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金属高騰で「口の中に眠るお宝」に 歯科医が患者から除去した銀歯を換金して逮捕された舞台裏

歯科医院で日常的に行われている治療行為。その裏側で、これまで見過ごされがちだった「ある資源」が思わぬ注目を集めている。患者の口腔内から取り外された銀歯や詰め物だ。近年の貴金属価格の高騰を背景にその価値が急激に見直される中、現場では“事件”も発生している。

舞台となったのは京都府内の歯科クリニック。2025年8月、患者の口内から取り除かれた銀歯を無断で持ち出し、業者に売却して現金化していたとして、同クリニックの医師が逮捕、起訴された。通常であれば数十万円から場合によって数百万円規模の回収が見込まれていたが、数千円程度にとどまっていたことで不審に思った理事長が監視体制を強化。

その結果、実態が浮かび上がった格好だ。男は当初、複数回にわたりおよそ50万円分を持ち出したと認めていたが、今年5月の公判では一転して「許可があった」と主張し、争う姿勢を見せている。

歯科業界の内部の人間によるこうした犯行は、決してこれだけではない。過去には福岡市の九州大学病院で、当時勤務していた研修登録医の男が、正規のIDカードを悪用して夜間などに侵入を繰り返し、患者の治療用金属を盗み出す事件も起きている。この男は「100回以上盗み、換金して約3000万円を得た」と供述しており、組織の死角を突いた手口が大きな問題となった。

また、内部の医療従事者だけでなく、元医療品販売会社の社員といった出入り業者が、かつての取引先だった歯科医院に夜間侵入して保管中の詰め物を数十万円分盗み出すなど、価値の上がった金属を狙う空き巣や盗難の被害は全国のクリニックで相次いでいる。

銀歯の貴金属的価値の上昇

そもそも銀歯は、単なる医療廃棄物ではない。専門業者による分析では、銀のほかに金やパラジウムといった貴金属が一定割合で含まれていることが確認されている。高温で精製すれば金属の塊として再利用が可能であり、資源としての価値を持つ。

実際、ある医療機関から回収された銀歯の買い取り額が1000万円を超えた例も報告されている。価格上昇の背景には、インフレの進行や工業用途の需要増加があるとされ、5年前と比較して流通量が2〜3倍に増加しているのが現状だ。

しかし、その価値上昇は歯科医院の経営にとって必ずしも追い風とは言い切れない。保険診療における報酬は公的に定められており、材料費の急激な価格高騰に対して改定が追いついておらず、銀歯1本あたり数千円規模の負担が医院側に生じるケースもあるとされる。

強度が必要な奥歯やかみ合わせの強い部分には、プラスチックでの代用が難しく金属を使用せざるを得ないため、日々の診療業務の中で負担が累積。小規模な診療所ほど影響を受けやすい構図となっている。東京商工リサーチの調査によると、全国の歯科クリニックの破産件数は増加傾向で、過去20年間で最多を記録。大阪府内だけでも直近5年間に約40件の破産や廃業が確認されている。

一方で、今回の事件は別の論点も浮かび上がらせた。患者から取り外された銀歯の帰属をめぐる問題である。クリニックによっては患者の同意を得た上でリサイクル業者へ売却し、収益の一部として扱うケースもあるとされるが、その運用がどこまで徹底されているかは一様ではない。

ネット上でも「そもそも患者の所有物なのでは。なんで病院の収益になるんだろう」「取れた銀歯、歯医者に持っていっても、治療で新しい銀歯入れられて、取れたの返されたこと一度もない」「価値のあるものなら患者に返さないとトラブルになるよ」といった声が並ぶ。

「口の中に眠るお宝」をめぐる一連の出来事は、これまで歯医者に任せきりだった患者の意識や治療現場の常識を変えていく転換点になりそうだ。

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