伊佐山さん「水平線」一席 「宮古島文学賞」入賞作品決定

 宮古島市文化協会(饒平名和枝会長)は9日、市役所3階会議室で第7回「宮古島文学賞」の入賞作品を発表した。一席は伊佐山昴さん(66、長崎県)の「水平線」、二席は佐藤陽翔さん(25、富山県)の「爆(は)ぜる。」、佳作は半崎輝さん(63、徳島県)の「夏の消印」が受賞した。「島」をテーマにした短編小説は全国28都道府県から76作品の応募があり、2回の選考で8作品に絞られた。8日に未来創造センター会議室で最終選考が行われ、入賞作品が決定した。授賞式は3月2日にホテルアトールエメラルド宮古島で行われる。

「宮古島文学賞」入賞作品発表会見で(左から)大城さん、椎名さん、もりおさん=市役所


 会見では、主催者の饒平名会長が「応募作品一つひとつから作者のそれぞれの世界観や島と登場人物の生き方を交差させた作品、希望ある作品に接して感動を深くした。応募してくれた方々に感謝している」とあいさつした。大城裕子教育長は「宮古島文学賞は島をテーマとした魅力ある文学賞であり、市教育委員会としては今後も支援していきたい」と述べた。
 このあと発表があり、最終選考は作家の椎名誠さんが選考委員長、委員は宮古島市出身の児童文学作家もりおみずきさん、詩人・作家で元琉球大学教授の大城貞俊さんが務めた。
 椎名さんは「第7回で知名度が上がり、全国からの応募数が増えていることはうれしい。その中で最終選考の8作品を読んでみて、レベルがアップしていることを感じた」と述べた。
 大城さんは、一席に選ばれた伊佐山さんの「水平線」について「生きるということ死ぬということは文学テーマにもなるが、がん再発の不安を抱えた女性がDV(家庭内暴力)から逃れてきた親子や漁師の若者ら島の人々との交流を通して希望を取り戻していく。祖父母の戦争体験のエピソードを挿入し、身近な問題として普遍的なテーマに押し上げた作品である」と評価した。
 さらに「文学の力に希望を語ることがあるとすれば、この作品はそのことにふさわしい作品。このような作品に出会えてうれしい」と話した。
 もりおさんは、佐藤さんの「爆(は)ぜる。」について「この作品の文章は繊細で美しく、名前が出てこないで『俺』が最後まで主人公だが、俺の心情や行動が読みやすかった」と評価した。
 21歳のフリーターの「俺」が夢も希望も家族も失い、末期がんの母のために医者を目指したが挫折して夜の街を奇妙な格好(白衣)で闊歩(かっぽ)する日々の中で最終的に明るく生きるお笑い芸人を目指すという物語。「笑いによって自分の生き方を見直し、母のために医者になりたかったけど挫折して希望もなく、何もなくなって最終的には笑いで人を癒やすことができるお笑い芸人になっていくところはおもしろい」と語った。
 2回目の挑戦で一席に選ばれた伊佐山さんは「こういう賞を頂けるとありがたい」と喜びを語った。宮古島は行ったことがないということで「授賞式で訪れることを楽しみにしている」と話した。

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