#33 「海底ケーブル」は「多国間協力で守れ」 勝股秀通  

「海底ケーブル」は「多国間協力で守れ」 日本大学特任教授 勝股秀通
 台湾周辺や北欧バルト海で、中国やロシアの関与が疑われる海底ケーブルの切断事案が相次いでいる。2023年以降、馬祖列島や台南沖など台湾周辺海域では少なくとも18件の事案が発生し、バルト海でも24年から25年にかけて4回もケーブルが切断されている。

 いずれもケーブルの陸揚げ場所(局)に近い比較的浅い海域で発生し、航行する貨物船や大型の漁船が、ケーブルの敷設位置を特定したうえで、船のいかり(アンカー)を降ろし、海底を何度も引きずりながら切断しているという。

 フィンランドや台湾など関係国と地域では、切断に関与した疑いのある船を拿捕するなどして捜査しているが、船長が中国人でも船籍は別の第三国であったり、「故意ではなく事故だ」などと言い逃れたりするケースが大半で、犯罪を立証することは難しい。

 このため欧州では「ロシアがウクライナを支援する各国に対し破壊工作を続けている」とみて監視を強め、台湾でも「中国が台湾の対応を見定めるためのテスト」などと分析し、海上保安庁にあたる海巡署がケーブルを守るための訓練や警戒を強化している。

 だが、この問題は決して他人事ではない。なぜなら、日本は国際通信の99%を海底ケーブルに依存し、沖縄県の先島諸島など全国各地の離島では、観光や防災をはじめ日常の生活の通信インフラとして海底ケーブルが利用されているからだ。しかも、中国と台湾の緊張が高まれば、台湾と日本をつなぐケーブルだけでなく、沖縄県と本州や九州とを結ぶケーブルも切断され、情報封鎖に追い込まれる可能性があるからだ。

 先日、台湾国防部の幹部らと防衛装備をめぐる日台協力の可能性を話し合う場に参加する機会を得た。日台双方とも「海底ケーブルをどう守るか」といった課題への関心は高いものの、日本と台湾に対する中国の強い反発は必至であり、そもそも国交のない日台間では協力に限界があるのも確かだ。

 だからこそ、それを乗り越える知恵が必要だ。切断事案が欧州でも相次いでいるのを奇貨として、日本をはじめ海洋国家である米英豪や北欧諸国、ニュージーランド、韓国、フィリピンなどと連携し、多国間の枠組みで、日常的に切断などの衝撃を感知する装置やセンサーの開発などに取り組む必要があるのではないか――という意見が大勢となった。

 デジタル時代の基幹インフラとなった海底ケーブル。それを守り抜くには、できるだけ多くの国々が連携し、協力している姿を示すことが、中露に対する抑止力となる。日本は今こそ、平和のためのリーダーシップを発揮すべき時ではないだろうか。

かつまた・ひでみち 1958年千葉県生まれ、青山学院大学卒。1983年に読売新聞社入社。東京本社社会部で東京地検などを担当後、93年から防衛省・自衛隊を担当。99年には民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(1期生)を修了。その後、防衛問題の専門記者として解説部長兼論説委員、編集委員など歴任。2016年から日本大学に移り、24年から現職。著書は『検証 危機の25年』『自衛隊、動く』など。その他「国防の盲点」を『WEDGE』誌で46回連載するなどオンラインを含め論考を随時発表。

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