ヨドバシカメラ進出で“池袋家電ウォーズ”勃発 迎え撃つヤマダデンキ、ビックカメラ、ノジマの戦略は
「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」のオープン日まで1週間を切った。6月30日、百貨店の西武池袋本店が入居するビルにヨドバシも出店。全フロア合計で約1万坪の売り場面積を誇る旗艦店が誕生する。
ヨドバシの池袋進出は、2023年に行われた米投資会社のフォートレス・インベストメント・グループによるそごう・西武の買収がきっかけだ。買収の過程で、西武池袋本店が入居するビルの土地が、ヨドバシホールディングスの手に渡った。百貨店の魅力が減少することなどに危機感を覚えた従業員の一部は反発し、百貨店業界として61年ぶりのストライキが発生した。
買収が確定する前からプランの一つとして提示されていたヨドバシの出店は、豊島区長の高野之夫氏(当時・2023年死去)も出店への反対を明言。区長が民間企業の営業活動に言及したことに対して賛否の意見が飛び交うという「場外乱闘」も発生したが、結果的に西武池袋本店の売り場面積は減少。そごう・西武は転進支援金なる制度を創設した上で、従業員の削減も行ったという。
2024年9月、西武池袋本店が入居する建物はヨドバシHD池袋ビルと改称されたが、それから約2年の時を経て、ビル名の由来であるヨドバシがオープンする。マスコミの取材などをほとんど受けない創業者・藤沢昭和氏が日本経済新聞のインタビューに応じるなど、ヨドバシ側にとっても大きな転換点となる出来事になるが、これに対抗するのは既に出店している各家電量販店だ。
JR池袋駅の周辺には、独立した店舗としてビックカメラとヤマダデンキが、東武百貨店内にはノジマが出店している。ビックとヤマダの2店舗は昨年に店舗のリニューアルを実施し、ノジマもオーディオ関連の店舗エリアを設け、ヨドバシの出店に向けた準備を進めてきた。
ヤマダに関しては対決姿勢をうかがわせるような施策も打っている。ヤマダ公式YouTubeチャンネルでは、「史上空前の戦い」というナレーションとテロップから始まるCMを19日に公開。LABI池袋本店について「連日大盛況!!」「大好評営業中!」と紹介。新たに店舗のリニューアルをしたわけでもないのだが、ヨドバシの開店が迫る中で突然既存店の宣伝を始めたのだ。
ヨドバシも23日にYouTubeへ動画を投稿。「まあるい緑の山手線」から始まるCMソングの新バージョンを発表しているが、「カメラはヨドバシカメラ」の歌詞が「みんなが集まる池袋」に変化。動画の後半では、これまでのCMでも使用している「どこにも負けない品揃え」などの宣伝文句を従来通り使用するが、映像ではマルチメディア池袋のオープンを粒立てて紹介している。
新宿の敵を池袋で討つ?
池袋で長年旗艦店を運営してきたヤマダだが、過去にはヨドバシに対して「一敗」を喫している。2010年、ヤマダ電機(当時)はLABI新宿東口館をオープンさせた。前年に完成した「ユニカビル」へ入居したのだが、JR新宿駅と西武新宿駅の中間に位置する同ビルは新宿東口方面のランドマークになり、アニメ映画の「君の名は。」をはじめ様々なドラマ・アニメに登場。好立地への出店は抜群の宣伝力をもたらした。
ところが、2019年にヤマダホールディングスが行った大塚家具の買収が店舗の運命を変えた。約500m離れた所に大塚家具の新宿ショールームがある上、2011年に誕生したLABI新宿西口館との兼ね合いも考え、LABI新宿東口館の閉店を決めたと発表したのだ。
この発表が行われたのは、大塚家具買収発表の翌年、そして開店10周年の節目でもあった2020年だ。競合だったビックカメラとユニクロの共同店舗「ビックロ」も賃貸契約を理由に10周年のタイミングで閉店しているのを踏まえると突然の閉店というわけではない。しかし、ヨドバシ、ビック、そしてLABI池袋本店と比較すると、LABI新宿東口館は明らかに閑散とした雰囲気が漂っていたのも事実である。
CMの通り、ヤマダデンキLABI池袋本店が「連日大盛況」であることは間違いない。一方、藤沢氏は前述のインタビューにおいて「今回こそ池袋に出られるチャンス」とも語っており、妥協も油断も一切ない出店で攻勢に出る可能性がある。
親会社が買収されるという形で、家電量販店同士の対決に巻き込まれた西武池袋本店は「池袋の逆襲」というキャッチコピーを掲げ、ヨドバシ出店後に迎えるグランドリニューアルオープンを宣伝している。消費者目線では各店舗がバランスよく競合してくれる環境が望ましいようにも思えるが、家電の街と化す池袋で、家電量販店同士が争う暑い夏を迎えようとしている。
文/池田聖人 内外タイムス編集部


