実業家・花蜜幸伸インタビュー(第3回)苦しい中でも続けてきた2つのプロジェクトとすべての挑戦する人へのメッセージ
人生がどん底の中でも、花蜜氏は2つの新しい事業を始めていた。1つは犬猫殺処分のゼロを目指す「ペットの里」プロジェクト。もう1つは「ピース乾杯プロジェクト」だ。両事業とも慈善事業ではあるが、それぞれには明確な目標がある。最終回では、花蜜氏がこれまでの苦しみを乗り越えた先にある新たな「野望」について話を聞いた。「出前館」を創業した先見の明は、これから先の未来をどう見通しているのか。そして今、挑戦する全ての人へ送るメッセージをもらった。
実業家・花蜜幸伸インタビュー(第2回)タワマンからボロアパートへ ~闇金業者からの苛烈極まる追い込み~
犬猫殺処分ゼロ施設「ペットの里」プロジェクト 「令和の虎」出演で賞金獲得も…
花蜜氏が自社株を買い漁っている時期、実は1つの慈善事業が動き始めていた。出前館時代の部下・田中亜弓氏がしきりに言っていた「犬猫ペットの殺処分ゼロ活動」だ。当時ペットの殺処分数は年間15万匹にも上り、田中氏は出前館を退社した後、本格的に殺処分ゼロに向けた活動を始めようとしていた。その当時、まだ金銭的余裕のあった花蜜氏は彼女の夢実現のため、「フルパワーで応援しよう」と決めていた。
「当時は『お金もうけ楽勝だ』ってうぬぼれてた時期で。中途半端なことしても駄目だと思って、どうせなら世界最大級の大きさでやろうって2億円くらいぶち込んで、岩手県に世界最大級の保護施設『ペットの里』を立ち上げました」

立ち上げ後、約3カ月で株価が大暴落し、全ての資産を失うわけだが「ペットの里」は多くの支援者に助けられ、どうにか維持し続けた。ただ、もともとは旧電電公社(現NTT)の保養所として築50年ほど経過していた施設だったため、トイレが致命的な状況だったという。
トイレを改修したいが資金がない。そこで花蜜氏が思いついたのが有名YouTube番組「令和の虎CHANNEL」への出演だ。トイレの改修費を稼ぐため、田中氏と共に出演。虎たちに自らの人生を紹介し、施設に対する切実な思いを説いた結果、これまでで過去最高額となる3000万円の獲得に成功する。だが、未だにそのお金は支払われていないという。番組では融資に当たって条件が設けられ、動画の配信日から1カ月間で1口1000円の寄付を募り、それを2000口以上集めることだった。
「条件が達成できたので、普通にお金が出るかなと思ったら、虎の方々から『そんなに集まったらお金いらないでしょ』となって。『それとこれは話が別ですよ』と言っても取り合ってくれず、この事実を公表したら令和の虎側とモメてしまって…。彼らはインフルエンサーなんで、我々がネット上で猛攻撃を受けることになってしまいました」
いまだに動画を見た来場者からは「新しいトイレ、どこにできたんですか」とよく尋ねられるという。自身の生活すらままならない当時、花蜜氏になぜこの事業をやめようと思わなかったのかを聞いてみたところ、一言、「基本的にやり始めてしまったことに対する諦めがものすごく悪いんです」と自嘲気味に語ってくれた。
「ペット殺処分ゼロ」の取り組みは新たな段階へと進んでいる。まずペットを飼っていないシニア世代3000万人を里親にする目標を据えた。老人がペットを飼うことで認知症になりにくくなったり、健康寿命が延びるなどの効果が確認されていることからも、「シニア世代に一大ペットブームを巻き起こして、日本全体が元気になるという意味で、『日本再生事業』だ」と位置づける。
さらに、ペットを飼う人全員に月額1000円の会員制度を設け、強制加入させる「自賠責保険」のような仕組みを作ることも模索している。本来、保護施設とペットショップは対極の位置にあるが、今後は協力して殺処分を無くしていく考えを関係する会議に出席しては説き続けている。最終的にはペットを飼う人全員が保険に加入することを目指していくつもりだという。
「今考えると、自分は『業界をまとめることがけっこう得意なのかな』と思い始めてるんです。だって出前館の時、あれだけの飲食業者を全部束ねるって絶対無理だと言われたけど、何とか形になりましたからね。あの時と同じパターンだって」
世界を平和に!「ピース乾杯プロジェクト」始動 オバマ大統領の広島演説に奮起
「ペット殺処分ゼロ」活動と共に、花蜜氏がもう1つ継続して行っている事業がある。その名も「ピース乾杯プロジェクト」。これが始動したのも辛かったあの時期だ。人生のどん底だった、あのボロアパート時代。毎日、暗闇の部屋の中で引きこもっていた時、何気なく見たあるニュースは世界中で起こる紛争を取り上げたものだった。
「世界っていつまでこんな争いばかりしてるんだろう…」
2016年5月27日、広島市の平和記念公園で米国大統領だったバラク・オバマ氏が歴史的なスピーチをしたことはよく知られている。「核兵器なき世界」を訴えた演説に、当時の日本国内は沸いた。その時、取り調べ地獄だった花蜜氏にとって、その演説内容は違った意味で深く脳裏に刻まれた。
「『(核兵器の廃絶は)我々が生きている間に無理かもしれないけど』っていう言葉が入ってたんです。世界のトップリーダーが『我々が生きてる間に無理かも』なんて言ったら、この演説は台無しだなって。むしろ『生きてる間にやり遂げよう』って言ってほしいじゃないですか」
ふさぎ込んでいた花蜜氏にとって、6畳1間の自室で「世界平和」を考える時間はたっぷりあった。その時の心境についてはこう語る。
「当時は何か魂がしびれるようなものを探し求めている自分がいたんです。何も光がなかったところに『世界平和に関する何らかの取り組みができたら』という形で、ほんの少しの小さな光を自分なりに見いだしたかったんだと思います」
花蜜氏の「世界平和」への思いが結実したのが「ペット殺処分ゼロ」に続く新たな試み「ピース乾杯プロジェクト」だ。「世界中の乾杯の言葉を『PEACE!』に代えて、世界平和の機運を高めていくという」という草の根の運動だが当の花蜜氏は本気だ。
「目標としては世界の2人に1人が乾杯する時は『ピース!』と言ってもらって、世界中をピースの渦に巻き込み倒して、世界平和の一大ムーブメントを起こしたいなと思っている」

