弁当等、計11点の被害弁償はすでにされているということだったが、知人から金を借りてのものだった。

万引きした商品をトイレで食べるという犯行に及んだその大胆さを、他の方向へと生かせれば言うことはない。本公判がそうしたきっかけにつながることを祈らずにはいられない。

判決公判は8月12日、名古屋地方裁判所602号法廷で行われる。

文/桑原怜史 内外タイムス

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