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飲み放題5000円が962万円に… “足がつきにくい”マチアプ×レンタルスペースの新たな詐欺手口

マッチングアプリを介して出会った相手に誘われ、指定された場所に足を運ぶ。そこにはカウンターやお酒のボトルが整然と並び、一見するとおしゃれなバーの空間が広がっている。「飲み放題5000円」という事前の説明を信じ、勧められるままにグラスを重ねていく。

しかし、会計時に突き付けられたのは、962万円という一般的な飲食代とはかけ離れた巨額の請求だった――。

昨年11月に大阪・ミナミを舞台に発生したこの事件は、従来のぼったくり店とは異なる“新たな場所”での悪用手口として、社会に衝撃を与えた。8月6日に大阪地裁で開かれた初公判では、東京での取り締まりを逃れた詐欺グループが大阪へ拠点を移し、バーの体裁を整えたレンタルスペースを犯行に利用していた実態が明らかとなった。

被害に遭った20代の男性は、マッチングアプリで知り合った女性と約2カ月間にわたりメッセージのやり取りを重ねたのちに、ミナミで合流したという。入店すると、女性は「負けた方が飲む」というトランプゲームを提案。女性が次々と酒を注文し、ゲームを繰り返す中で、店側から突然「今飲んでいるお酒は飲み放題の対象外で、1杯3000円の別料金になる」と告げられる。

男性が手持ちの現金を下ろして一部を支払ったものの、店側は「足りない」と要求を継続。さらに「男性の対応に時間を取られたせいで他の予約がキャンセルになり、1時間あたり120万円の損失が出た」などと支払いを迫り、最終的に960万円もの大金をだまし取ったというのだ。

手続きの手軽さが犯罪の温床に

このような犯行が成立した背景には、時間貸しの多目的施設であるレンタルスペースの存在がある。犯行グループが利用した場所は、深夜帯は通常のバーとして営業しつつ、それ以外の時間帯はネットの仲介サイトを通じて時間単位で貸し出されている物件だった。

初期投資をして自前の店舗を構える必要がなく、わずか数時間、数万円の利用料を支払うだけで「本物のバー」に見える空間を手に入れられる利便性が、犯罪行為に利用されてしまった格好だ。

さらに、身分証明の手続きを経ずに偽名で予約が可能だった点も、足がつきにくい環境を求めるグループにとって好都合だったと考えられる。用が済めば即座に撤収できる機動性の高さが、巧妙な詐欺の隠れみのとなった。

この事件が報じられると、ネット上でも驚きの声が上がり、「女性から飲みに行こうと誘われて店に案内されたら絶対に疑った方がいい」「こんなのは闇バイトと変わらない。関与した人間には厳罰を科してほしい」「本人確認なしで簡単に借りられるような設定そのものが良くないのではないか」といったさまざまな意見が飛び交った。

テレワークの普及でオフィスを縮小する企業が増えたことや、商業ビルの空き店舗対策として、レンタルスペースは都市部を中心に定着。市場規模も拡大の一途をたどっている。

しかし、無人管理や手続きの手軽さといった長所の裏には、犯罪の温床となり得る危うさも同居する。利便性を損なわずに、いかにして不正な利用を防ぐための仕組みを作れるか。

今回の巨額詐欺は、レンタルスペース業界やマッチングアプリ事業者に、利用者や社会の安全をどう守るのかという課題を突き付けた事件だったとも言えそうだ。

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