平均年収「3517万円」のからくり 光通信が言わないレオパレス21買収の本当の狙い
9月、光通信が賃貸住宅大手のレオパレス21の買収に乗り出した。投資ファンドなどと共同でTOB(株式公開買い付け)を実施し、同社の非公開化を目指す。買付価格は1株1000円、買付代金は最大約2676億円にのぼり、買付期間は10月30日までとなっている。
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光通信といえば、かつて携帯電話の販売代理店として急成長した企業だ。なぜ、その会社がレオパレス21を買収するのか。
実は光通信には、もう一つ意外な数字がある。2026年3月期の有価証券報告書によると、社員の平均年間給与はなんと3517万5984円。日本の上場企業でも突出した高額だ。いったいどんな会社なのか。その歴史とビジネスモデルを探ってみた。
ドットコムバブルで上場、崩壊から復活へ
光通信は1988年2月、OA機器や電話機などの販売・リース会社として設立された。同年には市外電話サービスの回線販売も開始。1990年代にはコンピューターや周辺機器、国際電話サービス、携帯電話などへと事業を拡大していった。当時を知る経済記者はこう語る。
「いまの若い人にはピンとこないでしょうが、昔は市外電話が高かったんですよ。そこで、電話番号の頭に『0077』なんて番号をつけると、いつもより安い電話会社の回線を使えるサービスが登場した。光通信はそういう通信サービスを、とにかく人海戦術で売りまくった会社です。
営業マンを大量に集めて、朝から晩まで電話をかけまくる。『ゾス!』という独特の掛け声でも知られ、気合と根性で数字を積み上げる。営業の世界では、いまでも語り草になっています」
強烈な営業力を武器に、光通信は急成長した。1999年9月には東京証券取引所第1部に上場。翌2000年2月には株価が24万円を超える高値をつけた。しかし、その勢いは長く続かなかった。
携帯電話販売代理店「HITSHOP」をめぐる不正契約問題などが表面化。業績見通しも大幅に下方修正され、株価は暴落した。折しもドットコムバブルが崩壊しつつあり、光通信は急成長企業の象徴から一転、経営危機に陥った。
「当時はIT企業というだけで株価が青天井に上がる、異常な時代でした。光通信もその代表格で、株価は一時24万円を超えた。ところが、不正契約問題が発覚して巨額赤字への下方修正。そこから株価が奈落の底へ落ちていった。
連日のストップ安で、売りたくても売れない。ドットコムバブルの崩壊を象徴する出来事の一つでしたね。あのころは、光通信という会社はもうダメなんじゃないか、という見方もありましたね」(経済記者)
しかし、会社は復活した。事業構造を大きく転換し、現在は持株会社として、電気・ガス、通信、飲料、保険、金融、ソリューション、取次販売という幅広い事業をグループで展開している。
かつては携帯電話や通信サービスを、強力な営業力で販売する会社というイメージが強かった光通信だが、現在の姿はかなり異なる。
「自社企画・開発商材」が9割弱、コモディティを営業力で売る
光通信のビジネスモデルを整理すると、大きく2つに集約される。
1つ目は営業力を活かした「代理店ビジネス」で、他社の商品を取次販売することでフィーを得る。商材は、他社の携帯電話、コピー機などのOA機器、生命保険などだ。
2つ目は「自社企画・開発商材」の販売だ。最大の顧客は中小企業で、インターネット回線や電力・ガス、店舗予約サイトなどが商材。個人向けのビジネスも行っており、インターネット回線や宅配ウォーターサーバーなどが商材である。
「昔の光通信は、他社の商品を売って手数料を稼ぐ会社という印象が強かった。でも、いまは違います。自分たちで企画したサービスを、自分たちの販売網で売る。しかも売って終わりじゃない。電気もガスもネット回線も、一度契約すれば毎月料金が入ってくるでしょう。
