• 全国
  • 44社連合への支援が「たった1兆円」ずれを感じた政府の援助
  • HOME
  • 全国
  • 44社連合への支援が「たった1兆円」ずれを感じた政府の援助

44社連合への支援が「たった1兆円」ずれを感じた政府の援助

半導体大手企業のエヌビディアでCEOを務めるジェンスン・フアン氏が、15日に来日した。初日はゲームセンターのGiGOや居酒屋を訪問するなどして、時には外国人観光客の一人としての顔も見せていたが、翌16日にはビジネスマンとして各地を回り、国内企業との提携発表や提携拡大などの施策を次々に発表した。

祭りは終わり、産業が始まる…暗号資産が金融商品になった日、東京にいた“革ジャンCEO”と枯れた“徒花”

エヌビディアと提携している企業をはじめ、国内の44社は「Noetra(ノエトラ)」という企業に出資し、国産AIの本格的な開発に挑むことも決まった。アメリカのChatGPT、中国のDeepSeekなど、他国が一歩先を行っているAIの覇権競争に食い込もうとする施策に、エヌビディアがAI半導体の提供を行う予定だ。

この構想は、経済産業省が開催したイベントにて発表された。エヌビディアという巨大なエンジンを手にした日本企業が次世代技術をフル活用していくという、国家ぐるみの目標に向かって動き出す。フアンCEOの姿を真似て、革ジャンを羽織った経済産業大臣の赤沢亮正氏も登壇し、一体感のあるプロジェクトであることを強調しているように見えた。

ところが、政府による支援の予定額は5年で最大1兆円。単純計算で年間2000億円になる。一見するとすさまじい金額を投入するようにも見えるのだが、AI分野への支援という側面で見ると、物足りなさを感じる内容になっている。

韓国ではサムスンとSKグループが約40兆円の設備投資などを計画している。また、アルファベットなど米IT企業4社は、今年だけで約100兆円もの金額を投入するとみられており、海外の民間企業は惜しみなくAI分野への投資を進めている状態だ。

国内のAI分野で最先端を行くソフトバンクグループ(SBG)も、フランスに設置するデータセンターだけで約14兆円の投資を予定したり、OpenAIに約4兆円の追加出資を計画したりしている。SBGはノエトラに出資する企業連合の一員としても名を連ねており、比較的潤沢な資金を提供する可能性がある。そう考えると、そもそも政府による2000億円程度の支援が必要なのか、という所から考え直した方が良いかもしれない。

「エルピーダの失敗」生かさずか

支援額が少ないと感じるのは、かつて救えなかった半導体企業「エルピーダメモリ」の存在があるからだ。

現在、主に広島県内で半導体メモリの生産などを行っているマイクロンメモリジャパンは、NECと日立製作所の半導体メモリ事業を統合し、エルピーダメモリとして出発した。大企業の先進技術分野で活躍する人々が一つの企業で活動するという、期待の持てる船出だったのだが、急激な円高などを理由にした業績の悪化が発生。2009年には日本政策投資銀行への第三者割当で300億円の資金が、エルピーダメモリに渡った。

その10倍以上にあたる約4480億円もの負債を抱え、会社更生法を申請したのは、第三者割当を行った3年後の2012年だった。

エルピーダメモリ元社長の坂本幸雄氏は2013年に東洋経済が行ったインタビューの中で、300億円の資本注入は中途半端だったと語っている。税金での援助が中途半端だったと受け取られかねない発言であり、人によっては憤りを覚えるかもしれないが、資本注入が必要なタイミングで桁を一つ増やした支援を行っていれば、しっかりと立て直しをはかれた可能性は十分にあった。

政府は今年に入ってから「造船業再生基金」を造成し、造船業に対する支援を強化したのだが、コロナ禍に発生した物流業界の特需の時期を逃しての投資に対し、ずれているとの指摘も見かける。また最近では、経済産業省がDeNAのゲーム開発に対して約15億円の支援を行うと表明し、物議を醸した。大企業が手掛ける娯楽商品に対して、億単位の金額を援助するなというニュアンスの意見が目立ったが、一方で約15億円という規模そのものに疑問を持つコメントも散見された。

金額が小さい、時期がずれているといった疑問を各方面から投げかけられる中で、今回は5年で1兆円規模の支援を行うと表明した。政府は「戦略17分野」への投資として、2040年度までに370兆円を超える金額をAIや半導体などに投資する予定だが、投資が始まる前から雲行きが怪しくなっているように感じる。

文/池田聖人 内外タイムス編集部

関連記事一覧