#22 織田邦男「中国の工作活動に警戒怠りなく」

中国の工作活動に警戒怠りなく 麗澤大学特別教授 元空将 織田邦男

 2023年6月、習近平国家主席は就任後初めて「琉球」に言及した。「(福建省)福州で勤務していた際、琉球との交流の根源が深いと知った」(人民日報2023.6.4)と述べ、琉球と中国の交流に触れた。その後、沖縄の帰属は「未解決」と主張し、中国の領有権を示唆する論文が続々と人民日報に掲載されるようになった。台湾に日本が関与を強めれば、沖縄の帰属問題を持ち出すとの中国政府の警告との見方があるが、事態はもっと深刻だと思う。

 武力行使か平和的かは別として、2027年までの台湾併合は中国の既定の方針である。その「台湾」の後は「沖縄」、その布石ではないかと筆者は思う。安全保障は「まさか」と捉えるのではなく「もしかして」と最悪の事態を想定して準備しておくことが肝要である。

 2023年4月、米国、フランスの諜報機関は、中国が沖縄と日本政府との分離工作を図っているという警告のレポートを出した。フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)が公表した「中国の影響力作戦」では、世界で展開する中国の情報戦について述べ、その中で「日本政府と沖縄の分断をあおっている」と指摘している。

 フランスは植民地であるニューカレドニアにおける反政府活動に手を焼いている。同じ手法で中国が沖縄住民に対し、浸透工作を図っているという。米軍基地を敵視し、中央政府に対し反感を抱かせ、アンチ東京派を育成して琉球独立を求める活動である。

 「外交とは血を流さない戦争であり、戦争は血を流す外交である」と言われる。中国は「孫子の兵法」の国であり、戦わずして勝つのを最上とする。2014年9月の「抗日戦勝記念日」には「孫子の兵法を学べ」と習近平氏は訓示している。「孫子」の用間篇には偽情報を流布する「死間」について書かれている。中国が最も得意とするやり口である。2012年9月、「環球時報」に以下のような偽情報が掲載された。「2006年3月4日に琉球で住民投票が行われたところ、75%が独立を要求し、中国との自主的往来の回復を要求。残りの25%が日本への帰属を求め、独立を要求しなかったが自治に賛成した」。

 全くの虚偽情報であるが、誰もが記憶が朧げな6年前のことに言及するきわめて巧妙なやり口である。加えて2013年5月には「沖縄の主権に関しては未解決」、「もともと琉球は中国のもの」との主張が「人民日報」に掲載された。その後、米仏の情報機関が指摘する浸透工作が日常的に続いている。我々には偽情報を見極める見識と警戒心が求められる。

おりた・くにお 昭和27年愛媛県生まれ。昭和49年防衛大学校卒業(18期)、航空自衛隊に入隊、F4戦闘機操縦者として第6航空団(小松)に勤務。第301飛行隊長(新田原)、第6航空団司令、航空幕僚監部防衛部長を経て航空支援集団司令官を最後に退官。米国空軍大学留学、スタンフォード大学客員研究員。退官後東洋学園大学客員教授を経て、令和4年から現職、元空将。令和4年、瑞宝中綬章を受章。令和4年より産経新聞「正論」執筆メンバー。第38回正論大賞を受賞。

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