名門オートバイメーカー・ハーレーダビッドソン販売台数4割減の衝撃 保守的なバイカーに革新モデルが浸透せず
アメリカの名門オートバイメーカー・ハーレーダビッドソンが業績の低迷に苦心している。2025年の販売台数は約13万2535台で、2024年比で12%減少。
2019年比で実に40%以上減っている。2026年1月から3月までの販売台数も前年同期間比3%減と、ブレーキはかかりつつあるものの販売不振は続いている。
こうした状況の中、新たな成長戦略を発表した。テーマは「BACK TO THE BRICKS」。ハーレーは1903年に4人の若者が第1号車を作り上げたことが会社の礎になっており、開発は小さな納屋で行われた。
オートバイは日本のカワサキやイタリアのドゥカティ、ドイツのBMWなど、工業技術をすでに身につけた会社が事業の多角化の一環として手がけるケースが多いが、ハーレーはオートバイに特化したベンチャー企業の走りのような会社だったのだ。
BRICKはレンガ、BRICKSはレンガを積んだ建物という意味で、「BACK TO THE BRICKS」はレンガ造りの納屋に戻ること、すなわち原点回帰という意味がありそうだ。
電動化展開で販売エリアの拡大を狙うも
原点回帰を掲げたことには背景がある。2020年5月にヨッヘン・ツァイツ氏がハーレーのCEOに就任すると、革新に向けた取り組みを加速させた。象徴的なのが電動バイク「LiveWire(ライブワイヤー)」の展開だ。
これまで、ハーレーのオートバイのアイコンとして君臨していたVツインエンジンの殻を破り、電動化へと手を広げたのである。
エンジンを搭載したモデルも従来のターゲットとは別の層の取り込みを図った。ハーレーはツアラーに強みを持っているが、2021年にアドベンチャーモデル「パンアメリカ」を発売したのだ。
アドベンチャーモデルはヨーロッパで人気が高く、BMWはこの分野のトップメーカーとして知られている。
ハーレーはアメリカや日本で人気を博しているものの、ヨーロッパではライバルに後れを取っていた。アドベンチャーモデルの投入で、販売エリアの拡大を狙ったのだろう。
しかし、この分野は難路や悪路を突き進む走破性の高さが重視される世界であり、レースなどでの実績が薄いハーレーのアドベンチャーモデルは、ライバルに比べて十分な存在感を示せなかったとみられる。
日本では中型免許で乗れるハーレーを発売したが…
日本では中排気量クラスの「X350」を2023年に発売した。中型免許を取得した層に向けての新モデルだ。低価格で提供したものの、十分な販売実績を残せずに生産終了が決まっている。
「X350」は中国のバイクメーカーの傘下にあるベネリとのOEMモデルだ。
日本にはホンダやヤマハ、カワサキ、スズキといった名門メーカーが多種多様なモデルを世に送り出している。しかも、中型免許の保有者数は大型免許よりも圧倒的に多く、中排気量クラスは売れるオートバイを作るために各社がしのぎを削ってきた分野だ。OEMモデルでは太刀打ちできなかったというところだろう。
ヨッヘン・ツァイツ氏はスポーツブランドのプーマの経営再建に成功した人物で、マーケティングの専門家として名高い。ターゲット層拡大に向けて打ち出した施策は、マーケティング戦略に根差したものだと言えそうだ。それが成果を生み出すには至らなかった。
新しいCEOを迎えて新戦略もはっきりせず
ハーレーは2025年10月にアーティ・スターズ氏を新たなCEOとして迎え入れた。スターズ氏は投資銀行業界出身で、ピザハットやゴルフを中心としたアミューズメント施設トップゴルフの躍進を支えた人物として知られている。
新CEOのもとで発表したのが「BACK TO THE BRICKS」だ。経営戦略に盛り込まれた空冷エンジンの「スポーツスター」復活はバイクファンを驚かせた。「スポーツスター」はエンジンの排気量がやや少なく、日本市場では高い人気を誇る。一方、アメリカでは初心者向けのモデルと見られており、あまり人気はない。
ハーレーは「スポーツスター」よりもさらに排気量が少ないスプリントモデルも発表している。初心者向けのエントリーモデルを強化し、ファン層の拡大を狙っているようだ。新たな経営戦略は、従来のハーレーファンに向けたサプライズには乏しい内容だった。革新と伝統の間で揺れ動いているようだ。
文/不破聡 内外タイムス


