“無責任な”積極財政か、「17分野370兆円」高市総理肝いり成長戦略投資
高市政権は新たな成長戦略の策定に向け、AI・半導体や造船など17の戦略分野で2040年度までに「総額370兆円超」という官民連携投資計画案をまとめた。政権が日本の勝ち筋と見込む分野で、政府支出(税金)を呼び水に民間投資を加速させる狙いだ。
投資額の一例を示せば、AIを使ってロボットなどを自律的に動かすフィジカルAIには40年度までに10.5兆円、半導体には68兆円投資し、クラウド・データセンター・蓄電池は35年度までに32.7兆円、コンテンツ分野のゲームには33年度までに24.5兆円投資するなどの試算がある。
今回の成長投資については、通常の歳出とは別に新たな投資枠をつくるという。複数年度にまたがる予算編成となるようだ。官民投資に占める官の比率については分野ごとに異なるようだが、現時点で詳細は決まっていない。
バラマキと財源に対する懸念
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト(WBS)」で、政府の狙いが不明確だと指摘する。
「17分野といっても目的がバラバラ。分野を広げて金額を大きくするインパクトが狙い。成長戦略と何を重視するのかはっきりしない。お金をばらまいても効果が出ない可能性がある」
財源に対する懸念もある。今回、政権が活用を検討しているのは、「つなぎ国債」だ。一時的な資金不足を補う仕組みで、償還に使う財源を確保できる前提で発行するものだ。しかし、今回はその償還財源が確保されていない。
明確な財源を確保しないまま発行すれば、それはつなぎ国債ではなく実質的に赤字国債と変わらない。木内氏は「責任ある積極財政の『責任ある』が揺らいできたのではないか」と語る。
総額370兆円なので1年あたり25~26兆円程度になるが、この額が大きいか小さいかは議論の分かれるところ。投資である以上、リターンを求めるのは当然であり、呼び水に使う資金は税金だ。
これまでも官製ファンドには失敗例が多かったが、公務員のジョブローテーションで責任者(責任と権限)がはっきりしないのも官製ファンドの特徴だ。
撤退基準も明確にしてほしい。投資計画の期限は2040年度までとなっているが、技術トレンドの変化はそんな長期スパンではない。とくに「AI・半導体」などは毎年のように変わっている。官製ファンドはそのスピードについていけるのだろうか。今回は17分野もあるので、民間の投資が十分についてこなければ、すぐに撤退する仕組みも必要だ。
文/横山渉 内外タイムス


