大英博物館がつなぐ日本と英国 皇室と日英友好の歩み
天皇皇后両陛下と愛子さまが、東京・上野の美術館を訪問し、大英博物館が所蔵する日本美術コレクションの特別展を鑑賞された。ご一家は、秋や冬の情景を表した「秋冬花鳥図襖」や、春の風景が描かれたふすまなどを熱心に見て回られた。
皇后さまは「これは八重桜ですか」などと質問をされ、愛子さまは「金箔(きんぱく)と銀箔(ぎんぱく)がとても印象的ですね」と述べられた。大英博物館は世界有数の博物館として知られる。その館内には、日本の歴史や文化を伝える数多くの美術品や工芸品が収蔵されている。
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両陛下と愛子さまがそれらの作品をご覧になったことは、単なる美術鑑賞以上の意味を持っているように感じられる。そこには長い日英交流の歴史があり、皇室が果たしてきた役割があるからだ。
日本と英国の交流の歴史は古い。本格的な関係が始まったのは江戸時代末期から明治時代にかけてである。開国後の日本は急速な近代化を進めた。その過程で英国は日本に大きな影響を与えた国の一つだった。
海軍制度、鉄道、造船技術、議会制度など、近代国家の基盤づくりに英国の知見が活用された。当時の日本人にとって英国は世界を代表する先進国家だった。一方の英国も、近代化を急速に進める日本に強い関心を抱いていた。
やがて両国は1902年に日英同盟を締結する。この同盟は当時の国際政治において大きな意味を持った。アジアの国である日本と世界最大の海洋国家である英国が手を結んだことは、世界を驚かせたのである。
日英関係を語るうえで欠かせないのが、皇室と英国王室の交流である。その歴史は150年以上に及ぶ。明治時代には岩倉使節団が英国を訪問した。その後、皇族の英国訪問も行われるようになった。特に知られているのが昭和天皇である。
大英博物館は英国人にとって日本文化の入り口
皇太子時代の1921年、昭和天皇は英国を訪問した。これは日本の皇太子として初めての欧州訪問であった。昭和天皇は英国王室から温かい歓迎を受けた。この経験は後の国際感覚にも影響を与えたといわれる。
1953年には昭和天皇の名代として皇太子明仁親王殿下、後の上皇陛下がエリザベス2世女王の戴冠式に出席された。これは戦後の日英関係改善を象徴する出来事だった。
天皇陛下もまた英国との縁が深い。陛下は1983年から1985年までオックスフォード大学に留学された。テムズ川の水運史を研究し、現地の学生たちと交流を深めた。後に出版された「テムズとともに」からも、英国への親しみが伝わってくる。
昨年の英国公式訪問では、チャールズ国王夫妻との友好関係があらためて注目された。若い頃から交流を重ねてきた両者の姿は、多くの人々に深い印象を与えた。
皇室と王室のこうした関係は、一朝一夕に築かれたものではない。世代を超えて受け継がれた信頼の積み重ねなのである。
そうした日英関係を文化面から支えてきたのが大英博物館である。館内には浮世絵、甲冑(かっちゅう)、陶磁器、刀剣、漆工芸など、日本文化を代表する品々が数多く展示されている。19世紀後半になると、日本の美術や工芸は欧州で高く評価されるようになった。いわゆる「ジャポニスム」の流行である。浮世絵はモネやゴッホら印象派の画家たちにも影響を与えた。
日本文化は芸術の分野で英国人や欧州人を魅了したのである。大英博物館はそうした歴史を今に伝える場所でもある。日本人にとっては、自国の文化が海外でどのように受け止められてきたかを知る機会となる。英国人にとっては、日本への理解を深める入り口になる。まさに文化交流の架け橋といえるだろう。
今回の訪問で特に注目されたのは、愛子さまも同行されたことである。愛子さまは若い世代を代表する皇族として、多くの国民から期待を集めている。グローバル化が進む現代において、国際親善はますます重要になっている。かつては政府同士の外交が中心だった。
しかし今は文化や教育、人と人との交流が大きな役割を果たしている。天皇皇后両陛下と愛子さまによる美術コレクションの鑑賞は、一見すると静かな出来事に見えるかもしれない。しかしその背景には、明治時代から続く日英友好の歴史がある。そして皇室と英国王室が築いてきた深い信頼関係がある。
政治や経済だけではない。文化によって国同士が結ばれる時代である。大英博物館に収められた日本の美術品は、そのことを静かに語り続けている。
文/志水優 内外タイムス






