新宿駅東南口広場に掲出された黄色い看板「デモつぶし」が目的だと言い切れない理由
JR新宿駅の東部にある新宿駅東南口広場(新宿さくらスクエア)にて、10日から1枚の看板が設置されている。周辺施設への迷惑行為として、旗竿(はたざお)を振り回す、大声や大音量を出すなどの行為を挙げた上で、このような行為はしないようにと記載している。
新宿区、警視庁新宿警察署、国土交通省東京国道事務所の三者が連名で出したコメントに対し、主に左派系の人物などから批判や反論が、そして右派系からは賛同と左派系の人物への批判が飛び交った。
在日クルド人への差別行為などに対して反対の立場をとる鍋倉雅之氏らが、昨年12月頃からデモ活動を展開。ここ数カ月はクルド人だけでなく、中国人やイスラム教徒らへの差別行為、イスラエルによるガザ地区への攻撃などに対しても声を上げている。
これらの行為を念頭に置いた看板の設置とみられ、設置直後は言論弾圧だと主張するコメントが相次いだ。
一方、高市早苗首相らの似顔絵を紙コップに描き、その紙コップをエアガンのようなもので狙う「SHOOT the FASCISTS」と題した写真が投稿されたことにより、今月に入ってからデモ参加者らへの批判が増加。看板そのものだけでなく、新宿区、新宿警察署に対する攻撃的なコメントを続ける左派系の意見や行動を取り上げ、やはり規制が必要だとする意見も投稿された。
ただ、そもそもこのエリアにおける政治活動はデモだけではない。国政選挙、東京都知事選挙などが開催された際には与党・野党関係なく選挙カーが連日登場し、30分から1時間ごとに連続して様々な候補者らが演説を行うこともある。
数年前には、ある極右系の団体が広場内で大きな旭日旗を振り回し、別の団体が反米保守系の思想を拡声器で主張する姿も目撃している。選挙カーに関しては公選法上の規定との兼ね合いになるが、看板通りのお願いに従うのであれば、ここで挙げた右派系団体の行為も当然ながら規制対象になる。
もっとも、この場所で頻繁に開催されているのは、道路使用許可を出さない無断での路上ライブとパフォーマンスだ。特に路上パフォーマンスに関しては、看板が設置された木の周りを大きく陣取って大道芸を披露しているため、路上ライブよりも通行の妨げになりやすい。
政治活動と路上パフォーマンスに差が
都知事選が行われた2024年には、アイドルグループが無許可で路上ライブを行ったとして書類送検されている。当時は「スケープゴートにされた」「人気の証拠だ」「警察による見せしめ」といった擁護の意見も見かけたが、新宿警察署はコロナ禍なども含めて毎日のように見回りと取り締まりを実施しており、警察がこのグループだけを狙い撃ちにしたわけではない。
過去の選挙活動では、自民、公明、維新、社民、れいわの各候補者、2024年の東京都知事選における蓮舫氏陣営などが、点字ブロックを塞がないようスタッフを配置していた。
だが、大道芸のパフォーマンスは東側、南側の歩道まで「観客」があふれ返ることもある。白杖を持った人物が通行できずに戸惑っているといった事象を目撃したことはないが、歌唱や大道芸を行う各パフォーマーが点字ブロックを塞がないよう注意する姿も、これまで見たことがない。
看板にある通り「新宿さくらスクエア」は新宿区に住む人や区内に在学・通勤する人々、観光客などが行き交う場である。思想に関係なく言論の自由は保障されなければいけないが、今回の看板設置を受け、今後行われる選挙活動を含め何かしらの変化が起きる可能性がある。
ただ、看板にあるお願いに一番従わなければいけないのは、デモ活動や政治的主張をする人ではなく、無許可で路上パフォーマンスを行い、時には投げ銭を求める人々なのかもしれない。
文/池田聖人 内外タイムス編集部


