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第1子が娘の父親、男女平等に前向きか 「ファースト・ドーター効果」の大規模調査で「女系天皇」の支持も明らかに

第1子が娘の父親は、第1子が息子の父親よりも、男女平等に前向きな態度を示しやすい――。このような傾向が、マカオ大学の千葉大奈准教授(国際関係論)と早稲田大学の尾野嘉邦教授(政治学)による調査で明らかになった。研究成果は2026年6月12日付で世論研究学術誌「Public Opinion Quarterly」に掲載された。

(https://doi.org/10.1093/poq/nfag040|doi.org/10.1093/poq/nfag040)

子どもは親から価値観を受け継ぐと考えられがちだが、逆に子どもを育てる経験が、親の政治意識を変えることもあるのか。日本の父親を対象に、第1子が娘であることが男女平等に関する意識と関係するかを分析した。

研究チームが注目したのは、「ファースト・ドーター効果」と呼ばれる現象だ。これは、第1子が娘の父親は、第1子が息子の父親よりも、男女平等に前向きな態度を示しやすいという考え方を指す。欧米では、娘を持つ父親が伝統的な性別役割分業に批判的になったり、男女平等政策を支持しやすくなったりするとの研究がある。

一方、欧米以外の地域では異なる結果も報告されており、日本のように男女格差が根強く残る非西洋社会でも同じ傾向がみられるかは、十分に分かっていなかった。

日本は、民主主義制度が定着し、経済も高度に発展している一方で、政治代表、賃金、家事・育児負担などに男女格差が残る。研究チームは、日本を「効果が見つかりにくい」事例と位置づけ、2000年から2018年までの「日本版総合的社会調査(JGSS)」を使って分析した。対象は、少なくとも1人の子どもを持つ男性回答者だ。

分析では、第1子が娘の父親と、第1子が息子の父親を比べた。第1子の性別は、親の政治意識によって決まるものではないため、父親の態度との関係を調べる手がかりになる。日本では出生時の男女比が長期にわたり比較的安定しており、人為的な性別選択の影響が小さいと考えられることから、研究チームはこの点を利用して比較した。

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」に否定的

分析の結果、第1子が娘の父親は、第1子が息子の父親に比べ、男女平等に関わる複数の項目で、より平等志向の態度を示した。

具体的には、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という伝統的な性別役割分業に否定的だった。また、夫婦が同じ姓を名乗る現在の制度を見直し、別姓を選べるようにする選択的夫婦別姓制度への支持も高かった。

皇位継承をめぐる意識にも差がみられた。第1子が娘の父親は、女性皇族の子どもにも皇位継承を認める「女系天皇」への支持が高かった。一方、女性皇族本人が天皇になる「女性天皇」への支持については、統計的に明確な差は確認されなかった。

所得再分配への支持や、犯罪対策への政府支出を増やすことへの支持でも、第1子が娘の父親の方がやや前向きだった。これらは典型的な男女平等政策ではないが、研究チームは、女性の経済的ぜい弱性や安全への不安に関わりうる政策として検討している。

全体的にリベラルになるわけではない

興味深いのは、この効果が政治意識全体に広がっていたわけではない点だ。第1子が娘の父親は、政治的イデオロギー、自民党支持、移民、同性愛、安全保障に関する態度では、第1子が息子の父親と明確な違いを示さなかった。

つまり、娘を持つことで父親が全般的にリベラルになる、という結果ではない。むしろ、娘の将来や女性として受ける扱いを意識することで、男女平等や女性に関わる一部の政策に限って態度が変わる可能性がある。

尾野教授は「これまで家庭内の政治的社会化は、親から子へ価値観が伝わる過程として論じられることが多かった。今回の研究は、子育てという身近な経験が、父親の男女平等に対する見方に影響しうることを示した点に特徴がある」と話す。

この研究は「娘を持てば父親が必ず変わる」と示したものではない。JGSSは同じ人を長期間追跡した調査ではないため、ある父親が娘を持った後に実際に態度を変えた過程を直接観察したわけではない。あくまで、第1子が娘の父親と第1子が息子の父親を比較した分析である。また、今回示されたのは態度の違いであり、投票行動や政策運動への参加にまでつながるかは分からない。

それでも、日本の大規模調査データから、家庭内の経験が男女平等に関する政治意識と結びつく可能性を示した意義は大きい。男女平等は、法律や制度だけで進むものではない。

娘を育てるという身近な経験が、父親に女性の機会や不利益を考えさせる契機になるのだとすれば、家族の中の変化もまた、社会意識を動かす一つの経路になりうる。

文/吉田光男 内外タイムス

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