商品そのものが特別に珍しいわけじゃないんです。むしろ、どの会社でも扱えるようなコモディティを、他社よりうまく売る。その仕組みをつくってきた会社なんです」(経済記者)
実際、2026年3月期の売上収益7347億円のうち、他社製品の「取次販売」が占める割合は13.4%にとどまる。残りの9割弱は、光通信グループが「自社で企画・開発した製品・サービス」と位置付ける6つの事業セグメントが占める。
もっとも、これらの商品をすべて自社で製造しているわけではない。外部から調達した商品やサービスを、自社ブランドで提供するケースもある。また、販売を外部の代理店に委託することもある。
こうした仕組みを通じて、光通信は幅広い商品・サービスを全国に販売している。注目すべきは、その収益性だ。2026年3月期の営業利益率は15.9%にのぼる。
光通信が展開する事業にはインフラ絡みのものが多く、継続取引型のビジネスが中心だ。営業力で獲得した顧客から、契約が続く限り継続的に収益を得られる。こうしたストック型の事業構造も、同社の高い収益性を支える要因の一つとみられる。
レオパレス買収の狙いは「54万戸」の顧客基盤
では、なぜ光通信はレオパレス21を買収するのか。カギとなるのは、レオパレス21が全国で管理する約54万戸の賃貸住宅だ。株式ウォッチャーが語る。
「光通信が欲しいのは、不動産だけじゃないでしょうね。レオパレス21には全国に膨大な数の入居者がおり、その人たちは毎日電気を使うし、ガスも使うし、インターネットも契約する。
しかも、引っ越しのときって、電気もガスもネット回線もまとめて契約することが多いでしょう。入居のタイミングで一気に案内できれば、営業の効率はぐっと上がる。光通信にとっては、願ってもない話です。
レオパレス21には既存のサービスもあるので、全部が光通信の商品に切り替わるわけではないかもしれない。それでも、商売を広げる余地は十分あるのでは」
さらに、逆方向の相乗効果も期待できる。光通信グループの法人顧客に対し、レオパレス21の社宅や賃貸住宅を紹介することもできるのだ。つまり、レオパレス21が持つ顧客基盤と、光通信が持つ販売力や商材を組み合わせようというわけである。
もっとも、光通信は突然レオパレス21に目をつけたわけではない。同社は2022年からレオパレス21の株式を取得しており、今回の買収発表時点では、間接保有分を含めて約18%の株式を保有する大株主だった。買収後の議決権割合は光通信が34%、残る2者のファンドが各33%となる予定である。
「光通信は昔から、営業で会社を大きくしてきた。でも、いまは自分たちで営業するだけじゃなく、会社ごと買ったり、出資したりして事業を広げている。今回も、双方の商売を大きくできる可能性があるわけです。いかにも今の光通信らしい話ですよね」(株式ウォッチャー)
「平均年収3500万円」は持株会社の3名のみ
さて、ここで冒頭の話に戻ろう。光通信の社員の平均年間給与は3517万5984円。いくら収益性が高い会社とはいえ、社員全員がこれほどの高給を得ているのだろうか。
実は、この数字にはからくりがある。光通信グループ全体では、連結ベースで4000人を超える従業員を抱えている。一方、有価証券報告書の提出会社である光通信単体の従業員は、わずか3人だ。
つまり、平均年間給与3517万5984円というのは、この3人の平均なのである。光通信は現在、持株会社としてグループ全般の経営管理を担っており、グループの大部分の従業員は子会社に所属している。
こうした持株会社の「平均給与」がグループ全体の実態を反映しにくいことを踏まえ、2026年3月期からの有価証券報告書では、グループ内で従業員数が最も多い「最大人員会社」の従業員の状況も開示されることになった。
光通信グループの場合、最大の従業員を擁する会社はプレミアムウォーターで、従業員は467人。平均年齢は34.6歳、平均勤続年数は6.3年で、平均年間給与は531万0440円である。






