食料品消費税8%→1%の先に待つ「復帰ショック」をいかにして緩和するのか 甘い減税策に潜むリスク
高市早苗首相は22日の衆院予算委員会で、飲食料品の減税の期限について問われ、「2年後にはもとに戻す」と明言した。政府は2027年4月から食料品にかかる8%の消費税を1%に引き下げる方向で調整を進めている。思惑通りに進めば、2029年4月には1%だった食料品の消費税が8%へと大幅に引き上げられることになる。
消費税の引き上げは経済への打撃が大きい。その影響が色濃く出たのが、安倍元首相が主導した2014年4月の消費税率5%から8%への引き上げだ。消費税増税前の2014年1月~3月の実質GDP成長率は6.0%だったが、同年4月~6月はマイナス7.1%。民間最終消費支出はマイナス12.6%だった。すさまじい反動減に見舞われたのだ。
増税により、特に非正規雇用者が多い低所得層への負担感は増す結果となった。安倍晋三元首相は消費の冷え込みの激しさを目の当たりにし、当初予定していた2015年10月の消費税10%の引き上げを1年半延期する決断を下している。その後、世界経済の不透明感が強まったことで2019年10月まで再延期した。
NHKの調査による2014年の内閣支持率は、消費税引き上げ前の1月は54%が支持すると回答していたが、11月には44%まで下がっている。消費税の引き上げは、経済と政治に与えるインパクトがあまりにも大きいのだ。
高市首相の頭の中には、消費税の引き上げと同時に給付付き税額控除という切り札を導入することがあるだろう。給付付き税額控除は、低所得者向けの現金給付強化策である。税額控除で引き切れない控除額を現金として支給するものだ。
しかし、制度が複雑で国民の理解が得られるのかは不明確であり、給付付き税額控除の財源論は置き去りにされたままだ。中高所得者の負担が重くなるようであれば、多くの国民からの反発も予想される。
消費税の引き下げは本当に効果があるのか
食料品の消費税の引き下げが、本当に庶民の負担を和らげるのかについても不透明な部分が多い。政府主導で消費税を7%引き下げると決めたとしても、値段を決めるのは基本的に事業者だ。円安に加えて、エネルギーや人件費の高騰が続いており、事業者の負担は重くなっている。
複雑な利害関係が絡み合う中で、現在の価格から7%の消費税が軒並み下がるとは考えにくい。
周辺の産業に悪影響を及ぼす懸念もある。不安の声が上がっているのが外食業界だ。弁当や総菜などの税率が引き下げられ、外食が税率10%を維持すると、客離れの懸念がある。業界団体は減税に反対の立場をとっており、プレミアム商品券など外食需要が減退しないよう求めている。
農家や漁業関係者など生産者への影響も懸念されている。小規模事業者が多いために免税のメリットを受けている事業主が多くいるが、消費税を引き下げることで収入が減ってしまう可能性があるのだ。
高市首相は影響を受ける事業者への対応も検討するべきとの考えを示している。一方、救済策を次々と出せばそれだけ、2年後の反動減が大きくなるという副作用もありそうだ。
三菱総合研究所は消費税減税に関する消費者調査を行っているが、「2年間消費税1%もあり」に対して賛成している割合は40.9%。「将来世代負担になる減税は反対」という考えに賛成する割合は55.8%に及んでいる。「2年間の消費税減税は実施すべきではない」が28.1%、「消費税を下げる必要はない」が19.3%だ。
高市首相は消費税の減税を「悲願」であると衆院選の公約に掲げて大勝するに至ったが、消費税減税を冷静に見ている国民は少なくない。
2年間限定の食料品にかかる消費税1%への引き下げを急ぐのであれば、給付付き税額控除の財源をどうするかなど、出口戦略を具体的に固める必要がありそうだ。そうでなければ、国民の理解を得られることなく、経済が急激な反動減に見舞われて大混乱に陥る可能性もある。
文/不破聡 内外タイムス