また、ベルマークのような「ピースマーク」を制作。飲料メーカーに協力してもらい、マークが入っている飲料を飲むと1杯当たり2円が協賛金として入る仕組みを作った。これにより毎年1兆円近くのお金が生まれ、その資金を世界平和のために役立てるという。
「夢を叶える極意」~すべての挑戦する人へ~
現在、花蜜氏は日本全国で年間100を超える講演活動を行い、「夢を叶える極意」をテーマに人々を勇気づけている。「夢をかなえる極意」について花蜜氏は「ゴールのイメージが鮮明化できているか」が大事だと語る。
「自分の場合はたまたま見た映画のワンシーンがあったから頑張れた。あの世界が来ないわけがないと思えたから、初年度の売り上げがたった10万円でも心が折れなかった。『ペットの里』も時間はかかりましたけど、今は明確なゴールイメージがある。そういう奇跡を巻き起こすためにも、自分のゴールイメージを鮮明にするということを強く皆さんにお勧めしています」
今年で57歳の花蜜氏。人生はまだ途上にある彼の人生はこれから先、どんな未来を見据えているのか。きっと数十年先の未来を見通しているに違いない。
インタビュー・文/寉見陽平 内外タイムス編集部

《プロフィール》
花蜜幸伸(はなみつ・こうしん)1969年和歌山県海南市生まれ。高校卒業後、大学受験に失敗。さまざまなアルバイトを経験した後、21歳でバイク便事業を興し起業を果たす。1999年にインターネットの普及に伴い、バイク便事業に見切りをつけ、「夢の街創造委員会株式会社」(現社名:株式会社出前館)を創業。その後、会長、戦略顧問を経て退任するも2013年に再び特別顧問として復帰。「出前館株価防衛事件」で全財産を失い、住所不定無職となる。さらに株価のやり取りをめぐって金融庁から強制捜査を受け、長い取り調べの末、東京地検特捜部に刑事告訴され在宅起訴、無罪主張で最高裁まで争うも刑が確定する。現在は犬猫殺処分ゼロの実現を目指す世界最大級の保護施設「ペットの里」、世界平和実現を目指した「ピース乾杯プロジェクト」の2つの事業を推し進めている。






